彼女に振られた俺、その日から幼馴染の愛が異常に強い

もんすたー

第1話 失恋と幼馴染


「あ~世界なんて滅んでしまえ~人生なんてクソだ~女なんてクソだ~」


 学校から帰宅し、カーテンを閉めた薄暗い自室のベッドにうつ伏せで、嘆いているのは、俺、千葉悠(ちばはるか)。


 つい数時間前、彼女に振られた男だ。

 吉川実心(よしかわみここ)。つい数時間前まで俺の彼女だった人物。

 学年でトップクラスに可愛いと言われているほどの顔、体型、性格。


 俺が付き合えたのが奇跡と言われるのも無理はない。それくらい彼女はモテる。

 しかし、実心と付き合ったのは、俺が告白したわけではない。

 実心から告白してきたのだ。その時点で、クラスメイトから奇跡と呼ばれているのだが。


 そんな彼女に、振られてしまった。

 理由は、最近よく聞く蛙化現象というものだそうだ。


 何か引くことも、どんくさいこともしていなかったはずなのに、好きという気持ちがなくなったそうだ。

 ただただ、普通に青春を楽しんでいたはずなのに、というか、逆に尽くしてあげていたくらいなのに振られてしまった。


「女子って……マジでよく分からん」


 これと言ってフラれた理由がないのが、なおさら落ち込む理由だ。

 何かしらあるのなら、直したり、チャンスがあったりするかもしれないのだが、それすらない。


 実心の友達からも特に何も愚痴などを聞いてはないと言われたし、情報は全くない。

 蛙化現象とか……先にどうゆう心境でする俺に教えてから別れろよな。

 納得するかしないかは置いておいて、はい別れましょで関係が切れる恋愛とかどれだけ軽いものだったか……遊ばれてたのか……俺。


 ――コンコン


 俺の情けない声が響く部屋に、ノック音が二回鳴る。


「ちょっと、悠~? 中にいるんでしょ? 入るわよ」


 ドアの向こうから聞こえるのは、聞き覚えがある声。

 ガチャりとドアが開き、


「あ~あぁ~、振られてこの様子ね」


 と、呆れながら俺の部屋に入って来る女子。


「なんだよ笑来。ほっといてくれ」


「なんだとはなによ。こっちは心配で見に来てあげてるんだけど?」


 胡桃沢笑来(くるみざわにこ)。俺の幼馴染だ。

 家も近く両親も仲がいい、幼稚園から高校までずっと一緒にいる、典型的な幼馴染というやつだ。


 笑来も、可愛い部類の女子に入る。

 女性らしい体つきに、美形な顔、くるりと巻いてある茶髪がなんとも可愛らしい。


 ずっと近くで見ていたからか、あまり気付かなかった。

 しかし、言われてみれば、笑来は学校で上位に入る程に可愛いだろう。


「ていうか部屋が暗いと気分まで暗くなるよ」


「明るっ」


 笑来そう言いながら、部屋の電気をつける。


「んで、振られた俺をおちょくりにでも来たのか? お前は」


 なるべく顔を合わせないように言う。


「んな性格悪い事私がすると思う?」


「思うから言ってるんだろうが」


 いつも、何か俺に不幸がある度に笑来は俺をバカにしてくる。

 テストで悪い点数を取った時や、発表を失敗した時、告白して振られた時など、事あるごとに笑いに来る。

 性格が悪いにも程がある。


「今日はしないわよ、今日は。だってあんた本当に落ち込んでるじゃない」


 俺の顔色を伺う笑来。

 幼馴染だからか、こいつには俺がガチ凹みをしているのが分かるようだ。

 長い付き合いだから、表情から感情の細部までくみ取れる。幼馴染パワーってやつかもしれないな。



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