第37話 SNS等身辺整理

『おめでとうなのじゃ~!』


「Bクラスおめでとう!」


「ありがとう二人とも」


 試験を受けた翌日、俺はいま彩佳とロゼリアの二人とカラオケに来ていた。二人曰くBクラス昇格パーティーらしい。


 カラオケでやるのはなぜか正直よくわからない。まぁ楽しければいいか。カラオケだと騒ぎやすいしな。


「それにしてもすごかったね」


『いつの間にあんなに強くなっていたのじゃ?』


 いつの間にか、とか言われてもなぁ。あの時感覚でつかんだものはかなり多いし。


「なんというか、あの時は二人にかっこいいところを見せたくて頑張ってたらそうなってたっていうか……。あそこまで戦えるとは正直思ってなかったよ」


 ネット上でも話題になってたから、それなりによかったのだろう。しかし、戦っている最中無表情すぎとも言われていてそこそこメンタルにダメージを負った。


「うん、すごいかっこよかったよ」


「ありがとう。頑張ったかいがあるよ」


『よく頑張ったのじゃ~』


 二人が褒めてくれる。この二人に褒めてもらえるだけで頑張ったかいがあるというものだ。


『今日はたくさん食べてたくさん騒ぐのじゃ~!』


 ロゼリアが立ち上がってそう叫ぶ。それただあなたがたくさん食べたいだけではございませんか?


「今日は私のおごりだから食べたいものとかいっぱい頼んでいいからね?」


「ありがとう。そしたらなにかさっぱりしたものでも食べながら歌って楽しもうか」


 どうやらここは彩佳が支払いをしてくれる様。お言葉に甘えつつも、あまり迷惑にならないように抑えないとな。


「実は今日呼んだ理由はパーティーだけじゃないんだ」


 少し歌おうかとマイクを取りに行こうとすると、彩佳に引き留められ、そういわれた。


「と、いうと?」


「奏多ってSNS、やってないよね?」


「まぁ見る専用のアカウントならあるけど」


 彩佳は真剣な表情でSNSについての話をしてくる。なにかSNSで重要なことでもあるのか?


「じゃあ新しくアカウント作ろう。これから有名になるんだし、憶測で噂を流されるより、ある程度はこちらから情報を流した方がいいよね」


「なるほど……」


 それは確かにそうだな。偽物とか出てそれがいろんなところに迷惑をかけたりなんてたまったもんじゃない。


「私がやってるアプリを入れてくれれば、そこでパーティーに関しても公表できるし」


「へぇ……とりあえず入れてみるか」


 俺は今まで見る専であったからこういった情報を出す側の事情は知らなかった。こういった道でも彩佳は先輩だし、申し訳ないがこれからも頼らせてもらおう。


 とりあえず彩佳に言われたアプリを落とし、アカウントを作成する。もちろんこのアカウントは本名だ。仮名で登録してもどうせバレるしな。


「これでいいのか?」


「うん。じゃあ私の方で告知しておくね。アカウントできたって。後私はフォロー返しておいてね」


「了解」


 一件のフォローされた通知から彩佳にフォローを返す。これが相互ってやつか。


『もう話は終わったかの? 儂はご飯が食べたいのじゃ』


 何もせず静かに話を聞いていたロゼリアだったがどうやら限界らしい。


「そうだね。じゃあパーティー、始めようか!」


「そうだな」


『「改めてBクラス昇格おめでとう!」』


 その言葉を号令として、ついにパーティーが始まった。


◆◆◆


 ロゼリアも彩佳も歌がうまくて、賑やかでとても楽しい時間を過ごした。ロゼリアが何かアクションを起こすたびに彩佳と変わるものだから結構目に悪かったがそれでも楽しかった。


 俺の歌が普通だったのが唯一の欠点だな。仕方ない。人生初のカラオケだもの。


『お疲れ様なのじゃ』


「明日から学校とか大変だろうけど、頑張ってね? じゃあまた来週!」


「今日はありがとう。じゃあ、また来週な!」


 今日は二人が昨日の今日であまり長く外に居させるのは良くないと気を使ってくれたおかげで午後二時前に自由時間ができた。


 正直このまま帰って寝てもいいが、少しやりたいことがある。


 それはクラリカに関することだ。今回の試験、ぶっつけ本番で聖剣を使ったわけだが、正直使いこなせていなかった節がある。


 それで、クラリカに変身しているときに使う予定の杖を早めに試しておきたいのだ。次の土曜日はレベル上げにしっかり時間を使いたい。


 というわけで気を使ってくれた二人には申し訳ないが、駅前で別れてすぐに駅に入り、電車にのって弘前に向かう。


 今回は弘前ダンジョンでの実験になる。一番近いしな。


 電車に揺れること30分。弘前に着いたらすぐに人目につかない場所に移動し、クラリカに変身する。


 よくわからない闇が着替えスペースみたいになっているおかげでわざわざトイレとかに行かずに変身できるのは便利だな。まぁ変身するところを見られたくはないから結局人目につかないところに行くわけだが。


 杖を取り出し、装備。そしてローブを羽織って準備OK。白いパーカーにミニスカート。その上にローブとか言う奇抜な服装ではあるがまぁ何とかなるだろう。


 何か忘れているような……。まぁ構わないか。取り合えずダンジョンに向かおう。


 ダンジョンに着いたときに思い出した。クラリカ用の探索証がない。かと言って変身前の探索者証を使うのは嫌だ。名前がこれから有名になるだろうからな。


 仕方ない。今日は探索者証を作りに行くか……。確かネットで作成でなく、支部での作成なら名前、年齢、メールアドレスだけで登録はできたはず。住所とかはいらないし、何とかなるか?


 せっかくここまで来たのに、一度青森に戻る他なさそうだ。

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