第52話 夜ご飯

「よし! ご飯食べに部屋戻ろ!」


 話を切り替えようと、パチンと奏は手を叩くと焦った様子で言う。


「お風呂入ったらお腹減ったから早く私も食べたーい」


 空気を読んだからか、笑来もそれに賛同する。

「あーしもお腹減っちゃった~」


「サウナ入ると異様にお腹減るよな」


「分かる! 私達も入ったけど一回でもうお腹減ったしキマった」


「やっぱサウナは偉大だわ」


 そんな雑談をしながら、俺達は部屋へと戻る。

 部屋に入ると、先程までお菓子やらジュースやらを置いていたテーブルには、豪華な夕食が用意されており、部屋の端に俺達のモノは丁寧に置かれていた。


「お、ごはんお代わり出来るじゃん」


 テーブルの横には、大き目の土鍋。しゃもじが添えられているということは、白米で間違いない。


「うほぉ~! めっちゃ美味しそう‼」


 目をキラキラとさせながら、歓喜の声を上げる笑来。

 ラインナップは、メインに刺身の三種盛り、川魚の塩焼き、国産和牛の陶板ステーキ、香の物、酢の物、デザートと豪華なメニューであった。


「バリうまそうやん」


 俺も座布団に座ると、ご飯を眺めながらよだれを垂らす。


「俺のおすすめはやぱステーキだな、溶けるよ肉が」


「ちなあーしのおすすめは魚かな~、刺身も焼き魚もバリやば」


「ダメ……早く食べたい」


 空腹で今にも目の前のご飯に食らいついそうな笑来は、ガンギマりの目を向けてくる。


「だな、食べようぜ」


「先にジュース注いじゃうな~」


 瓶コーラを、冷えたグラスに注いていく奏。

 全員分注ぎ終わると、


「今日は――、えっとこれは何の集まりだっけ」


 笑来は率先して司会進行する。


「確かに、これ何の集まりなんだ?」


「あーし達は呼ばれただけだから、メインは笑来ちとはるっちでしょ?」


「悠の笑来のお疲れ会でしょ。色々あったんだから」


「あーね。確かにお疲れ会だね」


「そしたら……アバズレと死闘を繰り広げた私達に……」


「それはヤバいだろ……」


 コホンと一度咳払いをして言い直す笑来に、俺は苦笑いをする。


「んなら、何がいい?」


「そうだな……普通に「乾杯」でいいんじゃないんか?」


「だね~、もう過去の事は振り返らない方がいいし」


「よっし、んなら笑来気を撮り直してもう一度」


「さて、これまで頑張った私達と、手伝ってくれた秋羅ちゃんと悠と新しいカップル爆誕に――」


「「「「かんぱぁ~い!」」」」


 グラスがぶつかる甲高い音と、俺達の陽気な声が部屋の中にこだました。


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