第45話 お怒り彩佳さん

 ようやく家に到着した。変身はすでに解除済みだ。家に入ってすぐに自室に入る。


『彩佳、家着いたぞ』


『お帰り奏多』


 早速スキルについて話したい所。しかしどう話をしたものか。


『俺の新しいスキルに関してなんだが……』


 彩佳にスキルの内容を話していく。


『なるほど。なんのスキルが共有されるかはわかってるの?』


『いや、わからないな』


 それに関しても鑑定じゃわからなかったからな。もしかしたら河野さんの解析者ならわかるかもしれないが……。


『それじゃあ明日一回使ってみて、共有できるスキルを確認しようか』


『……共有できないままデメリットだけ発生する可能性もあるけど大丈夫か?』


 俺が一番恐れていることはそれだ。俺のスキルはどれもかなり特殊だ。剣聖を除いて。


『別に大丈夫だよ。どの道奏多を失ったらそれで私の人生終わりだし』


『そ、そうか』


 なにやら多少歪んだ思想があるご様子で……。でもわからないでもない。自分だけが見える存在がいて、他人に今まで理解されていなかったのなら多少の苦悩はあったかもしれない。


 それを俺が多少緩和したわけだ。少しは大事に見てくれているはずだ。


『奏多の方こそ構わないの?』


『俺はまぁ、一回救ってもらった命だしな。彩佳の役に立てるのなら、いつでも捨てられるさ』


 自分で言ってて思うが、俺も大分歪んでいるな。まぁ気にして治るわけでもない。いつも通りの俺で行こう。


『そっか。じゃあ明日試してみよう』


『わかった。じゃあ、要件はこれで終わりだな。お休み。また明日』


『お休み』


 さて、明日の用意でもするか。明日は河野さんを一旦迎えに行かなきゃな。


 ……そういえば河野さんの家、知らないな。中学が同じなんだからこの辺だとは思うんだが。連絡先も持ってないし、どうすればいいかね。


 いや、いいか。多分河野さん、俺を付けてきたりするんじゃないか? ストーカーだし。


 来なかったらそれはそれで仕方ない。彩佳に事情を説明して今度顔を合わせたときに謝ろう。


 準備等も終わったし、今日はもう寝て明日に備えよう。じゃあ、お休み。


◆◆◆


 翌日。彩佳と話していた待ち合わせ場所、カフェの近くのベンチで座っていると、彩佳には及ばないとは言え、あまり見ないほど容姿の整った美少女に声をかけられた。


「何をしてるんですか?」


 何ってただ座って待ち合わせの時を待ってるだけなんだけどな。


「待ち合わせですよ」


 愛想笑いで返しながら、スマホを眺める。現在時刻は11時15分。待ち合わせの11時半まではまだ15分くらいある。


「そうですか。所でその待ち合わせって二人を待っているんじゃないですか?」


 二人……? そうか、確かに河野さんを含めれば二人だな。いや、ロゼリアも含めるなら三人か?


「どうしてそれを?」


「それは……私が待ち合わせの相手だからかな!」


 丁寧な敬語の口調から、聞き覚えのある口調に変化する。河野さんか?


「河野さん?」


「正解! まぁ普段の地味な格好からじゃわからないよね」


 見た目を整えれば絶対変わるとは思っていたが、こうも変わるとはな。道理で気が付かないわけだ。


 その時、なぜか空気が重くなった。なんだ? 天気は快晴で、そろそろ雪も解けるかというほど暖かい気温のはずなのだが。


「奏多? その女、何者?」


 底冷えするような声が聞こえる。彩佳の声、だよな?


「あ、彩佳? どうしたんだ?」


「何者か聞いてるんだけどな?」


 彩佳の口調がいつもよりも強い。なんだ? 何か悪いことしたか?


「あれ、もしかしてまずい感じ?」


「いや、わからん」


『儂からも聞かせてもらおうかのう。この人は奏多の何なのじゃ?』


 ロゼリアも口調こそ変わってないが、目が怖い。


「この子、奏多くんの変身先に似てるね?」


『うん? 儂が見えるのか?』


「あ、はい。見えてますよ」


 初対面だからか敬語で話す河野さん。俺にはあまり敬語を使っていなかったのにな。まぁ同じ学年だしそれはそうか。


 そのままロゼリアと河野さんは何やらお話を始めてしまった。


「奏多はこっち」


「あ、ハイ」


 ロゼリアと河野さんの方を見ていると、顔を無理やり彩佳の方に向かされる。


「あの人、誰? 浮気?」


「いや、その……前に言ってたサポーターの人で」


 浮気というかそもそも付き合ってはいないんだけどな? まぁそんなことを今言えば確実に火に油を注ぐ結果となるのは目に見えている。


「あ、そうなの? ごめん、ちょっと熱くなっちゃって」


 彩佳はすぐに俺の話を聞いて納得してくれた。……なんだったんだ?


「大丈夫。とりあえず、採用の話をしようか」


 それが今日の一番最初の目的だからな。


「河野さん、ロゼリア。店に入るよ!」


 なぜか少し仲良さげになっているあの二人を呼んで、カフェの中に入る。ここで面接というわけだ。


「はーい」


『わかったのじゃ』


 この人達は何の話をしていたのだろうか。少し気になるが、まぁそれはいいか。とりあえず彩佳に面接をしてもらわないとな。


 この後もやることはそこ多いし、もうすぐ彩佳には試験がある。レベル上げの時間も作ってあげたい。さて、面接は早めにな。

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