第56話 裸よりエロい

――ガラガラ


「お、おまたせ」


絶景に黄昏ていると、窓が開く音がする。


「ここからも眺め――」


「ちょ、振り向かないでよ!」


振り向きざまに俺は言うと、笑来はタオルで自分の体を全力で隠す。


「いいじゃんか、隠れてるんだから」


「隠れてるけど恥ずかしいじゃん!」


「水着より隠れてるだろ」


「それとこれとは話が違うから! てか早く顔を背けろ!」


「え、普通に無理なんだが」


羞恥に顔を染めながら、必死にタオルを抑える笑来。

純白のタオルからは体のラインがハッキリと浮き出ていて、スラッと伸びるハリのある白い足、爪には控えめなピンク色のネイルをしている。

うん、エロい。目が文字通り釘付けになる。


「ったく、相変わらずエロガキなんだから」


プクッと頬を膨らませながらも、笑来は俺の隣に入ってくる。


「エロガキって言われる筋合いなくないか? 誘ったのはそっちだろ?」


「いやまぁ、そうだけど」


一緒にお風呂に入るということは、見られるという事。

恋人とお風呂に入るのは、見られてもいい覚悟がある人だけだ。俺その覚悟がある。


「……だって、こうやってゆっくり2人で話がしたかったんだもん」


顔を半分ほどお湯に沈めると、ブクブクと泡を吹かす。


「あの2人が居たらうるさいからな。主に奏だけど」


「あとは、一緒に温泉に入るの、なんか憧れだったからかな」


きょろっと目を逸らす。

可愛い憧れだな。

確かに、恋人と個室の露天風呂でのんび過ごすのはロマンを感じる。エロいロマン、エロマンも同時に感じるが。


「ま、しばらく邪魔は入らないし、ゆっくり入ろうよ」


「……だね」


と、笑来は体を寄せてくると俺の肩にちょこんと頭の乗せる。

腕に触れる、笑来の柔らかい肌。

髪はお団子に結っており、色気のあるうなじを露出させている。

細っそらとした首、辿っていくと、ほくろがチャームポイントの鎖骨。さらに下は湯船で見えないが、少し谷間が湯面に見えていた。


「なんか、エロい視線が向けられる気がするんだけど」


胸元を手で覆いながら、笑来は俺に細い目を向ける。


「隣にはだかの彼女がいるんだ、普通見るだろ」


「タオルは巻いてるけどね」


「お湯に浸かるとタオルが体に貼り付くから、裸よりエロい」


「……まじ最悪」


「お前だって、さっきから俺の下半身をチラチラと見てるじゃんかよ」


「んなっ……」


「バレてないとでも思ったのかよ」


夜景を見ているフリをしながら、鼻の下を伸ばして俺のアレを見ようとしていた。

俺はタオルを巻いていないので、見られたら一発アウトだ。

今、この状況に俺の息子は硬くなっているからな。逆にこれで興奮したい男子はおかしい。



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