Cクラス
「あ、はいあってますよ」
支部長の質問に間違いはないので肯定する。しかし、よく俺みたいな底辺の事を覚えていてくれたなぁ。ちょっと感動。
「よく来てくれたね。泊さんが連れてきたってことは何か大事な話でもあるのかな?」
この支部長、もしかすると頭が回るタイプの人なのかもしれない。俺はそういうのに疎いからわからないが。
「見かけによらずなかなかやる方なんじゃな、久蔵殿?」
後から部屋に入ってきたウェスタが、椅子に座る支部長に対してそんなことを言った。それを聞いた支部長は表情を変えて、腰をかけなおし、俺と泊さんに質問をしてきた。
「そちらの少女は?」
「僕と契約している炎竜王のウェスタです」
「炎竜王……。なるほど……」
すると、泊さんが何やら支部長に近付いて話かけた。
「私が彼を連れてきた理由です。彼女はミノタウロスを瞬殺していましたけど、本当に炎竜王だと思いますか?」
「ミノタウロスを瞬殺、ね。多分間違いはないと思うよ? 炎竜王とか言われても他に見たことがないからピンとは来ないけどね。圧倒的に強いのは間違いないさ。僕をもってしても底が見えないしね」
小声でよく聞こえないな。どんな話をしてるんだろうか。
『主殿、聞こえるか?』
「ん?」
今ウェスタの声が聞こえた気がしたんだが。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもないです」
泊さんに訝しげに顔を覗き込まれる。
『主殿、あの少年、かなり強いぞ。儂がいないときに怒らせたりしないようにするんじゃぞ? それとこれは念話じゃ。召喚士と契約した魔物の間で行えるぞ』
ウェスタ目線からしてもこの少年はそこそこ強いらしい。すげぇな。
念話なんてものは知らなかったぞ。後でウェスタにいろいろ聞いてみよう。召喚士について結構しっていることが多そうだ。
「あ、そういえば自己紹介を忘れていたね。僕は久蔵 義光。古臭い名前だけど、これでも21歳だ。よろしくお願いするよ」
古臭い名前の方を気にするのは少々意外だな。見た目を気にするべきだと俺は思うが。21歳にして見た目完全に高校生前半だからなぁ。とても俺の2歳年上とは思えない見た目をしている。
「よろしくお願いします、久蔵支部長」
「突然だけど、君Cクラスに昇格する気はないかい?」
本当に突然支部長から昇格の話が来た。なんで??
「え、できるならしたいとは思いますが、いきなり何故でしょう?」
「ウェスタ、といったかな? 彼女の力は圧倒的だね。できれば早めにクラスを上げて高難度のダンジョンに挑み利益を上げて欲しいんだ。日本はいつでも魔石不足だからね。ちなみにCクラスまでが支部長の権限で上げれるクラスの限界だね」
なるほど、そういうことか。だったら別にいいんじゃないか? 俺達もできれば強いダンジョンに挑んで稼ぎたいし。利害は一致なんじゃないか?
「私も早めにCクラスになっておいた方がいいと思うわ」
「そうですね、でしたら是非、昇格したいと思います」
こちらからすると何も悪いことは無いしな。ありがたいことだ。ちなみにCクラス以上になるとダンジョンで何か異常があった時、協会に呼び出されることになっている。多分その目的もあるんだろうな。
「ありがとう、これからもよろしく頼むよ。後でCクラスの探索者証を送るから、今日の用事はもうすんだんだけど、ちょっと気になるんだよね。その子、一部だけでも竜の姿になれたりしないかな?」
少し興奮した様子で支部長が言った。もしかしてドラゴン系が好きなのかな? 俺も少し気になるし、ウェスタに聞いてみるか。
「ウェスタ、一部だけでも竜化できたりするか?」
「もちろんじゃよ」
ウェスタはそういうと、背中に深紅の翼を出して見せる。爪も鋭い竜のようなものに変わっている。
すごいなめっちゃかっこいいじゃん。
「すごいね! かっこいい! 触ってもいいかな?」
なにやら支部長が大興奮している。見た目相応な感じがするな。
「手ならよいのじゃ。翼は主殿にしか触らせられないのじゃ」
「じゃあ是非手を!」
そういうと、支部長は丁寧にウェスタの手をとって触り始めた。なんかちょっと変態くさいけどなぁ。
「すごいなぁ、これが竜かぁ」
「久蔵支部長?」
そんな支部長の様子を見て泊さんが若干引いている。まぁ気持ちはわからないでもない。
見た目だけなら幼女に縋りつく、高校生だからな。両方成人してる年齢なはずだけど。
そういえばウェスタっていくつだ? 後で聞いてみるか。
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