第21話 いい性格(皮肉)
「それで? さっきの実心が『企んでる』っていうの具体的に教えてくれない?」
一気に機嫌がよくなった笑来は、俺の隣で腕に抱きつきながら言う。
「あいつさ、俺と笑来がデートしてるって言った時、悲しそうな顔をしてたんだよ」
「え、なにそれ」
「しかもさ、俺の手を握った時も明らかに作り笑顔でさ」
「それは絶対になにかやろうとしてるね」
うんうんと首を縦に振る笑来。
「でも、何をしようとしてるのかね」
唸る俺に、
「そんなの一つに決まってるじゃん。悠をまた落とそうとしてっるんだよ」
と、ポカンとした顔で言ってくる。
「んなバカな」
「最悪なことに、それしかないんだよね」
もしそうだったとしたら今更すぎないか?
お互い新しい恋人ができてからっていうのは遅すぎると思う。
やるとしたら、お互いフリーの時に仕掛けてくるはずだ。
「しかも腹黒いったらありゃしないよ、このやり方」
不機嫌そうに頬を膨らませながら言う笑来。
「彼女が出来た状態を狙うのは、本当に性格悪いよな」
「しかも、自信満々なのがムカつくよね。私から悠を取れると思ったら大間違いなんだから」
「俺も、あんなやつに転がるわけがない」
裏が分かってるやつの罠に、まんまと乗っかるバカではない。
それに、実心などもうとっくに興味などない。何かの間違いでまた実心と付き合ったとしても幸せになれるわけがないしな。
「とりあえずさ、悠。実心を泳がせてみれば?」
「は?」
笑来の提案に、俺はアホな声を出す。
「どうゆうこと?」
「だからさ、こっちもあっちの裏が分かってるんだし、遊んでやろうよってこと」
「あ~……性格悪いな、お前」
「そんなの昔っから知ってることでしょ?」
「まぁな」
面白そうな提案だ。
これで本当にまた告白してくるようなことがあったら、証拠に動画でも撮っておいて拡散でもしてやろうかな。
『誰にでも股を開く女』と付け加えて。
「多分さ、これから実心から連絡が来ると思うんだけど、ブロックとかしてないよね」
「うん、なんも手は付けてないけど」
「ならよし。あとはあっちから仕掛けてくるのを待つだけだね」
「俺がするとしたら、インスタのストーリーとかで『DMとかで話そ!』って上げれば反応してくるかも」
「あり! 逆にこっちから仕掛けるのも面白そう!」
「んなら、早速今日の夜してみるわ」
「めちゃ楽しみに待ってるわ」
と、俺達は熱い握手を交わして顔を合わせる。俺たち、本当にいい性格してるよな。もちろん皮肉だ。
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