第27話 後輩

「うっせぇうっせぇうっせぇわぁ――」


「え、ガチ」


「マジのガチ」


 笑来が熱唱中、俺は奏に先程の事を話していた。


「んで、どうだったんだよ」


「ボロクソ言ってやったよ。俺も笑来も」


「実心のやつ、これでメンタルやられただろうな」


「懲りてくれればいんだけどなホント」


「自分がまたほぼ確実に落とせるって言う元カレにボロクソ言われたら、結構キツイだろうけどな」


「でも、あいつはそんなんで折れるやつじゃないと思うけどな」


 多少なりとも、俺と笑来の言葉は刺さっているだろう。

 実心も、俺がコロッと自分の方に来ると思っていただろうし、想定外だったと思う。

 俺があざいと表情や行動で落とせると思うなよ。

 一度目は落ちたけど、もうありえない。


「俺も実心になんか言ってやろうかな。こっちまでムカついてきた」


 タッチパネルで曲を選びながら、奏は顔をしかめる。


「あいつに俺達関連で関わるのはやめとけ。ガチろくなことないから」


「逆に利用されそうだからやめとくわ」


「ありえる」


 俺の友達という事を利用して、上手く使い回してきそうだ。


「しかも新しい彼氏とも別れたらしいしな」


「うっわ早くね?」


「え、また別れたの⁉」


 笑来は歌うのをやめ、マイク越しに大声を出す。


「らしいぞ」


「いつもよりペース早くない?」


「早いよな」


「やっぱ悠を狙うためなのかな」


「じゃねーの?」


 と、相槌を打つ奏。

 彼氏が入れ替わるペースが早いのはいつものことだ。何故か俺が例外だっただけで、これまでもコロコロと変わっていたのは知っている。

 まだ、俺を狙って別れたとは断定できない。まぁ、行動的にほぼ確定で間違いはないけど。


「でもあのゲス女なら男いる時でも他の男狙いそーだけどね」


「実際、俺の時もそうだったぽいしな」


 別れてから他の男を狙って落とすにはそれなりに時間がかかるだろう。

 ある程度イイ感じの関係、いわゆるキープがを作っていると考えるのが合理的だろう。


 今回は、別れてから狙うという例外を狙ってきているのかもしれない。


「そうえば、後輩も言ってたな。5~6人キープが居たとかなんとか」


「誰の後輩だよ」


「実心の」


「「実心の⁉」」


 声が被る俺と笑来。


「え、お前あいつの後輩と繋がりあるのか」


「詳しく詳しく!」


 2人で奏に詰め寄る。


「なんかインスタで繋がって仲良くなったんだよ。んで話してたら実心の話になった」


「あいつの中学の話気になるな。全然教えてくれなかったから」


「私も! あのクズがいつからなのか気になる!」


 頑なに中学の頃の事を教えてくれなかったからな。話したくないことがあるとか言われて。


 当時はいじめをされていたとか、そういうあまり人に言いたくないことがあると思ったから深追いはしなかったが、その理由が今ハッキリした。


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