第15話 イジワルすんな!
その後、実心のことなど気にせずに水族館を周り、早1時間。時刻は正午を回ろうとしていた。
水族館の目玉である巨大水槽、クラゲ、深海魚、ペンギン、カピバラなどを見て回り、たどり着いたのはイルカショー。
時間も、ショーが始まるまであと15分ちょうどいい時間だ。
「うわぁ~、イルカショーなんてテレビでしか見た事ないよ~」
「初めてなのか」
「うんうん! あれでしょ? なんか水掛かるからカッパとか買うんでしょ?」
「前の席だったらかかるかもだけど、椅子でかかる席とかからない席が色分けされてるから後ろ座れば大丈夫だぞ?」
「えぇ~、かかりたくないけどイルカは近くで見たいし~、どうしよう」
「かからないギリギリの席に行くか?」
「だねだね~!」
と、ルンルンで俺の手を引っ張り階段を降りていく。
実心を見つけてから、そうえば俺達は手を繋いだままだった。
「ここでいっか」
「丁度かかるかかからないかくらいのラインだな」
「攻めるよぉ~私は」
水かかる席は青色、それ以外はオレンジ色という色分け。俺達はオレンジの席の最前列に腰を下ろした。
「ん~、始まるまで時間あるね」
壁に掛かっている時計を見ながら言う笑来。
「まぁあと少しだから大人しく待ってようぜ」
「でもお腹減ったんだよなぁ~私」
「今、ここで食べるつもりか?」
「もち」
「やめとけ」
もし水がかかったら、服だけじゃなくて食べ物もびしょびしょになってしまう。
「えぇ~、でもお腹減ったんだよぉ~!」
お腹をさすりながら駄々をこねる笑来に、
「ここで耐えたら、あとでテラス席で食べれるレストランがあるからそこいこーかなーって思ってたんだけど、笑来が言うなら――」
「絶対そっち行く!」
俺が言い切る前に、その話に食い付く。
「ちなみに、フィッシュバーガーが絶品らしくて」
「だからそっち行くって! イジわるすんな!」
「よし、なら今は我慢だな」
少しいじると、笑来は顔を膨れさせながら俺の肩を軽く叩く。
笑来は丸めやすくて助かる。わがままなのは否定できないけど、現状よりいいものが出てきたらすぐにそっちに意見を変えてくれるから助かる。
昔っから変わってないからな笑来の性格は。唯一変わったといえば、口が悪くなったところくらいだろうか。
一番変わって欲しくなかったけどなそこは。
まぁ、笑来らしいって言えばらしいけど。
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