対面、古竜
痛てぇ。ここはどこだよ。先ほどよりも圧倒的に重い空気。多分下の階層に飛ばされたな。俺がさっきまで居た1層ですらAクラスのミノタウロスがいた。
ここにはマジで何が居るかわからないぞ。
『グォォォォォォ!!』
鼓膜が破れそうなほどの雄たけびが背後から聞こえる。あ、終わったぁ。
振り返るとそこには山と錯覚するほどの巨体を持った翼の生えた赤い恐竜のようなもの……。
まぁありていに言えばドラゴンが居た。しかも動画や写真で見たことがあるような普通のSクラスの竜とはサイズが違う。
んー……詰み☆
……最後まで抗うって決めたんだ。絶対に生き残って見せる。
「来い! 11~20号! 突然で悪いが、俺が生き残るために協力してくれ! あいつから逃げる道を探してくれ。見たとこ部屋だから、出口はあるはず」
ここがボス部屋だった場合正真正銘詰みではあるがな。そう言いはするがスケルトンたちは一切動いてくれない。なんでだ!?
それどころか勝手に俺の前に出てきて俺を守るように隊列を組んだ。
「俺に逃げろっていうのか!?」
スケルトンたちが一斉に頷く。
「くっそ、お前ら……ごめんな」
俺はスケルトンたちを置いて壁に向かって走り出した。山とも間違えるほどの巨体の竜が居る部屋だ。相当に広い。壁までたどり着くので一苦労だ。
辿り着いた壁沿いを歩いていると、11号がやられた感覚があった。
俺のためにごめんな、よくこれだけ耐えてくれた。
続いて12号、13号もやられていく。
ごめんな……。
ん……? 少し先の壁に大きな扉が見えるな。
おい、これ……。
ボス部屋の扉だろ? これ。
そのボス部屋の扉は固く閉じられていて、触っても開く気配がなかった。
茫然としている間に、次々とスケルトンたちがやられていく。ついには、17号がやられた。
くっ、まずいな。
ここがボス部屋ってことはつまりだ。あの真ん中に鎮座する巨大なドラゴンを討伐しないとここから出られないってことだぞ。
まずいどころの話じゃない。正直一ミリも先が見えない。
どうっすっかな。このまま死を待つのも俺の決意が許さない。
18号もやられた。残りは19号と20号。それと控えの皆だ。最後の方法を使うっていう手もあるが……。
でもそれじゃあスケルトンたちがな……。
……右手が温かい。これは?
俺のスキルの中に居るすべてのスケルトンから意思を感じる。
『覚悟はできてる』
……そうか。使えってことなんだな、お前たち。
「お前ら、その魂と魔力、全部もらうぞ」
召喚士の最後の能力。契約した魔物の命、全魔力をかけた攻撃を行う力。意思決定権が魔物側にあるので召喚士側から発動することはできないから知らない人も多い。そもそも召喚士の母数が少ないから何とも言えないが。
その力はすべてを賭けるだけあって絶大な威力を誇る。
122体のスケルトン全員の魂の力と魔力。それが俺の拳に宿る。
俺は全速力でドラゴンに駆け寄る。
「こっちを向け!!!」
19、20号に夢中になってブレスを吐いている竜に向かって叫ぶ。
竜が俺の声に反応してこちらを向くその瞬間に俺は右手に集まったエネルギーの一部を全身に回し飛び上がる。
体高30m近くある竜の顔の当たりまで飛び上がった。
『ギャオオオ!!』
いつの間にか居た俺に驚いたのか、叫び声をあげる竜。その口に炎が集まっていく。ブレスが来るか!
だが、そんなことは関係ない。この右の拳をぶちかましてやるだけだ!
「お前を、殴る! 喰らえぇぇぇぇ!!」
俺の拳が竜の顎に直撃する。竜の首があり得ない音を出して曲がり、そしてブレスが口の中で爆発した。
その巨体が重力に従って倒れこむ。まずい! 19号と20号が巻き込まれるんじゃないか!?
と、思ったが、19号と20号は少し離れた場所に避難していた。ちゃっかりしてんなぁあいつら。
巨体が倒れた衝撃で部屋が揺れる。竜が倒れた後、俺も重力に従い竜の上に着地した。
……着地した? 通常ダンジョンの魔物は死んだ瞬間に消滅する。
こいつはまだその予兆すら見えない。
生きてるのか、あの一撃を受けて……。強くはない魔物のスケルトンとは言え魂まで賭けた122体の攻撃だぞ。核爆弾にすら匹敵する威力があってもおかしくはない。
それをくらって生きてるのかこいつは。もう打つ手がない。こいつの意識が復活してきた瞬間ジ・エンドだ。
いや、まだ手はある。俺の職業は……召喚士だ!
……絶対に生き残るって決めたんだ。最後の賭けと行こうじゃないか。
「『契約!』」
召喚士の契約は魔物の意識空間に入り込み、意思をかわす形で行われる。つまり、意識がない魔物に使えば強制的に意識を目覚めさせることになる。
契約に失敗すれば、今の衝撃から目が覚めたこの竜によって俺は殺されるだろう。
でも、ただ死を待つよりかは絶対にマシだ! たとえそれがスケルトンとしか契約できたことのない力だとしても!
「召喚士、じゃな?」
気が付くと俺は燃え盛る空間の中に居た。ここは、竜の意識空間か? 上位の魔物になるとこんなにくっきりとしているのか。
スケルトンの時は入った感覚すらなかったのに。空間自体をはっきり知覚できるのははっきり言って異次元だ。
「おーい話を聞いておるかー?」
はい? どこからか幼い女児の声が聞こえてきたぞ。
「後ろじゃよ、後ろ」
声に導かれるままに後ろを見ると、赤い髪をツインテールにした小学生ほどの体系の女の子が居た。
「炎の古竜じゃ、名前は……お前さんの言語では発音できんなぁ。とにかくよろしくなのじゃ」
その幼女はやけに古臭い話し方をする、竜だった。
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