第12話 忘れようデート
「うひょ~! 水族館とか何年ぶりだろ~!」
「俺は一ヵ月ぶりだな……」
数日後の休日。俺と笑来は水族館へと足を運んでいた。
奏のデートすればという一言で火が付いた笑来は、速攻チケットを購入。
そして今に至る。
「今日は嫌な思い出を塗り替えようデートでしょ? いちいち振り返ってたら意味ないじゃん!」
声のトーンを低くして言う俺に、プクリと頬を膨らませる笑来。
そうだ。今日は嫌な思い出を忘れようという名目のデートだ。
楽しい思い出で塗り替える。
いちいち思い出していたら意味がない。
いっそのこと、その場その場で実心としたことを再現して笑い飛ばしてやりたい。
「そうだな。切り替えて今日は楽しむとするか」
「うん!」
と、俺達はぎこちなく手を繋ぎながら水族館の入り口へと向かった。
休日ということでチケット売り場は親子やカップルなどで混雑していたが、
「チケット取っていてよかったっしょ私天才?」
「マジで天才あざす」
俺達は予約専用レーンにて、長蛇の列に並ばずにすんなりと中へ入る事が出来た。
「やっぱ内装は変ってるね~。記憶と全然違う水槽がある」
「変わるだろ、何年も行ってないとなると」
「そうだよね~なんか新鮮な景色」
「魚の種類も色々変わってるんじゃないか? 前見たことないやつとかいるし」
「季節によって変わるでしょそれは……ってあの小っちゃいのクソ可愛いんだけど?」
ボーっと水槽を見ているだけであったが、急に水槽に近寄って黒と青の斑点模様の魚を凝視する。
「可愛いな、なんなんだろうこの魚」
「分からん! けど可愛い!」
「名前くらい調べたりしような?」
「今はこの可愛い生物に見惚れるのに必死だから無理! 悠調べて!」
「ヤダよめんどくさい」
「調べて! 命令!」
「断る」
こうゆうやり取り、幼馴染の時と全く変わってない。それが俺にとっては居心地がいいし、変に気を遣わなくて楽だ。
「ケチだな~、彼氏になっても相変わらずだね悠は」
魚をみつつ、不機嫌な口調になる笑来。
「お前も彼女になったけど、相変わらずの性格だよな」
「それがいいんじゃないの?」
「まぁそうだけど」
「私も普通の悠が好きだからいいんだけどね」
後ろ姿で顔は見えないが、耳が少し赤くなっている。
自分で言って、自分で照れるなよ。そうゆう所が可愛いんだよな笑来は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます