第23話 急にどうした!?

「おはよ~」


「おっす~……お前らどうした?」


「ん? 何が?」


「距離感だよ! バグってるって!」


 週明けの学校、教室に入るや否や俺は奏に詰められていた。


「距離感?」


「別に普通じゃない?」


 と、小首を傾げる俺と笑来だが、


「どこが⁉ お前らこの数日に何があったんだよ! こんなにイチャイチャしてたかお前!」


 どうやら、笑来が俺の腕に抱きつき、俺が笑来の肩に手を回している光景が異様だったらしい。


 そう、これは策略だ。

 単純に、くっついて居たいという願望もあるが、これは実心に対する見せつけでもある。

 もう未練などはない。


 水族館の件でもう、あいつの事を気に掛けるのはやめた。

 俺には笑来がいる。それだけでいい。

 誰よりも信頼ができる最高の恋人だからな。


 未練はないと言っても、憎しみはある。振ったくせに思わせぶりとも言えるような態度を取ってきたからな。

 やり返す以外の選択肢は俺達にはなかった。無視してたら、また俺があっちの手玉に取られてしまう。


「何って、付き合ってるんだから当然でしょ?」


 俺の腕に胸を押し付けながら言う笑来。


 その言葉に「え、あの2人付き合ってるの?」「幼馴染以上だったんだ」「実心ちゃんから乗り換えたのかな」などと教室がざわついた。


 だが、そんなのはもうどうでもいい。何を言われても付き合うのは俺達の自由だからな。


「ガチでお前ら何があったんだよ……」


 不審な目でこちらを見る奏。


「別に何も?」


「リア充を楽しんでるだけだけど」


「あ、そうですか」


 とことん俺はこれからリア充を楽しむ。

 笑来との青春を謳歌するのだ。


「おっはよー」


 そんな話をしていると、陽気な声共に教室のドアが開く。


「実心ちゃんおは~」「はよはよー」


 登校してきたのは実心。


「……おはよおはよ~」


 こちらに一瞬目を向けてきたが、何も言わずにすぐ友達の元へ駆け寄って行った。


「そうえば、実心の件はどうしたんだよ」


 実心のことをチラ見しながら、奏は聞いてくる。


「どうもなにも。もう関係ない」


「吹っ切れたのか?」


「当り前。ていうか今は見せつけるのに必死だね」


「このイチャイチャをか?」


「そうだ」


「だから朝からイチャついてるのか」


「大正解」


 3人で話していると、やはりこちらに視線が送られてくる。もちろん実心からの。


「今日さ、放課後久ぶりにカラオケでも行かない?」


 気にしないように、俺は背を向けながら話す。


「いいね!」


「あり!」


「場所は駅前のでいいか?」


「お、私ちょうどクーポン持ってるんだ~。2時間無料の」


「は、強すぎだろ」


「流石笑来。天才だ」


「もっと崇めなさい2人とも」


 放課後、カラオケに行くことが決定した。

 だがこの時、


「ふーん、カラオケねー」


 獲物を狙う動物のような視線が微かに送られていたことを、まだ俺達は知らなかった。



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