第45話 高級旅館
「温泉だぁぁ~」
「……はしゃぎ過ぎだろ」
5日後、奏たちと予定を合わせたり、その他諸々をして俺達は今、温泉街へと足を運んでいた。
俺と奏と但野ちゃんの前で、テンション高く街内の写真を撮りまくる笑来。
10月前半。少し肌寒い季節に入り、温泉を求めるお客で街も賑わっていた。
こんなに混んでいるのに、すぐ宿が取れたのには理由がある。
「何から何までありがとね、但野ちゃん」
「いいのいいの~、お礼ならうちのおばーちんに言ってちょ」
今回泊まるのは、露天風呂付き大浴場が目玉の旅館。俺達は、その旅館の一番高い部屋に泊まる。
夕食、朝食付き。いつでもドリンク飲み放題。そして部屋にも露天風呂が付いている。
普通だったら一泊、6万円以上する高級プランなのだが、今回は無料。
それも、全部但野ちゃんのおかげだ。
この旅館は、なんと但野ちゃんの祖母が女将をしている宿で、孫の友達が来てくれるということですべて無料にしてくれたらしい。
ギャルからは想像もできなかったな、祖母が温泉旅館の女将なんて。
それに全部無料にしてくれるとか気前が良すぎないか但野ちゃんの祖母。
本当にありがたいのだが、迷惑じゃないか少し心配にもなる。
「今回はこれまでの疲れを癒そう~っていうご褒美的な感じだからなんにも気にせずに過ごしてね~。あーしもくつろぎたいし」
「ホント秋羅ちゃんありがとね~。私達激安宿予約しようとしてたから助かったよ~」
「秋羅は見た目に反して温泉好きだからな~。俺よく話聞くよ」
「へぇ~、意外だね~」
「ギャルでも温泉入るし~。温泉ちょ~きもち~んだけど~」
ギャップ萌えだな。
「てか旅館ここだし。はよ入ろ~」
きなり但野ちゃんは立ち止ると、真横にある建物に入っていく。
「「「デカっ!」」」
その建物を見上げると、俺達3人は声を合わせて驚く。
城を感じさせるような10階建てのビル。入口付近には高級感漂う照明と置物。
温泉街の大通りに面しており、ひときわ目立つ。
グイグイと中へ入る但野ちゃんに続き、俺達は肩を縮こませながらついて行く。
エントランスをくぐると、檜の香りがなんとも落ち着く木目の室内。
和風のBGM、温かみのある照明。
普通の旅館と高級感がまるで違う。
「おばーちん~。来たよ~」
お出迎えを待つのかと思ったのだが、但野ちゃんは靴を脱いでズコズコと室内に入っていく。
「あら~、秋羅来たのね~待ってたわよ~」
すると、但野ちゃんの声に気付いたか、奥の方から着物を着た但野ちゃんの祖母がススっと現れる。
「おばーちん、これ友達ね~」
「初めまして」
「今日明日お世話になります」
「お久しぶりです」
但野ちゃんに紹介され、挨拶をする。
ん、待てよ。今「お久しぶり」って言ってる輩が一人いなかったか?
……とりあえず気にしないようにしよう。
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