第51話 いい意味で別人

 室内風呂、露天風呂を楽しみ、サウナで整い、1時間半ほど温泉を満喫するとお風呂から上がった。

 浴衣に袖を通し、牛乳を一気に飲み干し、しばしエントランスのソファーにて休憩していた。


「いやぁ~、温泉最高」


「サウナで整いすぎたな」


「12分3回は流石にぶっ飛ぶ。足が動かない。眠気が凄い」


「おいおい、楽しいのはここからだろうがよ」


 遊ぶ前にサウナなんて入らなきゃよかった。

 ソファーに体が沈み、身動きが取れない。体が重すぎる。


「ほら、アイス。ここの名産の抹茶味」


「助かるわ~」


 エントランスに置いてある無料のアイスボックスから、アイスを渡してくる奏。


 宿泊している人は、ここからいつでも無料でアイスが食べれるサービスらしい。

 ちなみにコーヒーやジュースなどのカップ自販機もタダで飲める。

 この旅館、最高だ。

 天井をボーっと見ながらアイスを食べていると、


「おまた~」


「え~! アイス食べてる~! 私も欲しい~!」


 お風呂上りの笑来と但野ちゃんがこちらにやって来た。


「アイスならそこで……って浴衣最高」


 笑来に目を向けると、浴衣をしっかり着ていた。お風呂上りの火照った体、濡れた髪がなんとも、エロい。普段見ない服装などが新鮮でエロいとはこのことだ。

 小さい頃からずっと見ているが、すっぴんも可愛すぎる。


「どうっ? 似合ってるかな」


 くるりと一回転して、ひらりと浴衣の全体を見せてくる笑来。


「可愛い、好き。浴衣最高」


「それさっき聞いたよ~。でもありがとっ」


「ほらバカップル」


 横から奏は呆れた口調で言う。


「あーしもアイス食べる~」


「悠何味食べてる~?」


「俺は抹茶だぞ」


「んなら一口貰うとして、私はバニラー」


「あーしは抹茶でいいや~」


 と、2人はアイスと取ると、俺達の対面に座る。

 座っているのは、笑来と但野ちゃんのはずなのだが、


「誰、この美少女」


 笑来の隣に座っているのは、但野ちゃん……と思わしき美少女。


「あーしだって。メイク取ったらそんなに違うのやっぱ」


「いい意味で別人」


 赤い口紅もなく、重そうなつけまつげもない。髪もツインテールではなく下ろしてる。

 ギャルメイクを取った但野ちゃんは、顔立ちのいいおしとやかな美少女であった。


「まさか奏。お前この事知ってて――」


「知ってはいたけど! 別にそこで決めてないから!」


 清楚好きなのは健在だったようだ。


「ん、なんの話ぃ?」


「いや、こっちの問題だから気にしないで大丈夫だ秋羅」


 当人には気付かれてないらしい。

 普段はギャルなのに、メイクを取った時は清楚。そのギャップに惹かれたのだろうか。


 ホント、ギャップありすぎるよ但野ちゃん。こっちの方がウケがいいのでは?

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