第33話 始まる試験
早朝から探索者協会に来ていた俺は窓口に赴いて、試験についての説明を聞いていた。まず、午前中には筆記試験を行う。そして午後、試験官のAクラス探索者が到着したら、実技試験を行うとのことだ。
ちなみに、日本での試験関連全てを引き受ける特殊な能力を持った人物はすでにこの支部についているそうだ。筆記試験を終えたらその能力に関しての説明があるらしいのでそこで顔を合わせる事になる。
試験の方針が変わった後にBクラス以上になった人全員と面識があるちょっとした偉人だから敬意を払って接しなければな。
数分したのち、筆記試験専用の部屋に案内される。試験の時間は90分だそう。このためにそこそこ勉強したわけだから高い点数を取りたい所だ。
試験監督の方がタイマーを押して始まりの合図をする。
大問1を見ると、探索者のマナー等の問題が出ていた。最初なだけあってこれは常識だな。
大問2を見ると、日本三大ダンジョンや、ダンジョンについての知識が問われる問題であった。罠、宝箱等の話だな。これもまぁ、プロ意識を持って探索者をやるなら怠ってはいけないことだろうし、俺は学んでいるからな。
大問3は魔物の対策方法。Bクラス以上のギミック系で有名な魔物が何体かいるな。アークガイストについての出題はラッキーだ。
大問4は歴史上で起きた異能事件とその解決者についての問題だな。これは正直言ってわからないものがいくつかある。
そんなこんなである程度対策していた試験も終わり、試験の根幹を握るスキルの持ち主との対面となる。
その人がいるという部屋に案内されて中に入ると、ソファーにだらけた座り方をしている女性がいた。この人がそのスキルの持ち主か? 見た目は正当派な美人さんだが、座り方からして残念感がすごい。失礼ではあるが。
「君が試験受ける人~? 私は立川 絆。今日はよろしくね~」
「あ、はい。よろしくお願いします」
なんだろう。自由に生きてる感がすごい。
「ちょっと今からスキル使うからそこで待ってて。『内世への扉』」
室内に純白の扉が現れる。どういう原理だ? 後ろには何もないように見えるが。どこでも〇アみたいな感じか?
「この扉に触れてくれる?」
「わかりました」
言われるがままに扉に触れると、その扉からなんとなくだが意思のようなものを感じる。中に入るという意思をこちらも見せれば入れるのか?
「お、君もこれで入れるようになったね。じゃあ後は試験官を待つだけだね~。雑談でもする?」
雑談……? なんだろうこの人、よくわからない。
「いやー君にもこの不労所得っぽいものの良さを知ってもらおうと思ってね~」
なにも言ってないのに話し始めた。多分自分が話したいだけなんだろうなぁ。
「たまたま手に入れたスキルをちょっと使うだけで探索者協会から毎年すごい金額もらえるし、休日もすごい多いんだよ? おまけにサポートありでレベル上げさせてもらえたから本当に最高だよねぇ」
この人はたぶん、ダメな人だな。永遠に楽って最高だよねという話を聞かされる。早く試験官のAクラスさん来てくれないかな。
すると、扉がノックされる。それに気づいた立川さんは流石に自分語りをやめた。
「あ、来たっぽいね。どうぞ~!」
立川さんが入るように言う。すると、ドアが開いて、見たことのある女性が入ってくる。
「失礼します! 本日試験官を担当するAクラス探索者の吉野 優里です!」
<赤色の閃光>のリーダーの吉野さんだ。会うのはスタンピード以来だな。
「吉野さん。お久しぶりです」
「君は……三並ちゃんのパーティーの瀬戸くんだっけ?」
「はい。瀬戸 奏多と申します」
どうやら苗字は覚えてくれていたらしい。しかしこの人が試験官ってことになるとこの人と戦うことになるわけか。
勝てるビジョンが全く浮かばない。善戦もできるかどうか。この人すごい頑丈だからなぁ……。
「あ、そういえば中に入った後の説明してないじゃん!」
思い出したかのように立川さんが言う。扉の中に入った後の話か。確かに聞いてないな。
「吉野さんは知ってると思うけど、中では一応死んでも大丈夫だから。扉の前に戻されるだけ。ってことで二人で真剣勝負ってのが昇格試験だよ。試験官が採点して、その採点と筆記試験の採点の合計点で合否が決まるから、頑張ってね!」
どうやらかなり大事な内容を聞かされていなかったらしい。しかし、死んで大丈夫なら一瞬で殺されて採点等と言っている場合ではないような気もするが……。
「試験なんだから最初は新人君の力を見てあげること。って支部長が言ってたからね。吉野さんはしっかり採点してね。採点項目は……」
立川さんが吉野さんに採点項目を耳打ちで伝えている。なるほど、知られてはいけない内容か。
「それじゃあ二人とも、準備はいい?」
「はい。構いません」
「いつでも大丈夫です!」
「それじゃあ二人とも、扉を開けて中に入って!」
純白の扉が開き、中の様子が見える。これは……。荒野?
中に入ってみるとそこは間違いなく荒野だった。ここで戦闘をするのか。
「さて、瀬戸くん」
「はい」
吉野さんが話かけてくる。最終確認か。
「準備はいい?」
「もちろん、いつでも万全です」
「武器を構えて」
俺は鞘から聖剣を抜き、構える。この聖剣、この試験で初めて使うわけだが、大丈夫だろうか。
「じゃあ勝負、始めるよ。いつでもかかっておいで」
その吉野さんの軽い言葉で、ついに実技試験が始まった。
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