第1話 ゲーム配信&美味しい話

 今日もいつも通りの配信が始まる。

 個人Vtuberとして活動を始めてから今年で3年目。


 14歳の頃に小悪魔 リリとして活動を始めた。


 茶色のゆるふわボブ 。大きく生き生きしている紫紺の瞳。

 白のオフショルダー(たまに制服)に頭にはハート付きミニ悪魔の翼のカチューシャ♪

 首元には最新式のワイヤレスヘッドホン。

 何とは言わないけど憧れのD


 設定ではゲームに取り憑かれた小悪魔になってしまってるけど……私は人たらしじゃない。


 本当に最初は大ブレイク!視聴者の増加、Vtuber事務所からのお誘いなど、有名Vtuberの将来が約束されたようなものだった。

 しかし、最近は私以上に個性的なVtuberが出てきたり、配信ネタが減ったりで人気は停滞。

 

 今年でもう16歳になる、未だに職業Vtuberの引きこもり。

 チャンネル登録者は27万。1年前からほぼ変わっていない。


 高校にも行かず、外に出ることもない。親には迷惑をかけないために一人暮らし。


 マンションの1LDK、お風呂、トイレ付きの部屋に私は引きこもっている。


 どうでもいいけど、1LDKは快適な広さだよね。


 食事は出前で全然大丈夫。たまに買い出しに行けばいいし。


 洗濯は買い出しついでにクリーニング。


 家は親が保証人になっているので特に心配はない。


 お金は今でも愛してくれる視聴者がたくさんスパチャを投げてくれる。

 そのおかげで16歳でも何不自由ない生活ができている。


 友達だっている。V友だけどね。

 何も問題はない。


 さて……今日もやっちゃおうかな。


 最近は主に新作ゲームなどを配信しているんだけど。グレート・アース略してグレアスのコラボキャラとして選ばれたみたいで、最近はこのゲームの配信ばかりしている。


 ごちゃごちゃしている色んな機材の電源を入れる。

 毎日のように配信している私からしたら手慣れた作業。


 最後にマイクをセットして……これでOK!


 サムネは前回のを流用すればいいし、準備OK。


 さて……待機画面にしておこうかな。これ結構好きなんだよね。

 このミニキャラの私が飛びながら、『準備中』ていう旗を上げてるやつ。


 声大丈夫かな?もうそろそろ待機画面が終わると


《待機晩成》《待機晩成!》《悪魔で待機》《待機中》《またグレアスー?》

 

