第54話 お風呂入ろ?
「笑来ち、次はどこ行きたいし~?」
まんじゅうを頬張りながら但野ちゃんは笑来に聞く。
どうせまだまだみんなを食べ歩きに付き合わせるだろうと思ったが、
「ねね、私から一つ提案があるんだけど」
「何~?」
「ここからさ、別行動しない?」
「はるっちと2人で巡りたい的な?」
「まぁ、そんな感じ」
まさかの別行動の提案。
俺としては、全然構わないのだが、せっかく4人で来ているの奏と但野ちゃんはいいのだろうか。
「あーしは別にいいよ~。奏と2人で回りたいところもあったし~」
「全然いいぞ? どうせ笑来が悠を連れ出したいのにも何か理由がありそうだし。まぁ詮索はしないけど」
「奏、よく分かってるじゃん」
笑来は器用にウインクをする。
「んじゃ、こっから別行動ってことで俺達は」
「ちょ、奏っちまだ2人居るって」
俺と笑来に手を振ると、奏と但野ちゃんは手を繋ぎながら街中に歩き出した。
いいな、初々しいカップル。
この2人は、末永く続いて欲しいものだ。
コンビニ袋を2人で持ち、手を繋ぎ、時に喧嘩して、普段は笑っているカップルになると願うばかりだ。
「よし、邪魔者はいなくなった」
2人の姿が見えなくなると、笑来は小声で言う。
「あの2人邪魔だったのかよ」
「まぁ、外に出たのも2人になるためだけの作戦だったからね」
にししと悪い顔を浮かべる。
2人で周りたい気持ちは分からなくはない。
けど、もう少しみんなで周ってからでも遅くはなかったとは思う。
「んで、どこ行きたいんだ?」
そこまでして2人で行きたいところとか、どこなのか気になる。
「行く場所はホテルだよ?」
小首を傾げる笑来に、
「なんでホテルに戻るんだよ」
「そりゃ~、したことがあるからに決まってるじゃん」
「みんなでお菓子のつまみ食いか?」
「んなわけないでしょ!」
頬を赤らめながら言い張る笑来は、少し落ち着くと、
「私と……2人っきりでお風呂……入りたくないの?」
「え、入りたい」
即答する。
2人になりたかったのはそのためだったのか。
確かに、ホテルに戻って別々の部屋に居たとしても、俺達の部屋にいきなり入ってきたら修羅場になるし、今から別行動してホテルに先に戻ってお風呂を楽しんだ方がいい。
ナイス作戦だ笑来。
「じゃ、じゃぁ戻って2人でお風呂入ろ?」
笑来は俺の腕に抱きつくと、上目遣いをしてくる。
「すぐ行こう、今すぐ行こう」
そのなんとも可愛い表情に、俺は顔を赤らめながら歩き出す。
笑来と一緒に温泉……これは楽しくなりそうだ。
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