第31話 悪循環


 すぐにヤれそうというだけのモテ。

 思春期真っ只中の男なんてものは、ヤりたいだけで付き合うというヤり目がほぼ全員だ。もちろん例外を除くが。


 ヤり目の男子は付き合う人がどんなに男と絡んでてもどうでもいい。だってヤれればいいから。

 なんなら軽い方がいいという人もいる。


 その中にも俺みたいに純粋に実心を好きで付き合った人もいるだろうけど、実際は大半はヤり目で間違いない。

 高校でもそうだ。ヤろうと思ったらすぐに別れを告げられるという無限ループ。


「でもねー、これは誰にも言ってない話なんだけど奏っちを信用してるし、笑来ちと

 はるっちも信用できそうだから言っちゃうわー」


 髪の毛をクルクルと手でイジりる但野ちゃん。


「なに、そんな話あるん?」


 但野ちゃんの横に座ってる奏は少し驚く。


「そりゃあるに決まってるし? あーしだって口が堅いところくらいあるし?」


「お前ってやっぱ優しい所あるよな。見かけによらず」


 くしゃくしゃとせっかく整えた髪を撫でながら言う奏に、


「ちょ! あーしのことバカにしてるん⁉ 奏っちそーゆーとことあるから嫌いなんですけどー!」


 嫌そうに手を払おうとするが、顔は少し喜んでいる。

 なんかこの2人のやり取り見てると、


「奏と秋羅ちゃんカップルみたいだね」


 そう、カップルみたいだ。

 テーブルに体を乗り出しながら言う笑来に、


「べっ……別にあーしらはそーゆーのじゃないし~? ただのマブで恋愛とかのじゃないしー?」


「そうだそうだ! 好きとかじゃないから? 俺」


 どちらもそっぽを向くと、顔を赤くしながら言う。

 あ、これ両片思いっていうやつだ。この2人はそーっとしておくのがいいのか、背中を押してあげるのがいいのか。


 多分、奏のことだから告白されるのを待つだろうけど、このギャルも見た目に反して自分から行かなそうなキャラ。

 くっ付くのには少々時間がかかりそうだ。


「――っ話を戻すけど、実心たんは過去に男子にエグイことされてるからその反動であーゆことしちゃうんだと思うよあーしは」


 一度深呼吸をして顔の赤みを引かせると、但野ちゃんは話を続ける。


「トラウマ的な何かか?」


「実心たんが中三の時に最初に出来た彼氏が先輩に目の前で寝取られて、それがショックで一ヵ月くらいまともにご飯も食べられなかったんよ。そこからかな、実心たんが男関係で問題を起こすようになったのは」


「トラウマの反動……ね」


 何かショックを受けた反動で、人が変わってしまうのはよくある話だ。

 彼氏を先輩に寝取られる……相当ショックを受けるだろうな。

 しかも中学の時でそれって、ぶっ飛んだ話すぎる。


「カラオケに一緒に行って、トイレから帰ったら先輩とシてたらしい……マジで意味不だよね」


「でも、それが男絡みのことと関係あるのかな。だって男子恐怖症とかになってもおかしくないよね? それだったら」


 笑来はジュースを一口飲むと呟く。


「あーしが思うに、実心たんは愛に飢えてるんだと思うんだよね。本物の愛に」


「だからその『本物の愛』とやらを探してると」


「そーゆーこと。でもみんなヤり目とかちゃんとした恋愛じゃないみたいですぐ別れちゃうみたい」


「へー。可哀想だとは思うし同情はするけど、それで悠をあんな目に合わせるのはどうかと思う私は」


「俺も同感だ」


 隣に彼氏がいるということで、寂しさを紛らわしているだけなのかもしれない。

 安心感がなくなったら別れる。その繰り返し。

 完全に悪循環だ。

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