契約、ウェスタ
「儂と契約しようというのか、お前さんは」
燃え盛る意識の部屋の中、幼女との会話が始まった。見た目は幼いが、この幼女には貫禄がある。
「ああ、そのつもりでここに来た」
そういうと、急に幼女は笑い出した。
「はは、勇気あふれる少年じゃのう! さっきの一撃もお前さんの配下との契りで行ったものなんじゃろ? それができるとはよっぽど良い召喚士なんじゃな!」
なにやらあの幼女は上機嫌らしい。
「いやー儂長い眠りから覚めたばかりだったんじゃがな? 寝ぼけておったところであの一撃じゃよ。すっかり目が覚めてしまったわ!」
あの一撃をその程度の感覚で受けていたのか? 正真正銘の化け物では?
「契約の件、承ろう。お前さん、いや、主についていけば楽しくなりそうじゃからのう」
……マジ?
「これからよろしく頼むのじゃ、主殿」
その言葉を最後に俺は現世へと戻ってきた。終始あの幼女のペースで俺はなんもしていないのが正味納得いかないが。
いつの間にか横たわっていたみたいで近くに19号と20号が控えていた。
「見張っててくれたんだな、ありがとう」
その言葉に19号と20号はうれしそうにカタカタと骨を鳴らした。
そして、隣には先ほど意識空間で見た幼女がすやすやと寝息を立てて寝ていた。
すっかり目が覚めたんじゃなかったのかよ。とりあえず、契約が本当に成功したのか確認してみよう。
「ステータスオープン」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
名前:夜見 宗次郎
レベル:88
職業:召喚士(Ⅱ)
ステータス:攻撃力 1309
守備力 1289
魔力 1451
知力 1456
精神力 1209
速度 1479
スキル:『契約』『契約:スケルトン(2)』『契約:炎竜王』
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
え、炎竜王??
契約はしっかりできているようだが。
……ってちょっと待ってほしい。レベルとステータスがめっちゃ上がってる。いやまぁレベルの割にはステータスは低いほうなんだけどな? この程度ならAクラスにすら及ばないか。
つまり、炎竜王との契約が討伐判定になった、そういうことだろうなぁ。莫大な経験値が入ったわけだ。
今までスケルトンと契約してレベルが上がったことは無かったが、それは単純にレベルが上がるタイミングじゃなかっただけなのだろう。
ん、職業レベルも上がってるじゃないか。後でいろいろ試してみよう。
なかなか炎竜王も目を覚まさないしな。出口の確認とか、してくるか。
そう考えていると、スケルトンたちが何やら俺の方に何かを押してきた。
「これは?」
それは何やら豪華な装飾を加えた箱のようなものだった。
「宝箱か!!」
ダンジョンのボスを倒すと一定の確立で手に入ることがある宝箱。
「開けてみるか。いや、トラップとかあるかもしれないな」
「その宝箱にはトラップはなさそうじゃぞー」
「うおう!?」
ちょうど炎竜王も起きてきたらしい。ちょっとびっくりした。
炎竜王は目をこすりながら眠そうにしている。見た目だけ見れば、完全に小学生だな。
「教えてくれてありがとな、そしたら、開けてみるよ」
「ちょっと待つのじゃ」
宝箱に手をかけたその時、炎竜王に静止された。なんだ? やっぱりトラップがあったのか?
「召喚士なのじゃから契約した儂に名付けくらいしてくれたらどうなんじゃー? 普通まず最初にするものじゃろう?」
なにやらこの幼女から拗ねた雰囲気を感じる。見た目と言動はとてもかわいらしいがこれでも炎竜王という化け物なのだ。世の中、よくわからんな。
「わかったわかった。名付けな。というか名前ないんだっけ?」
「主殿の言語では発音できないと儂は言ったはずなのじゃ。発音できなければないも同然じゃろう。というわけで頼むのじゃ~」
「はいはい」
というわけで名前を考えてみる。炎竜王だろ? 炎関係の名前がいいな。炎を司る神から考えてみるか。アグニ、ヘスティア当たりが候補か?
でも少し仰々しい感じがするな。まぁ炎竜王もなかなかだけど。普段から呼びやすい感じがいいかもな。
そうだ、ローマ神話、だったかな。ウェスタという炎関連の女神が居たはず。その名前を借りることにしようか。
「ウェスタ、でどうだ? 炎の女神から借りた名前だ」
「ペットのような名前を付けられたらどうしようかと思っておったが、案外よいな! それで頼むのじゃ! 改めてよろしくなのじゃ、主殿!」
「おう。よろしく、ウェスタ」
どうやら気に入ってくれたらしい。スケルトンたちと初めて契約した時は余裕がなくて1号、2号……といった適当な名付けになってしまったが、名前を考えるというのも良いものだな。
「宝箱は開けないのか? 儂は中身が気になるのじゃが」
好奇心が抑えられないといった感じでウェスタが宝箱に近付く。こいつ、ほんとに炎竜王か? しゃべり方以外ただの幼女にしか見えないが。
「そうだな、じゃあ一緒に開けるか!」
「よいのか! じゃあ儂も一緒に開けるのじゃ!」
ウェスタと共に宝箱に手をかけ、宝箱を開ける。
中には、古びた王冠のようなものや、黒いマント、刀、指輪など、様々な物が入っていた。
すっげぇ厨二心をくすぐられるデザインだな。
「ずいぶんとまあ良いものが入ってるんじゃな。まぁ儂がボスをしていたわけじゃし、当然じゃな!」
自画自賛するウェスタの方に目を向けるとその真っ赤な瞳の前に何やら魔法陣が展開されていた。
「ウェスタ、それもしかして鑑定の魔法か?」
「そうじゃよー」
「アイテムの効果とか教えてくれたりできるか?」
通常こういうアイテムの効果を知りたかったら探索者ギルドの鑑定に出すしかない。しかし、鑑定に出すと金がかかるからな。できるだけ節約したい。
「できるのじゃ。どれどれ、まずは王冠から……」
ウェスタにもらった説明をまとめるとこんな感じになった。
【古城の王冠】
・装備者の魔力値+1500
・装備者に『全属性耐性(大)』を付与
【黒風のマント】
・装備者の速度値+1500
・装備者に『暗雲結界』を付与
【怨恨の刀】
・装備者の攻撃力値+2000
・装備者に『復讐の刃』を付与
【空間収納の指輪】
・亜空間にアイテムを収納可能
微妙にかみ合いが悪いなとウェスタが苦笑いしていたが、俺からすればステータスの上昇値だけで十分優秀というかぶっ壊れだ。ウェスタは使わないらしいので、俺がこの装備を使うことにした。
装備してみると、急に体が軽くなった気がした。しかし、俺が今黒い系の服を着ているから何とかなっているが、マントに会う服、選ばないとな。
「ウェスタ」
「なんじゃ?」
「やり残したこととかないよな?」
そろそろここから出ようと思う。多分出る前にやっておいた方がいいこととかはないはずだ。
「ないのじゃ」
「なら行こう! 外の世界に!」
「れっつごーなのじゃ!」
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