第2話 私がいるから安心しなさい?


「実心ちゃんに振られたの、原因分かんないらしいじゃん。友達から聞いたけど」


「だからなんだよ。もう関係ない話だ」


「関係なくないじゃん。こんなんなってて関係ないは嘘だよ」


「なら俺にどうしろって言うんだよ……」


 復縁などまずない。そりゃしたいと言われればしたいに決まってる。

 だけど、復縁したところで続くわけがない。

 だから、今の俺に出来ることはベッドに倒れ、傷が癒えるのを待つだけなのだ。


「悠をここまでにするとか……どんなことをしたのよ実心のやつは」


 ハァっと怒り混じりのため息を吐く。


「理由も言わないで振られたからなー。普通に傷つくよ」


「でしょうね。一番心にくるやつ」


「よく分かってるじゃん。だから今俺はこうして傷を癒してるってわけだ」


「これのどこが癒しているのかイマイチ分かんないんだけど」


 逆に友達とカラオケに行ったところで、失恋ソングを歌ってさらに悲しくなるだけだ。

 それに痛いヤツになるから嫌だ。

 誰かに、凹んでいるところを見られるより、一人でゆっくりと時間をかけてでも回復したい。


「ま、実心がいなくても、私が傍にいるから安心しなさい?」


 俺の横に座り、肩を叩く笑来。


「なにそれ、慰めてる?」


「当り前じゃない。貶してると思うわけ逆に」


「それはないけど……まぁそうだな、別に実心がいなくなったところでって感じだもんな」


「そうそう! 女なんてこの世に腐るほどいるし、私もいるんだからさ」


「お前はただの幼馴染だろうが」


「幼馴染だけど、いるといないとじゃ色々違うでしょ?」


「ちょっとは気持ちが楽かもな」


「でしょ? こうやって今も話してるわけだし」


「別に俺は来てくれって言ってないけどな?」


「けど、余計なお世話ではなかったでしょ?」


「……だな」


 と、俺は小さく笑う。

 笑来が来たことによって、少し気持ちが楽になった気がする。

 こいつ相手なら、何を話しても問題はないし、気が楽だ。


 いくら愚痴を言ったって聞いてくれるし、情けない事を言っても聞いてくれる。

 俺をおちょくる時も、なんだかんだ話を聞いてくれるからな。意外にいいやつ。


「実心も何を考えて振ったのかな~。私だったらありえない振り方なのに」


 スラッと白く細い足を伸ばす。


「流石に俺も思ったわ。ていうか実心の友達も言ってたよ」


「私たちも、流石にちょっと引く」って言ってたしな。それくらいあっけない振り方だったし。


 多分、めんどくさいことになるのを避けたのだろうが、だとしても唐突だし一瞬だった。


 別に、ちゃんと理由とかを言ってくれば、俺だって別れるケジメが付いたかもしれないのに。


 それだけが心残りだ。


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