第7話 いつもと変わらない
話していると、ポツポツと見えてくる同じ高校の生徒達。
向かう方向は、みな同じく学校。俺達もその波に乗り、正門に到着した。
色々と話し合った結果、腕に笑来の姿はなく、俺のすぐ隣を歩いている。
とりあえずは、表にひけらかすのはやめておいた。
自分から仕掛けにいくのは地雷すぎるからな。
「どうする? 教室まで一緒に行く?」
下駄箱で上履きに履き替えながら聞いてくる。
「それがいいかも。一人で入りにくいからさ」
「おっけ。一緒に行こね」
「よろしくな」
「でも、席付いたらどうせ奏が話掛けてくるだろうから、安心は安心だね」
「うーん、まぁ……どうだろうな」
佐藤奏(さとうかなで)。クラスの男友達。
高校始まってから仲がよく、2年連続で同じクラスでその仲は今も健在。
なにかと頼りになる奴だ。
しかし、俺が振られたとなると、絶対にいじってくるだろう。
「奏がもし茶化してきたら私がガツンと何か言ってあげるから安心してね!」
「任せたよ」
そう言いながら、階段を上がる。
俺達のクラスは3階の奥から2番目の教室。
廊下を進むにつれ、足が重くなる。胃もキリキリするし。
クラスに入ったら白い目で見られるとか、嫌な想像をしてしまう。
「大丈夫だよ。私がついてるから」
不安そうにしているのをくみ取ったからか、俺の袖を掴み、顔を合わせてくる。
「うん」
同時に頷くと、教室の扉を開ける。
開いた扉に、中にいるクラスメイトの視線は一瞬こちらへと向くが、すぐにまたその視線は逸れた。
いつもと何も変わらない光景に、ホッとため息を吐く俺。
しかし、一人だけ違う人がいる。
実心は俺を見ると、視線を逸らし、何やら手をもじもじと動かしている。
「とりあえず、よかったわね」
「まぁ、今のところはな」
ここで、俺達は別々になると、それぞれ自席に着く。
一限目の授業に向けて、筆箱やらかさない教科書を準備していると、
「おっす~」
「おは」
陽気な声と共に俺の肩を叩いてくる奏。
「なんだ、いつもと変わらないなお前」
「それはどうゆう意味だ」
「いや、噂で聞いてたからもっと落ち込んでると思ってたわ」
「色々あって、まぁ大丈夫」
てかどっから別れたっていう噂が広るんだよ。俺は笑来にしか言ってないから、実心か、その友達が広めているに違いない。
いい迷惑だよホント。
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