外の世界へ
いざ外の世界に出ようと思ったが、出口が分からなかった。
「ウェスタ、外にはどうやって出るんだ?」
「儂がラスボスじゃったからのう。下の階層はないわけじゃ。多分部屋の中央、宝箱があった場所の隣に外にでる魔法陣があるはずじゃ」
なるほど。魔法陣。それで出られるのか。ダンジョンを攻略したパーティーがテレビで何か言ってた気がするな。
「19号、20号、宝箱があった場所まで案内してくれるか?」
俺がスケルトンたちに合図をすると、カタカタと骨を鳴らしたスケルトンたちは俺に背を向けて歩き出そうとするが、直前にウェスタの静止が入る。
「ちょっと待つのじゃ! せっかくじゃからスケルトンたちにも名前をやったらどうなのじゃ?」
確かにそうだな。もう19号と20号しか残ってないんだもんな。魂を賭けてくれたあいつらの分まで大切な部下として扱おう。
「よし! 19号、お前にはアインという名を与える! 20号は、フィニだ!」
嬉しそうに骨を鳴らしたアインとフィニはそのまま魔法陣の元まで案内してくれた。
「ありがとう、2人とも。いったん戻れ」
2人の召喚を解除する。ウェスタは今のところ見た目が完全に人間だからいいが、スケルトンは流石に人目に付きすぎる。
「名前の由来、なんなのじゃ?」
気になったのかウェスタがそんなことを聞いてくる。
「一から無限だよ」
俺はそう答えて魔法陣の上に乗った。
「さぁ、行こう、外に」
「楽しみなのじゃ~」
俺とウェスタは魔法陣に乗ってダンジョンから脱出した。
視界が切り替わる。目のまえでは、なにやら大きな騒ぎが起きていた。人が集まっている。主にカメラを持ったマスコミの人間だ。
そして、人だかりの中心では、この辺で一番有名なAクラス探索者の泊 涼子さんがミノタウロス相手に戦闘を行っていた。
え、マジで何事? 周りのマスコミとか、泊さんがやられたらどうするつもりなんだ?
「速く逃げなさいと言っているでしょう! 巻き込まれるわよ!」
案の定泊さんは闘い辛そうにしている。泊さんは結界系の範囲魔法を使う探索者だ。周りに人がいては十分に力を発揮できないはず。
「ウェスタ、あのミノタウロス、周りに被害が無いように倒せるか?」
「余裕なのじゃ!」
一応泊さんがまずそうだった時の保険のつもりで聞いてみたが、止める間もなくウェスタが空高く跳躍し、ミノタウロスの方に向かって行ってしまった。あの近さだと泊さんも巻き込まれかねないぞ。
「泊さん! ミノタウロスから離れて!」
「なんで!? ってええ!?」
俺の声が聞こえたのか泊さんはミノタウロスから少し離れ、そして空高くに居るウェスタを見て驚く。
次の瞬間、地面に隕石が直撃したかのような衝撃が走る。
先ほどまでミノタウロスが居た場所にクレーターのようなものができている。クレーターの中心に1人立つ幼女はうれしそうにこう言った。
「主殿、やったのじゃー」
「おう、ナイスだウェスタ!」
とんでもないパワーだな。あの時こんなのと戦ってたと思うと冷や汗が出るよ。
「とんでもないわね……。あなた達、何者?」
この惨状を見た泊さんが俺達に声をかけてくる。何者って言われてもなぁ。
「ただのFクラス探索者の召喚士とその契約魔物ですよ」
「いや、Fクラスは嘘でしょ?」
どうやら泊さん、Fクラスってことを信じてないらしい。
「本当ですよ、ほら」
俺はFクラスの探索者証を見せる。これで信じてもらえただろう。
「本当だ……というか何? あの子魔物なの?」
「ええ、最近契約したばかりの炎竜王って魔物ですね。本体竜なんですよあの子」
その言葉を聞いた泊さんは信じられないものを見る用な顔をしてきた。まぁ、気持ちはわかる。
「主殿、これはどうするのじゃ?」
その時何かを持ってウェスタがこちらに駆け寄ってきた。手に持ってるのは、おそらく魔石だな。
「泊さん、最初に戦っていたのはあなたですし、俺達は横取りした形になります。この魔石は受け取ってください」
基本横入禁止の原則が探索者にはある。ダンジョンの外とは言え、俺達は横入した形になるからな。
「助けてもらっておいてそんながめついことはしないわよ。あのままだと周りの状況もあってちょっとやばかったしね。その魔石はあなた達のものよ」
「いいんですか? すいません、ありがとうございます。周りの状況、やっぱきつかったですよね。これを期に探索者協会と相談してみては?」
異常時に対する対応の仕方とかを探索者協会から出してくれればこんなことは繰り返さずに済むはずだ。
「そうね。あと、あなた達に関しても探索者協会に要相談だわ。あのダンジョンから出てきたんでしょう? いろいろ聞くべきことがあるわ」
まーそうだよなぁー。まず最初は報告からだよなぁー。家でゆっくりしたかったんだけどなぁー。
「マスコミたちがまた動きだすと面倒だわ。早く協会に向かいましょう」
今は、ウェスタが起こした衝撃の影響で混乱が巻き起こっている。その隙に探索者協会に行ってしまおうということか。集まられたら面倒だもんな。
「そうですね。ウェスタ、今から家に帰る前に少し寄る場所があるんだけどいいか?」
「儂は構わんのじゃ。主殿についていくぞ!」
俺はもうすでにかなり疲れているがウェスタは元気が有り余ってるようだ。
「じゃあ行きましょう。ついてきて」
「あ、はい」
泊さんについて探索者協会に向かう。ここから最寄りの支部まではすぐだな。
一度曲がって右側を見ると、協会支部があった。
まぁわかってはいたけど目と鼻の先だなぁ。
泊さんが扉を開けて中に入っていったので俺もそれに続く。ウェスタもちゃんとついてきている。
「奥に支部長が居るから、そこまで入るわ。支部長も交えて話をしないとね」
泊さんに案内されて、奥の扉の前まで来た。
泊さんが扉をノックすると、中から「入っていいよ」と声がした。
「「失礼します」」
扉の中に入ると、見た所高校生か中学生くらいの少年が足を組んで椅子に座っていた。
「よく戻ってきてくれたね泊さん、それと、夜見くんであってたかな?」
一応俺もこの支部で登録したからか、覚えていてくださったらしい。どうやらこの人が支部長で間違いなさそうだ。
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