第46話 ギャルの乗り

 「遥々、お越しいただきありがとうございます。秋羅の祖母です。こちらの旅館で女将をやらせていただいております。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いします」


と、但野ちゃんの祖母は深々と頭をさげ、お出迎えをしてくれる。


「とりま荷物部屋に運んで、一時間くらいどっちかの部屋でゆっくりしよ~。お菓子もジュースもあるから~」


受付の横の冷蔵庫から、ジュースを一本取ると、エレベーターの方に行く但野ちゃん。


「受付は既にこちらで済ませておりますので、秋羅について行っていただいて大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。今回無料でこんなにすごい場所を用意していただいて」


「とんでもございません。秋羅の友人ですもの、可愛い孫の為だったら三途の川でも渡りますよ」


「それは渡らないでください」


「フフフ、冗談ですよ」


ユーモアがあるな但野の祖母。今のは苦笑いしか出来なかったけど。


「ほら、早くお部屋行ってくつろご!」


「お、おい走るな」


俺の手を引っ張りながら、但野ちゃんの元へと向かう笑来。

奏はというと、なにやら立ち話をしている。


さっきのお久しぶりという発言と、これを見るに、奏と但野ちゃんの祖母は過去に面識があるらしい。

後で詰めてみよう。


「おまた~」


エレベーターがくると、何食わぬ顔でこちらへと向かってくる奏。


「これ部屋のカードキー。部屋出る時忘れたら入れなくなるからそこだけよろ~」


ドアが閉まると、カードキーを渡してくる。


「最上階のスイートルームでしょ? めっちゃ楽しみなんだけど~」


キャッキャッと声を上げる笑来に、


「景色もいいし、さいこーよ。ジュース飲み放だしお菓子も食べ放だし、ご飯もおいしー」


「最高じゃん~。秋羅ちゃん天才か~!」


「天才しょ~。提案した笑来ちも神~」


「私達最強ってことだね~」


「あーしらバリさいきょ~」


独特のギャル乗りだな。俺には付いていけない。

にしても奏はさっきから静かだな、ソワソワしてる感じがするし。

これは俺達に言いたいことがあるみたいだなこれ。

部屋に入ってからが楽しみだ。


どうせ、但野ちゃんと付き合った報告と、ここに前も来た事があると言われるだけだろうがな。


真剣に話す奏は見てて面白いから、ジュースでも呑気に飲みながら相手をしてやるとするか。


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