第47話 解析者
「ここが二人がいつも通っているダンジョン?」
河野さんを連れて札幌地下大迷宮にやってきた。結構金はかかったが今回は転移門で来た。各都道府県の中心都市には転移門があり、一度行った都市なら金さえ払えば瞬間移動できるからな。クソ高いからあんま使いたくはないけど……。ちなみに転移門、作った人が海外展開前に行方不明になったので日本国内でしか使用できない。
ここで連携の練習、彩佳のレベル上げを行うわけだな。解析者の効果とやらも、実際に見てみたいしな。
「そうだぞ。毎週日曜日が俺らの活動日だ」
「そういえば高校を卒業したら私たちは専業探索者になるの?」
唐突な彩佳からの疑問で気が付く。そういえば先のことは何も考えていなかった。確かに先の事を考えていなかった。かなり大事なことだしな。しかし今はダンジョンの中である。その事については後で考えよう。
「俺は彩佳に合わせるが……。その事については後で話そう。今はダンジョンに集中しないと」
余りレベルの高くない10層であるとは言え、油断はできない。
「そうだね。集中しなきゃ」
「私は何をすればいいの?」
彩佳と並んでダンジョンの警戒を始めると、今日が初参加の河野さんがそういった。
「これからゴブリンリーダーが出てくると思うが、そのゴブリンリーダーのスキルを封印してもらってもいいか? それで能力の具合を見てみたいんだ」
ゴブリンリーダーには統率という味方強化系のスキルがあったはずだ。……ジェネラルだったか?
まぁどちらかにはあったはずだ。なければまぁ。すぐに15層以降に移ってジェネラルと戦う事にしよう。
「わかったー」
河野さんの了解をいただけたちょうどその時、目の前にゴブリンリーダーの群れが現れた。
『お手並み拝見じゃのう』
ロゼリアが腕を組んで眺めている。多分何かのアニメの影響を受けたんだろうな。最近ところどころでかっこつけをしている気がする。ロゼリアがやるとかっこいいというかかわいいんだよな。見た目が。
「そうだな。とりあえず前線は俺と彩佳が張るから、スキルを封印する事に集中してくれ!」
「一匹もそっちに行かせないから安心してね」
「ホブゴブリンなら大丈夫だけどね? とりあえず集中する!」
俺達はホブゴブリンの群れに突っ込むと、ホブゴブリンを切り捨てていく。あまり数が多くない上、Dクラス程度なら瞬殺である。
ちょうど一分が経とうかというところで、ホブゴブリンが全滅する。残されたゴブリンリーダーがこちらに突っ込んで来ようとする。
俺がゴブリンリーダーを軽く弾き飛ばして河野さんに聞く。
「どうだ? 封印できそうか?」
「あの、奏多くん? 封印するスキルがそもそもないんだけど」
あれ。やっぱりゴブリンジェネラルの方がスキルもちだったか? そう思ってゴブリンリーダーのステータスを鑑定する。
【ゴブリンリーダー】
・Cクラス下位の魔物。
・ゴブリンを統率する。
・弱点は雷、光。
・ステータス
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
種族:ゴブリンリーダー
レベル:22
ステータス:攻撃力 876
守備力 734
魔力 309
知力 290
精神力 267
速度 182
スキル:なし
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
どうやらジェネラルが統率のスキルを持っているようだ。というわけでゴブリンリーダーは用済みなのでいつも通り首を斬って討伐する。
「ごめん、スキル持ちはジェネラルだった」
『じゃあジェネラルのところに行くかのう』
「そうだね」
「わかった~」
全員で手をつないでワープを発動する。実はこのセーブワープのシステム、同意があればセーブを持っていない人と一緒にでもワープできるのだ。最近ネットで知った事で、札幌地下大迷宮の良いところを上げるスレッドに書き込まれていた。
そういうわけで15層だ。ここからは急激に魔物が強くなる……というか魔物の数が多くなるからな。普通は魔石の回収が面倒になるところだが、俺なら指輪で一発だからな。売れる魔石の量も増えていいことずくめだ。
「ずいぶん空気が変わるね……今の私だと少ししんどいかも」
「その感覚は間違ってないから、大事にしろよ?」
自分の実力をしっかり理解できているようだな。俺は最初の頃一度死にかけているし、仲間にそういう目に会ってほしくないからな。
「当然」
「奏多もだよ?」
彩佳に言われたら俺も頭が上がらないな。
「わかってる。もう無理はしない」
「ならばよろしい」
『来たみたいじゃぞ。ジェネラルの群れが』
ロゼリアがいち早く群れの気配に気が付く。河野さんに指示を上げておかないとな。
「河野さん、やることはさっきと変わらない。雑魚は俺達が対処するから、ジェネラルの封印を頼むぞ」
「任せて!」
「奏多、行くよ!」
彩佳と共にホブゴブリン達の中に飛び込んで行く。ちなみにロゼリアは一応護衛として河野さんの隣に待機している。
魔法を使って一掃してもいいんだけど、彩佳を巻き込みかねないから今回は使えない。俺は次点の有効策として、聖剣に魔力を通して加速能力を発動する。
今や7000を超えた速度にさらに加速が加算されるわけだ。ホブゴブリンなんぞに見切れるはずがなく、一瞬にして多数のホブゴブリンの首が飛ぶ。
彩佳の方を見るといつ見ても優雅な剣術でホブゴブリンを圧倒していた。
じゃあ俺は、このまま加速でゴブリンリーダー等の中堅どころを討伐しておこう。
今の俺の速度はSクラスでもなければ見切る事ができないはずだ。なすすべもなく塵となったゴブリンリーダーを見下していると、見かねたゴブリンジェネラルが叫び声をあげて味方を強化しようとする。
……しかし、何も起きなかった! 河野さんの方を見ると、河野さんの目が虹色に輝いていた。……魔眼? 健全な男子としてはあこがれるものがあるな。
「封印できたよ! それじゃあ使うよ、ジェネラルのスキル! 『統率』!」
その時、俺達を黄金の輝きが包む。体から力があふれてくるようだ。それに、これは河野さんの意思が伝わってきているのか?
『統率、結構優秀なスキルみたいだね! 念話みたいなことができる。一方通行だけど』
やばい。河野さんのスキルが強すぎる。魔物のスキルですら使いこなせるのはチートの極みだな。
◇◇◇
??「むむ、こちらの後書き担当は拙者と言うわけだな。ならばその勤め果たすとしよう。この世界の移動事情が気になると言うわけだ。魔石等のエネルギーの影響で技術的革新がおこり、都市と都市間のアクセスはとても良くなった。2023年現在の所要時間の半分当たりが基本だろうか。まぁ整備が入っていないところは変わらないところもあるがな。それに新しい移動手段として転移門というものも産まれた。飛行機片道の2倍〜3倍程度には値が張るためにあまり使う人はいないがな。今後も何か質問があれば拙者に聞くと良い。拙者が本編に出るまでは答えるとしよう。拙者が本編に出る際には……神宮寺にでも役を継ぐとしようか」
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