 コメント欄にいつものように、待機コメントが流れてくる。


 ちなみに私はこの待機晩成って言うの結構、気に入ってるんだよねー。

 私がvtuber始めた頃、機材調整に時間がかかってたせいだけど……


 さあ!そろそろかな。


「こんにちわー!皆―来てくれてありがとう。リリね……昨日の深夜配信終わってから今までずっと寝ちゃってた♪」


《寝ちゃってのかぁ》《こんにちは。朝枠一度くらいはやろうね?》《朝御飯食べた?》

《こんちゃー。サムネ可愛い♪》《私も今まで寝ちゃってたー》


「朝枠は出来ない!それで皆もお分かりの通り。今日もグレアスやっちゃうよ」


《ホラゲーは?》《またマルチプレイしたいです!》《たしかボス攻略やっけ?》


「ホラゲーとかもやりたいんだけどねー。怖くて眠れなくなるから。今回はソロでボス攻略やっちゃおう。勝てなかったらまた皆の力を借りることになると思うけどね!」


《任せなさいよ♪》《腕が鳴るぜ》《今日も可愛い。昼ごはん代です(^▽^)/》《倒したいです》

《ナイスパ》


「昼ごはん代サンクス♪こういうスパチャ嬉しいな~。よし!準備OK。絶対勝つぞ!」


 そのままかれこれ一時間。ボスにやられまくった私は結局、リスナーさん達の力を借りて

 各地にいる6体のボスキャラを倒した。


「何とか勝てたー。かなりリスちゃん達に手を借りちゃったけど……本当にありがとうね!結構、楽しかった」


《おつですギルド長です。こちら報酬金です》《ご褒美としてASMRやりましょ》《かなりHP消耗しちゃった》《リリちゃんも相当強かったよ》《淫魔ちゃんさすが》


「ギルド長さん報酬金サンクス!珍しいスパ来るね~。ん?ASMRはや絶対にやらない」


 私はこのキャラゆえに淫魔としていじられる。別に嫌なわけじゃないんだけど……


 こういうのはあえて読んだり読まなかったり調整してる。


 なんか疲れたから……最後に皆のスパチャ読んで終わっちゃおうかな♪


「じゃあ。最後に皆のスパチャを読もう」


《もう終わるのかー。悲しい》《今日も楽しかったです》《次回はホラゲーやろうな》


「ホラゲーはやらないよ♪じゃあ、読みます」


 そんなこんなでスパチャを読み終わり配信を終えた。

 きっと今日の集計もマネージャーのニャ―コさんがやってくれるから大丈夫っと。


 ふぁぁ……疲れた。さすがに一時間ぶっ通しでゲームはきつかったかも。

 エゴサでもしようかな。


 ふわふわのベットに飛び込み、スマホを指紋認証で開く。


「あれ……?案件メール?いつもはニャ―コさんの所に行くのに。開いてみよ」


 差出人 異世界の管理人

 案件 異世界のお仕事案件について。


 初めまして。リリちゃん。

 とつぜんだけど、お前にお願いがあるのだ

 私はいせかいのかんり、の仕事をしているのだけど、お金も少ないし、働きたくないのだ。

 だかraお前が、いせかいのぼうけんをげんじつに背信して稼げ。

 お前に素晴らしいらしい脳力とVtuberの姿は約束してやろう。

 これは偶々見つけたわけではない。運命なんだからな!

 へんじ待ってるぞ


 胡散臭い。ただでさえグレアスの案件こなすので頭がいっぱいなのに……。

 でも……ここは明るく断っとくのがベストなのかな?


 何かやけに偉そうだし……あんまりこういう案件は受けたくないかな……


 差出人 小悪魔リリ

 異世界の管理人様へ


 案件のご依頼ありがとうございます♪

 この案件は私のマネージャーを通しましたか?

 とても良い案件だとは思うんですが……マネージャーを通していない限りはお断りさせてください♪

 もし、他に案件のご依頼がある場合は私のマネージャー藍染 ニャ―コ (あおぞめ にゃーこ)さんの方にお願いします!


 これでいいや。こういう依頼でも丁寧に対応しないと……試しに来てる人もいるから。


 でも……文章がなんというか稚拙と言うか。変。遊ばれてるのかな?


 差出人 異世界の管理人


 良い案件だろ!興味を、盛ったな!

 それじゃあ!早速、きてくれ!

 そのめねーじゃーっていうのはよくわからない。

 後でつて徳から行こう!


 この人……一体、何を言っているの?


 私は確かにvtuberの姿になりたいとチャンネル登録者を増やしたいって言う願望はあるけど……こんな危険そうな案件は……ね。


「ピンポーン!」


 私の部屋のインターホンが鳴り響く。


 嘘……もう家バレ?でも……まだ中の人バレはしてないし。

 大体、ロビーは?ここはセキュリティが良いと聞いて入居したのに……。


 とにかく外の映像を見てみよう。


 恐る恐る一本道の渡り廊下についているインターホンの映像を確認する、


 インターホンが真っ暗!?手で覆いかぶされてるの?

 やばい……さすがに管理人に通報しないと。


「ピポピポピポピポピポピンポーン!」


 何?私を狙うなら鍵が開いてるから入ってくればいいのに。

 私を弄んでいるの?


 そうだ!ドアの丸で見てみよう。


 私はドアの前までこそこそと歩き、ドアアイから外をのぞき込む。


 あれ?あれれ?周りは一面緑?どうして?フィルターでも貼られてる?


 とにかく一旦部屋の中まで戻って危機が去るのを待とう。

 警察を呼ぶのも良いかも。気づかれないようにドアチェーンも締めとこ。


 良し。これでOK。早く部屋まで戻らないとっ!


 突如として一本廊下の目の前の壁に何かの紋様が刻まれる。


 今度は何……?もう!早く部屋に戻らないと


 私が部屋の前の扉まで駆けていく間に魔法陣はさらに光を増す。


 開かないっ!開かない~。本当にあった怖い話~.


 私が必死にドアノブを回しても扉は1ミリたりとも動かなかった。


 開いてっ!開いて。私の配信者人生~~。


 その瞬間、紋様らしき物は台風なんて軽く超えるような突風を放つ。


 私はなんとか自分の部屋のドアノブにしがみついてこらえた。

 しかし、風は止まるどころか勢いを増す。


 もう……ダメ。


 私の手はドアノブから少しずつ滑り、とうとうドアノブから離れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る