第9話 距離近くない?
「こっち来い」と、俺はアイコンタクトで笑来を呼ぶ。
すると、辺りをキョロキョロしながらも、こちらに駆け寄って来た。
「あの視線はなに? 元カノのくせに振ったくせに悠の事見てくるとかなんなの?」
「俺もちょうどその話をしようとしてた」
どうやら、笑来も実心の視線に気づいていたらしい。
そりゃー気になるよな。
振った元カノが自分の彼氏を見てくるとか、普通に心配だろう。
「自分から振っといて、もしかして未練タラタラ?」
「それはないだろ……からかってるだけだと思うぞ」
「性格悪っ……サイテーだね」
「言わせとけばいいよ、どうせすぐに興味なんてなくなるだろ」
「ちょっとの間でも悠がなんか言われるのはムカつく。なんか言ってやろうかな」
「やめとけ、面倒ごとは避けたい」
「でもぉ~」
と、不満そうな顔を浮かべる笑来であったが、もし笑来が実心に言ったところで、被害者が増えるだけだ。
「てかさ、今思ったんだけど」
横から奏は口を挟む。
「お前ら距離近くね?」
「「あ」」
今、俺と笑来は無自覚に肩を寄せ合って話している。これが幼馴染の時だったら到底ありえない。
てか、俺も無自覚だった……意識していないだけで、笑来との距離を縮めようとしてるのかもな。
「えなに、なんなのその裏がありそうな反応は」
俺達の反応を見て、細い目を向けてくる奏。
「いや? 別になんにもないけど?」
「あやしいその反応」
「本当だってぇ~。私と悠の間にナニかがあったと思うの?」
「思うからそう聞いてるんだ」
奏に問い詰められた笑来は、目を分かりやすく泳がせる。
「俺はてっきり悠が落ち込んでるから笑来が慰めてるのかなと思ったんだけど、違ったようだな」
ニヤっと不快な笑みを浮かべながら俺の方を見てくる。
これはバレたな……まぁ、奏にバレたところでって感じだから隠す必要はないと思うんだけど、もしここで言って驚きのあまり大声で復唱されたら溜まったもんじゃないので今は濁しておこう。
「そこらの話はまた後ほどってことで」
奏の肩を叩くと、「お前なら分かるよな」と言わんばかりの眼光で睨む俺。
「あ、はい」
その目に、怯えたからか、奏は肩を竦めて話の話題から身を引いた。
とりあえず実心の事は置いておいて、奏へと説明するか。そして、解決策などもついでに聞こう。
こういう時に第三者の助言は大事だ。
自分達だけで考えてたら、自分達のいいようにしか行動しようとしないからな。奏もこっちの味方とて、ちょっとくらいはマシな案を出してくれるはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます