第6話 認識してくれてるんだぁ

「で~もさ! こうやってイチャイチャして逆に嫉妬させようよ! 乗り換えるの早いとか気にしない気にしない!」


 俺の腕にぎゅーと抱きついてくる笑来。


「お、おう」


 唐突に距離が近くなり、驚く俺。

 あれ、こんなに笑来は距離感が近かったか? 確かに幼馴染としては近かったような気がしたが、ここまでではなかった。


 手も繋いだことなかったぞ? 頭を撫でられたり撫でたり、肩を押したり押されたりならあったけど。

 恋人になったからなのだろうか。

 俺の驚く様子を見て、


「悠は私とこうやってくっつくの嫌?」


 と、小首を傾げる。


「いや、じゃない……ちょっとビックリしただけ」


「ならよかった!」


 こんな変わり方をするような人ではなかったと思うけどな笑来。テンションが上がってるだけなのかもな。

 ずっと俺の事を好きだったらしいし、このくらい可愛いものだ。

 こんな事されたら、惚れそうになる。抱きつかれた時、一瞬、頭の中から実心が消えたし、効果は抜群だな。


「でも、これで学校行くと、やっぱ周りの視線が痛くないか?」


「そう? 私は気にしないけど?」


「俺も気にはしないんだけどさ、陰口言われそうなんだよね。色々と」


 振られた翌日に幼馴染と付き合うとか、絶対に裏で何か言われる。

 特に、実心。


 自分から振っといたくせに、絶対になんか言ってくる。


「陰口?」


「うん。あと、俺が言われる分にはいいんだけどさ、笑来にもってなると話が違うから」


「私が陰口言われるのが嫌なの?」


「お前が気にしてなくても、俺が気にするんよ」


 俯きながら言う俺に、


「私の事気にしてくれてるの?」


 目をキラキラとさせてくる。


「そりゃー気にするだろ。俺と付き合っただけでさ、笑来が何か言われるのは違うと思うし」


 もし、実心に何か言われたのなら俺も言い返せるのだが、無駄な争いは避けたい。


「ふーん、へぇ~、ほぉーん」


「なんだよ、その顔は」


「別にぃ~? 私のこと大切にしてくれてるんだな~って」


 ニヤニヤと鼻の下を伸ばす笑来。


「大切するだろ。幼馴染だし、今は……その、彼女なわけだし?」


 俺にとっては、ただ一人の幼馴染。大切にしないわけがない。

 彼女にもなった今、もっと大切に、そして全身全霊で守らなければならない。


「彼女として認識してくれてるの嬉しいなぁ~」


「お前から言ったことだろうが」


「そうだけど~? やっぱ聞くと嬉しいよねぇ~」


「嬉しいものなのか」


「当り前じゃ~ん! だって好きな人から言われると嬉しいし安心するもん」


「そんなもんか」


「もち! あ、私は悠のこと好きだから安心してもいいよー」


「うん、知ってる」


 抱きついてきたり、妙にテンションが高くなったりと、これで好きじゃなかったら逆におかしい。


 にしても、一日で俺への接し方が変わりすぎてる。ちょっと怖いけど、可愛いからOKとするか。


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