第32話 振ってあげる
「これはマジここだけの話なんだけどさ――」
と、真剣な眼差しをすると、
「これ笑来ちの前で言うのはなんだけど、はるっちと別れたのも先に別れを告げられるのが怖いから自分から言ったって言ってたし、別れたこと後悔してたよ実心たん。はるっちが「運命の人だった」って」
「なんだ……それ」
衝撃の事実に、戸惑う俺。
実心に未練がある? ていうか振られるのが怖いから自分から振った?
全く意味がわからない。
でもだとしたら振った理由が曖昧だったことに辻褄が合う。
長く続いてたのも、ちゃんと上手くいっていたという証拠にもなる。
「なんかごめんちょ。こんな話今は笑来ちがいるはるっちに言っちゃって」
「いや、俺はいいんだ。もう笑来がいるし笑来の事が好きだから……でも、結構くるなこれ」
実心とやり直す気はさらさらないが、それでも考えさせられることはある。
「実心、そんな理由で振ったの? 何振られる前に振って、意味分からないんだけど。怖いからってそれ理由にして自分の過去から逃げてるだけじゃん」
笑来は少し苛立ちを見せる。
これは、俺を振った事に対してのなのか、実心に対してのなのかは分からない。
俺も、少しこの話を聞いて苛立つところがある。
過去の事で悩んでいたなら、付き合ってる当時相談して欲しかった。そうしたら、少しでも安心させてあげるように努力していた。
なのに今更とか……やり方が卑怯だ。
「これ、多分振ってあげた方がいいのかな俺」
「悠、どうゆうこと?」
「未練があって、まだ俺と付き合いたいって実心が思ってるなら、ちゃんと理由を言って振ってあげた方がいいのかなって」
踏ん切りをつけるためにも、それが最善策なのかもしれない。
ちゃんと好きだったよ。けど、今は笑来が好きだからごめんねって、当時は好きで振られて落ち込んでたって、振られてなかったら実心を好きでいられたって。
その方が、実心も前に進めると思う。
「私もその方がいいと思う。けど、私もそこについて行くという条件があるけど」
「来てくれた方が俺も助かるわ」
実心に変に迫られないようにガードが欲しい。
「あーしもそっちの方がいいと思うよ~。後処理はこっちでどうにでも出来るし~」
「但野ちゃんも助かるわ。アフターケア頼んだ」
「おけー、任せられたー」
あとはどう実心にアポを取るかだな。もうあっちからグイグイ来ないだろうし、自分から行くしかないのかもしれない。
「ん、LINE来た」
悩んでいる俺の元へ、一件の通知が届く。
「ん~だれだれ~? ――は?」
「女か~? ――ガチで女やん」
みんなで俺のスマホを覗きに来るが、すぐに悶絶する。
「――こんな都合よくくることあるか?」
画面に表示される内容は、
『明日、会えるかな?』
と、実心からのメッセージであった。
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