第50話 今日の観戦と明日の観戦

 俺は河野さんと別れてすぐに別の受付に行き、受付嬢さんに換金をお願いして、前と同じように魔石を入れるトレイを差し出される。どうやら前と同じ受付嬢さんだったようで、俺を覚えていてくれたらしい。ということで気負わずに魔石を出せる。


 俺は左手を差し出し、魔石を出そうとする。自分の左手を見て思ったが、案外派手だな俺。中指と小指に指輪はちょっとあれだな。取り合えず後で小指のもはや名前すら憶えていない魔力を10だけ増やしてくれる指輪は外そう。もはやこの程度は誤差だしな。


 そのまま指輪の収納からアイテムを出していると、受付嬢さんが指輪について聞いてきた。


「その指輪って、マジックバックと同じ系統のアイテムですよね? どこかから購入されたんですか?」


「いえ、ダンジョンの宝箱から手に入れましたが」


 そういうと、受付嬢さんは何かの用紙を取り出してきた。


「そうですか! でしたら、収納系のアイテムは全て登録しなければいけないので、こちらの用紙に記入をお願いいたします」


 登録ってなんの事だ? そう思ってその用紙を見ていると、個人情報を書き込まなければいけない欄がたくさんあった。


「すいません、登録ってどういうことですか?」


「あ、説明を忘れていましたね。収納系のアイテムを使った密輸等をある程度は防止するための措置です。空港等を通る際は登録証を見せなければ収納系のアイテムは持ち込むことができません」


 なるほど、そういうことか。それならば納得だ。


「なるほど、わかりました」


 そういうと俺は用紙に個人情報等を書き込んでいく。よし、これで大丈夫だな。


「書き終わりました」


「ありがとうございます。これを登録待ちにおいてまいりますので引き続き魔石の用意をしてお待ちください」


 とのことだったので、俺は魔石を出していく。あの受付嬢さんは俺が魔石を前回よりも多く持ち込む事を予想してか、トレイを5つおいて下がっていった。


 持っている魔石を全てだすと、トレイが4つ分と残り1つの半分程度で収まった。あの受付嬢さんの読み通りだったな。


「お待たせしました。これで全てでしょうか?」


「はい」


「では査定には入りますので少々お待ちください」


 そういってトレイを1つづつ受付嬢さんが持っていく。と、そこに予約が終わったのか、河野さんがやってきた。


「予約終わったよ」


「そうか。いつになった?」


 Bクラスの試験だし、そこそこ早くになるかもしれないな。俺の時の確か相当早かったはずだ。


「明日になった!」


 ……明日か。ならしっかり観戦しないといけないな。この後は彩佳の昇格試験の観戦もあるし、この土日は人の闘いを見て学ぶ期間になりそうだ。


「そうか、しっかり試験対策の勉強はしておくんだぞ。特に過去の異能事件と魔物の特性」


 魔物の特性はそこそこ調べていた俺だからなんとかなったが、知らなければかなりの失点になるだろう。それと過去の異能事件は本当に難しいからな。


「大丈夫、一応その辺は勉強済みだから。……奏多くんに追いつくためにね」


 後半に小さな声で言った言葉は聞き取れなかったが、多分聞き取れなくて大丈夫な奴だろう。河野さん、ちょっと怖いし。


「それなら落ちる心配はないな。全力で戦ってこい!」


「当然! Bクラスになれるように頑張るよ!」


 その後は、Bクラスになった後はうちのパーティーに入ったことをネット上に公開しようという話をして、換金査定の結果を待った。


「瀬戸 奏多さま! 査定が終了いたしましたので受付までお越しください」


「はい、河野さんは少しまっててくれ」


 俺は受付嬢さんのところまで行くと、査定の結果が書かれた明細表を受け取る。どれどれ……。


・Dクラス魔石 1万円×231 231万円

・Cクラス魔石(小) 2万7500円×37 101万7500円

・Cクラス魔石(大) 9万5000円×18 171万円

・Bクラス魔石 (小) 15万3000円×5 76万5000円

・Aクラス魔石 (小) 43万円

・総計 623万2500円


 インフレ始まったな。これ、相当な稼ぎだぞ。


「Aクラスの魔石があったということはもしや瀬戸さん、Aクラスの試験を受けたりします?」


「あ、はい。今日はその予約も兼ねてきました」


 支払い等の話が終わると、受付嬢さんがそう聞いてくる。すごい先読み能力。有能だな、この受付嬢さん。


「でしたら手順と金額は前回と変わりません。試験は今回Sクラスのお方がお近くに滞在しているので明日から受ける事が可能ですが、いかがなさいますか?」


 それはありがたい話だが、明日は河野さんの試験の観戦がある。ここは別の日にしよう。


「来週の土曜日は大丈夫でしょうか?」


「はい、予約可能ですよ」


「でしたらそこでお願いします」


 案外早くAクラス試験を受けられそうだ。彩佳は受けるまでに結構かかっていたし、てっきりそうなるかと思っていたが。これで受かればAクラス最速記録も更新できるかもしれない。


「かしこまりました」


 そこからは前回と同じく2万円を払って必要事項を記入した。これで予約は完了だな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る