第10話 宝さがしで一発当てよう

「あぁ……犬系か~。確か……4日前くらいだったかな。珍しい生物が街の通路を浮遊していたっつー噂は聞いてるぜ。確か街を出た洞窟の方に行ったらしい」


 なるほど……勢いで賭博屋なんかに連れてこられたけど、いい情報が手に入ったんじゃないかな。


「ねーレクシィ。飛んでいる犬なんて天使みたいだね」

「この場所……怖い……世紀末だわ。早く安全な宿に帰りたい」


 レクシィが地面で震えながら丸まってる。

 メンタル弱……。確かにここの人はヤバそうな人が多いけど。

 皆、私たちのために優しく情報提供してくれてる。


 あれ?そういえばパルン隊長はどこ行った?


 周りを見回してパルン隊長を探す。


「グゥ!また負けましたっ!それはイカサマです!今のは無しです!」

「いやあ……そう言われてもな……これは技であってイカサマではないんだぜ」

「残念ながらここは地下闘技場じゃないぜえ」


 なんか賭け事やってるし……私たちの本来の目的を忘れている気がする。


「ほーら二人とも行くよー」


 私は丸まっているレクシィとわがままを言っているパルン隊長を精一杯の力で引っ張りだす。


「ぐっ。はぁ……はあ~。運動不足にこの作業はきつい。配信である程度はうんどうしていたけど……腕がちぎれるかと思った」


 私はふにゃふにゃと地面に寝転がる。

 そんな私を見て、レクシィはクスクス笑う。


「もう。リリったら本当に頼りがないのね。仕方ないわ!私が運んであげる」


 この女にだけは絶対に言われたくない。復活したから手を出すまではいかないけど。

 あれ?パルン隊長はどこに行った?


 私は首を回してパルン隊長を探す。


 パルン隊長は賭博屋の前で両膝をついて、空を見上げながら全てを諦めた顔をしていた。


 あれが賭け事で全てが終わった瞬間の表情。

 なんで犬を探しに来ただけなのに全てを失ってんの。


「レクシィ……彼女を連れて洞窟に行こう。今は何も聞かないであげて」

「分かったわ……?」


 私とパルン隊長は元気なレクシィに引っ張られながら、洞窟まで行った。


 ☆★


 私たちが来た方とは恐らく反対側の森。私たちは恐らくワンちゃんが逃げ込んだと思われる洞窟の前に立つ。


 そこは自然形成されたようには見えない。

 しかし、整備もされていないような洞窟で、穴の内側に何がいるかなんてわからない。


「ここにワンちゃんが逃げたんですね……。確かに痕跡がまだあります」


 パルン隊長は道中で完全復活した。きっと開き直れたんだと思う。


 しかし……翼まで生えている天使ワンちゃんがこんな所に一体、何の用で?


「こんなボロい洞窟なんか嫌な感じがするわ」


 こんな薄汚い所に入るのかー。怪我したら嫌だなー。


「入りましょう」


 パルン隊長が先に入って行く。


 私は入ったのを確認して、隠していたカメラを出す。


「皆。リリ達は今から犬が入ったと思われる洞窟に潜入するよ。皆で探検しよう」

「あれ?街では撮ってなかったでしょ?あの街は撮らないの?」

「知らなくていいことは隠すの。皆がみたくない悪い所は見せちゃダメ」


 レクシィが首を傾げる。


 本当に全部写せるんだったらいいんだけどね~。これだから人気なvtuberは大変。


 私とレクシィもパルンの後を追うように洞窟へと入った。


 中はとても洞窟の中とは思えないほどに整備されていた。

 床は平坦な石畳。壁はツルツル。天井もこれといってゴツゴツしている岩は見つからない。


 なんかイメージと違う……。

 これじゃあ撮れ高なさそう。


「止まってください。この先。広間に出るかもしれません」


 広間!やっとかー。ちょっと休憩できるかも。

 パルン隊長は耳に手を当てる。


 あれは!獣人の空間把握スキルなんじゃないの?写真撮ろ。

 カシャリと。


「何もいません。行きますよ!」


 私たちは洞窟の向こう側へと出る。

 その先で大きな衝撃を受けた。


 なんとここは洞窟じゃない。小さな都市のような空間が広がっていた。


 周りには草のかかった大きな建物。人の気配はしない。

 地面は腐った石畳。どうやら洞窟を広げて形成したみたい。


「信じられない……です。こんな所は聞いたことがありません。確か、街は二つしかないはず……地図にも載っていません

「てことは……」


 隠しエリア。古代に消えた街来た――。こういう場所には凄いお宝が眠いっていたり、凄い情報が手に入ったりする。これは撮れ高期待できるね~。


「えっと……それならここを少し探索しない?」

「ダメです。この先の身の安全は保障できません。ここは亜兵隊に……」

「財宝、金貨、宝石」

「少しくらいなら探索していっても良さそうですね。下見ですよ」


 やっぱり金の方が安全より大事なのね。

 パルン隊長。すごくばちあたりな事をしそう。


「ねえ……?本当に行くの?」


 レクシィが不安そうな目で私を見つめてくる。


 本当にこの人何のために冒険者をやってるのかな?


「本当に冒険者?冒険者ならスリルを求めてこそじゃない?」

「た、確かにそうね!やってやるわ」


 よしよし。二人とも丸め込むことに成功。大丈夫。大丈夫。

 ちゃちゃっと撮影しちゃってワンちゃんを見つければいいだけだから~。


「では……まずは中心にあるあの大きな建物から行きましょう」


 パルンが街の真ん中にそびえたつ塔のような建物を指さす。


 確かに。やっぱりお宝を探すのなら大きな建物からだよね。

 お宝探しの定番だけど……まずは小さい建物の方が安全性は高いかも……。


「ねえ。小さい建物の方が……」

「ロマンがありません。私は大きく賭ける方が好きなので」


 パルン隊長。だからいつも賭け事で負けるんじゃない?あまりベットしすぎるのは勝てる自信が相当ない限り、やめといた方がいいよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る