第5話 好きになってもらうから!

 学校へ行くのが憂鬱だ。

 振られた翌日の学校。しかも実心とは同じクラス。

 修羅場確定だ。


 クラスに入ると白い目で見られたり、変な噂をされているかもしれないと考えると胃が痛くなる。

 しかし、行きたいと思うこともある。


「おはよ!」


「おはよ」


 玄関を開けると、満面の笑みで手を振ってくる笑来。

 笑来がいるから、今日学校に行けると言っても過言ではない。いなかったら、多分二週間は家に引き籠っているだろう。


「今日さ~数学の小テストあるから徹夜で勉強してたんだよね~」


「俺も来週だからそろそろ勉強しないと」


「出た範囲教えてあげようか」


「もちろん頼む」


 と、何気ない会話をしながら通学路を2人で歩く。

 俺達の家から学校までは徒歩で10分程の所にある。この学校を選んだ理由は、単純に家から近く、偏差値もそこまで高くないから。


 笑来は俺より頭がいいから、この高校よりももっと頭の良い場所に行けるのだが、家から近いし、俺と一緒の所がよかった為。同じにした。


「ていうかさ、今のうちに一つ聞きたいことがあるんだけど……」


 少し前で止まると、笑来は俺の顔を覗きながら言う。


「なんだ?」


「悠はさ、私の事好きなの?」


「好き……だと思う。ぶっちゃけ、気持ちの整理が付いてないから曖昧だけど、幼馴染以上には思ってる」


「まぁ、昨日の今日だしね。仕方ないか」


「ごめんな、なんか中途半端な答えで」


 本当は胸を張って好きと言いたい所だが、今は『好き』と言っても気持ちがあまりこもらない。

 だから、言うのをためらう。ここで気持ちがない『好き』を言っても、笑来に申し訳ないしな。


「ううん、いいの。ちゃんと考えてくれてるだけで嬉しい」


 首を横に小さく振ると、はにかむ。


「私は好きって思おうとしてる事が嬉しいの。悠が実心のことを好きだったのは知ってるからさ、時間はかかるだろうけど絶対に好きになってもらうから!」


 ビシっと俺に人差し指を立てると、自信満々な顔を浮かべる。


「大丈夫、好きにはなるから絶対」


 こんなにも、面と向かって好きにさせると言われると、俺も気持ちが揺らぐ。

 すぐにコロッと行きそうだ。


 このまま笑来に移り変わりたいところだが、まだ心の中に実心がいるのは事実。

 でも、少しだが、消えている気がする。


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