第34話 やけくそ


「よし、着いた」


「いざ決戦だね」


 話ながら歩いていると、喫茶店の前に到着する。

 少し心拍数、隣にいる笑来も落ち着きがないようにも思える。

 店内に入ると、


「おーい! こっちこっち~!」


 奥まった席から手を振りながら顔を出す実心。


「ごめん、待った?」


 笑来と手を繋ぎながら、実心と対面の席へと座る。


「ううん、待ってないよーへ~き」


「すみません、アイスコーヒー2つ」


 変な力の入りで喉かが湧いたので、とりあえず注文をする。

 さて、どう話を切り出そうか。

 このまま無言も気まずいし、俺から話を振った方がいいな。


「あの、今日呼んだのは2人に話があったからなんだ」


 何から話そうか考えていると、先に切り出してきたのは実心であった。


「俺達、というか俺も実心に話があるんだ。結構大事な話」


「そ、そうなんだ……ならどっちから言う?」


「どっちでもいいけど、先言う?」


「私、先に悠のを聞きたいかな」


 先に頼んでいたキャラメルラテを一口飲むと、マドラーでカップを回しながら言う実心。


「分かった」


 実心もなにか話たいことがあったのか。でも、俺だけではなく笑来にも関係ある話らしい。

 まぁ、恋愛関係の話だったら必然的に笑来も話の話題になるだろう。


「あのさ、俺と笑来、但野ちゃんから実心の中学の話聞いたんだ。しかも結構詳しく」


「……え」


「別にそれを聞いて何しようと思ったわけでもない。ただ純粋に気になっただけだからそこは安心してほしい」


「そ……そか」


「色々踏まえて実心に言いたいんだけどさ――」


「ちょっと待って!」


 肝心な所で、実心は俺の言葉に横入りをする。


「ど、どうした」


「まだっ! その言葉は聞きたくない……だから、先に私の話を聞いてくれるかな?」


 うるませる瞳をこちらに向けてくる。

 振られる、というか付き合えないと言われるのを察したのだろうか。話がある、という時点で大体分かるだろうが。


「ちょっと、悠いい?」


「え、ちょどこに?」


 横で静かに聞いていた笑来は、突然俺の手を引っ張ると、お手洗いの方へ連れていく。


「なに、どうしたん?」


「どうしたんじゃないって。あれ、絶対振られる前に一回ダメ元で復縁しようとか言ってくるパターンだって」


「マジ?」


「大マジ」


 最後のあがきというやつか。多分もうダメだからどうにでもなれというやけくそ。

 ワンチャンに掛けるってわけか。

 どうせ復縁など持ちかけられても、前から言っているが俺はする気など全くない。

 笑来がいるのに、振ってまで実心と付き合うわけがないのだ。

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