第28話 フッ軽

「俺もそんな知らないからな。ちょっと聞いたくらいで」


「だったらもっと聞き出してよ! 奏ならいけるでしょ! 仲いいんでしょ!」


「まぁ、たまに遊ぶくらいには?」


「遊ぶなら今度私達も誘って! そん時聞き出す!」


「あ、俺も行く感じなのね」


「知りたいんじゃないの? 悠も」


「そうだけどさ」


 別に、俺は奏から話を聞くだけで十分だ。会ったところでその後輩に色々聞かれそうだし。


 思い出したくもない話をわざわざ話したくないからな。


「悠も来れば? そんなお前の話をグイグイ聞くやつじゃないからさ」


 流石友達。俺の心配していることをちゃんと把握している。


「そうそう! もし聞かれそうになったら私がガードするから安心して!」


 と、笑来はサムズアップする。


 頼もしいガードもいるからな。なにかあったら絶対に守ってくれるし、安心だ。


「なら行こうかな」


「よし、そしたらあっちの予定も聞いてみて会える日探してみるわ」


「あざ!」


「よろしく頼んだ」


「会うのカラオケとかでいいよね?」


「人に聞かれない所ならどこでも」


「同じく」


「おけ。伝えとく」


 奏は返事をしながらスマホをいじる。

 実心の後輩、そして奏の後輩というか友達……どんな人なのだろうか。

 実心と似て見た目清楚系な子が来そうだ。それに、奏が遊ぶ女子と言ったら清楚系が浮かぶ。


 こいつは、落ち着いて清楚な女子としか遊ばないからな。歴代彼女は全員系統がそっち系。

 友達も、大体写真を見せてもらうと黒髪ロングで目が綺麗で上品な子ばかりだ。


「あ、カラオケでいいってさ。日程は俺達で決めてって」


 何曲か歌い終わる頃に、奏はスマホを画面を見せてくる。


「じゃ、3日後とかにする? ほら、先生の会議かなんかでちょうど学校早く終わるし」


「あり。バイトまだ始まらないし」


「俺もバイト休みだからいいよ。連絡しとくわ」


「ないす~!」


「頼んだわ」


 早速、会う予定が決まった。心配になるくらいフッ軽だな、その後輩。


「どんな子なんだろうね~、めっちゃ気になるわ~」


 体を揺らしながら鼻歌を歌う笑来。

 気になるのはそこだ。さっき言った通り清楚な事はほぼ確定だけど、あとは性格。

 実心みたいにゲスなのが来るのか、ちゃんといい子が来るのか。後者であってほしいと切実に願う。








 ――


「ういっす~。あーし但野秋羅ぁ(ただのあきら)。実心たんの一個下の後輩~だからよろ~」


「「まさかの金髪ツインテールギャル‼」」


 3日後、カラオケで目の前に座っているのは、金髪ツインテールギャルであった。


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