第46話 面接と共有

 カフェに入って4人で席に着く。俺は一応河野さんの隣だ。彩佳とロゼリアは向かいに座っている。


「これから面接を始めるよ」


 彩佳がそう言って一枚の紙を取り出してきた。質問したいこととかまとめておいたのかな?


「はい。わかりました」


 河野さんが姿勢を正す。ちなみにだが、皆飲み物を注文しているぞ。俺と河野さんがコーヒーで彩佳が紅茶だ。


 やはり紅茶派は彩佳だけらしい。


「それじゃあ初めの質問。探索者になってからはどれくらい?」


「奏多くんの後を追って探索者になったから、一月も経ってないかな?」


 まぁ確かにそんなこと言ってたな。彩佳が一瞬どういうことなのか聞きたそうな顔でこちらをみたが、正直俺もよくわかってない。


「そう。それじゃあ次の質問。ステータスについて詳しく」


「全ステータスの平均でいうと900くらいかな。レベルは……21だったかな?」


 思ったより高いな。探索者始めて一か月でBクラスに届くレベルじゃないか。


「なるほど。それは有望かも」


「えへへ」


 案外仲良くなれそうだな二人とも。河野さん、地味目に見えて実は意思疎通能力が高いみたいだし。


「次の質問はスキルについて。詳しく話してもらえる?」


「私のスキルは解析者って名前で、一分以上相手を視界に入れる事で発動できて、対象の能力の詳細を把握した上、能力を封印して自分が使うことができるよ。5分だけだけど」


 改めて聞くと理不尽が過ぎるな。それで能力を持ってかれたら5分耐えしのぐのは相当しんどいだろうし、魔物もかなり大きな損害を被るのでは?


「それはサポートにも使えそうだね。これなら全然サポーターじゃなくて、メインでも戦っていけるかも」


 確かに能力を消すというだけでも俺達にメリットがあるからな。


「それは良かった! じゃあ面接は……」


「まぁまぁ少し待って最後の質問があるから」


 彩佳は紙をしまいながらやさしくそういった。


「最後にあなたと奏多の関係を教えて」


 全く笑っていない目で彩佳が河野さんに問う。これ河野さんどう答えるんだろう。俺からしたらストーカーなんだけどな。


「え、えっとそれは……」


 答えづらい質問だろうなぁ。接点持ったのも最近だし。


「クラスメートってとこでしょうか」


 目をそらしながら河野さんが答える。まぁ間違ってはいない。


「付き合ったりはしてない?」


「も、もちろん」


 告白はしてるけどな。


「そう、それならいいかな。今日から<朝焼けの輝き>の一員としてよろしく」


 どうやら彩佳にも認めてもらえたみたいだな。これで仲間が一人増えた。


「やった!」


 河野さんもはしゃいでいる。まぁ喜んでいるところ悪いが、この店で頼んだ飲み物を飲み終わったらすぐにダンジョンに出発だ。スキルの実験があるからな。


「ご注文をお持ちしました~。コーヒーがお二つ、紅茶がお一つですね?」


「はい、ありがとうございます」


 店員さんにお礼をいって受けとって、皆でその飲み物を飲む。


「あ、そういえば名前聞いてないね」


「河野 美咲って名前だよ」


 彩佳は名前を聞くことを失念していたらしい。


「じゃあ美咲ちゃんでいいかな。これからよろしくね」


「うん、それで大丈夫! 私は彩佳ちゃんって呼んで大丈夫?」


 完全に女子会だな。俺とロゼリアは顔を見合わせる。場違い感がすごいな。他人には見えないロゼリアを含め、皆アイドルなんかをやっていてもおかしくはない容姿をしているからな。


「ごちそうさま」


 特に話すことがなかった俺は二人のお話を横目にコーヒーを飲み終える。


『奏多よ、疎外感を感じるのう?』


「全くだ。まぁ一時はどうなることかと思ったけど、二人が仲良さそうでよかったよ」


 俺がロゼリアと話していると、いつの間にか二人も飲み物を飲み終えたよう。ささっと会計を済ませて、店を出る。


「さて、これから弘前のダンジョンに行くけど、美咲ちゃんは大丈夫?」


「もちろん!」


 これは三人での初戦闘の機会ができるな。


「あ、そうだ、美咲ちゃん、奏多の新しいスキルの詳細みれたりする?」


「あ、新しいスキル? <絆共有>の事?」


「そんな名前なの? とりあえず効果について教えて欲しいな」


 待てよ……? いつの間に俺のスキルを見ていたんだ? そのスキルは昨日手に入れたばかりなんだけどな?


「一定以上の絆を手に入れたものと一生の繋がりを構築するスキルだね。奏多くんの場合は……<成長補正>が共有できるらしいね。それ以外はできないみたい」


 マジかよ、わかるのか。今のレベルの鑑定よりも強い効果があるみたいだな。


「<成長補正>が共有できるのか、どうする彩佳。共有するか?」


「もちろん。死ぬときは奏多と一緒だから」


 またも少し闇の深い発言をする彩佳。


「えっとその、二人は付き合ってたり?」


「いや、そんなことはないぞ。じゃあスキルを発動する」


「うん、いつでも大丈夫」


 俺がスキルを発動させると、見えない鎖が俺達二人の間に結びついたような感覚がした。俺はスキルに変わりはないが、これで彩佳にも<成長補正>のスキルが付いただろうか。このスキルがあれば、次の試験までにもっと早くレベルを上げることができる。


「彩佳がスキルを手に入れているか確認してもらってもいいか、河野さん」


「わかった」


 一分待った後、河野さんが確認してくれる。


「うん、ちゃんと彩佳ちゃんにスキルが増えてるね」


 よかった。これで共有されていなかったならただデメリットが課されただけだったからな。まぁそれでも問題はあまりなかったけどな。


「ありがとう、奏多。じゃあダンジョン、行こうか」

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