第3話 初から私にすればよかったのに
「言っちゃえば、それくらいの女だったってことでしょ」
俺の肩を叩く笑来。
「そうなのかなー……案外俺、本気だったけどな」
付き合ってる時、本気で結婚したいくらいに好きだった。
一緒に居て楽しい、価値観が合う、すべてが一致するくらい相性が良かったと俺は思っていた。
今はそんな感情などない。せめて、復縁してまた付き合いたいと思うくらいだ。
それに、それが俺の思い込みだったと思うと普通に死にたくなる。
「未練タラタラだと更に嫌がられるわよ? こうゆう時はなんともない顔をしてれば実心からなにかアクションを起こしてくるかもしれないし」
「学校でいつもと同じような顔をできそうにないんだが」
「友達と居れば大丈夫かもよ? それに私もいるわけだし」
「思い出さなきゃいい話だけどなそもそも」
「うんうん。忘れるくらい何かいい事とか、転機があればいいんだけどね~」
そう簡単に、忘れられるわけがない。
一、二週間くらいだったらまだ忘れられたかもしれないが、俺達は3ヵ月。しかも、そこらのカップルより濃厚な時間を過ごしたと思う。
「こんなことになるんだったら、最初から私にすればよかったのに~」
と、笑来は冗談交じりに言う。
「なんだそれ」
「実心ちゃんじゃなくて、私にしとけばよかったのにねーと思って」
「まー確かにそうかもしれないな」
こんなことになることが想像できていたなら、俺は最初から笑来を選んでいたかもしれない。
やはり、幼馴染を好きになるというのはテンプレート。
俺も、高校に入るまではそうだった。
しかし、お互い距離感が近いため、どうしていいか分からなく、結局他の恋愛に移動する。
これまたテンプレートな展開だ。
今、俺がそれに値する。
「えっ?」
「え?」
俺の返事に予想してなかったか、笑来はポカンとした表情をする。つられて、俺も目を丸くする。
「え? マジで言ってる?」
「結構マジなんだが? 逆に冗談だった?」
「いや、ガチだけど」
「ガチなのか」
こんなにもあっさりと答えが出たことに、どちらも脳の処理が追い付かなく、同じような言葉を繰り返す。
「なに、悠は私と付き合ってもいいの?」
俺の服の袖を引っ張り、笑来は上目遣いをしていくる。
「別に構わないけど」
嫌じゃない。むしろウェルカムだ。
「でも、今付き合ったら傷心中の悠に漬け込んだ女っていうレッテル張られるよね?」
「大丈夫だろ。蛙化で振った女よりは」
「んじゃぁ、本当に付き合う?」
「笑来が本気なら」
「私は悠が本気なら」
笑来と目が合う。
見つめられる瞳からは嘘をついているようには思えない。
これは本当に言っているようだ。
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