第42話 征伐する光と闇

 その階段を下り、ボス部屋の扉の前に到着する。この先に待ち構えているのはいったいどれほどの規模のゴブリンの群れなのか。


 まぁどれほど居ようが関係ない。範囲攻撃でまとめて葬ってからゴブリンキングを倒すだけの話。


 ドアを押し込んで中に入る。中の闘技場はいつにもまして広く、その中には満員電車かというほどホブゴブリンが詰め込まれている。


 遠目に見えるのはゴブリンキングらしき巨大なゴブリンとその両脇に位置するゴブリンジェネラル。


 ゴブリンリーダーはもはや数えきれないほどいる。


 これがインフレというものか。まぁいい。これだけの数を倒せば相当レベルが上がるだろう。


 さぁ開戦の時だ!


 俺はすぐさま広範囲の闇魔法を発動する。その闇は、ホブゴブリンの全体の約3割を飲み込んだ。


 相当な範囲だったはずだが、これでも3割程度。数にすればざっと200ってところか。これ、俺みたいに範囲攻撃持ってないと攻略めっちゃ辛くないか?


 いまさらな話か。


 続けて光魔法の遠距離でゴブリンキングの右側に控えるゴブリンジェネラルに攻撃を仕掛ける。できるだけ打点を低くして、道中で巻き込むホブゴブリンの数を増やす。ホブゴブリンに隠れて魔法が見えなくなるのも利点だ。


 煌めく光線がホブゴブリン達を貫いていき、最後にはゴブリンジェネラルの眉間を貫く。まず一匹やったな。


 もう一度光線系統の魔法を発動して、ホブゴブリン達に横薙ぎに照射する。直撃したホブゴブリンは一瞬で灰と化す。


 その光線の着弾地点は爆発し、さらに多くのホブゴブリンを巻き込む。


 ……これでまだ7割か。すると、横目で観察していたゴブリンキングに動きがあった。俺の体の数倍はあるサイズの大剣を担ぎ、その場から飛び上がる。


 まだ部下は残っているのにお前が動くのか。そのゴブリンキングの大剣の振り下ろし攻撃が当たれば俺は間違いなくお陀仏だろう。


 だがまぁ。


 当たらなければどうということはない。その巨体の落下と同時に振り下ろされる大剣が地面と接触した際、凄まじい衝撃波が発生する。


 その衝撃波の影響を受けない範囲まで事前に退避していた俺は、すぐにゴブリンキングに攻撃を加える。ゴブリンジェネラル一体を一撃で葬った貫く光線。それをゴブリンキングにも放つ。


 頭を狙っては的が小さいためにゴブリンキングの先ほどの俊敏性があれば躱せると判断し、俺は胴体、心臓があるであろう位置を狙う。


 ゴブリンキングは殺気を感じ取ったのか、体をそらすが、さすがに光魔法の弾速は早い。腕には当たる。光魔法は腕を貫通するが、大したダメージにはなっていなさそうだ。


 耐久力相当高そうだもんな。


 光魔法、闇魔法を多重展開し、ゴブリンキングへの追撃と完全に油断しているゴブリンジェネラルへの奇襲を行う。


 闇魔法はいともたやすくゴブリンキングに躱されてしまうが、光魔法は油断しているゴブリンジェネラルをしっかり葬った。


 いいとこないぞ、ゴブリンジェネラル。


 あとはホブゴブリン、そしてゴブリンリーダーの残党。そしてゴブリンキング。


 一気に片を付けるとするか!


 広範囲の光魔法、闇魔法を全て使用した多重展開。この闘技場すべてが射程圏内。


 闇と光が交差する闘技場のなか、ゴブリンの断末魔だけが響く。しかし、ランダムブレスの広範囲はソロでなければ使い道がない。自分には効果のないランダムブレスだが、味方であっても他人には当たるからな。


 闇と光が晴れたとき、そこにはボロボロになったゴブリンキングだけが立っていた。


 そんなにボロボロでは碌に動くことはできまい。とどめを刺してしまおうか。


「グルァァァァァァ!!!」


 ボロボロの巨体で叫び声を上げたゴブリンキングの体がオーラを纏う。少しずつだが、傷が回復している?


 次の瞬間、ゴブリンキングは大剣を構え、振り下ろした。そんな距離で振っても俺には当たらなっ!?


 間違いなくこのままここにいたら死ぬという勘。まさか飛ぶ斬撃っ!?


 全力で回避行動をとって、すぐに反撃の用意をする。このまま回復されてしまうと面倒なことになる。


 仕方ない、多少のリスクはあるが……。俺はゴブリンキングに接近し、近距離の光魔法を用意する。


 反撃を喰らわない距離まで近づいた瞬間にぶっ放す。連続するレーザーがゴブリンキングを貫いていく。


 これだけでは絶対に倒しきれない。多重展開で近距離の闇魔法を重ねて発動する。


「グオォォォォォ」


 連続した近距離攻撃を喰らいながらも大剣を振ろうとしてくる。それを喰らうのはまずい。だが、ここで引いたら回復される。


 ならば押し込め! 全力で! さらに多重展開で魔法の数を増やし、1点に集中させる。


 光と闇が入り乱れる。反発せずまじりあう2つの属性には荘厳さすら感じる。


 ゴブリンキングを押し切り、そのまま魔法を浴びせ続ける。もう魔法が尽きるというところで、ようやくゴブリンキングは塵となって消えて行った。


 勝った。札幌地下大迷宮20層、完全攻略だ。


 しかし、どうしようか。魔石拾うのめんどくさい……。

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