第32話 試験に向けて

 神話級。それは軽く一億以上の値が付くあり得ないほど強力な効果を持ったアイテムの階級の事。


 それが今、目の前にある。こんな錆びた剣が神話級だとは、誰も思わないだろうな。俺に鑑定があったからこそ気が付いたことだ。


 適性を持つ者の魔力によってのみ封印を解除可能といった感じか。


「彩佳、少し聞いてくれ」


「ん? どうしたの?」


「この剣、神話級だぞ」


 そう言って錆びた剣を持つ。


「まさか。そんな錆びた剣が?」


 彩佳も疑っている様子。そうだな、俺に適性があるかどうかはわからないが、魔力、流してみるか。


 その錆びた剣に魔力を流そうとすると、魔力が思ったように動かなくなった。まるで粘性の高い液体に押さえつけられているかのよう。だが、完全に流れないわけじゃない。魔力を剣の隅々まで押し込んで行く。


 すると、少しずつ、錆びた剣が輝きを持ち始める。これは、封印、解けるんじゃないか?


『まさか、本当じゃったのか?』


 ロゼリアもさすがに疑っていたようで、光を増していくこの剣を見て驚く。


 二人に見守られながらも剣に魔力を押し込んでいく。しみわたるまでにはまだまだ時間がかかる。


 だんだんと粘性も増してきているような感じがする。だがもうここまでくれば突き通すしかない。


◆◆◆


 かれこれ30分。激闘の末、ついに剣の全体に魔力が行きわたった。その瞬間、錆びた剣が目が霞むほどの輝きを放つ。


「眩しい」


『眩しいのじゃっ』


「いつも二人が変身する時よりも眩しいな」


 その光が収まった後に剣を見ると、錆び等はもとからなかったように消え、荘厳な雰囲気を持った金色の剣と化していた。


【聖剣 クロノス】

・階級 神話級

・魔法に対して接触可能。

・この剣に魔力を流すことで、自身に流れる時を加速させることが可能。

・魔力を消費することで、時の加護が発動可能。自身に向かう魔法全ての時を停止させる結界を自身の周囲に張る。

・不壊


 さすがは神話級。効果の数も普通のアイテムより多ければ、その効果も桁違いの強さといえるだろう。一切魔法が効かない結界を張ることができるというわけだ。それに不壊が地味に強力だ。


「彩佳、この剣、借りていいか?」


「当然。もともと処分する予定だったし、奏多が使ってあげた方がいいよ」


「ありがとう、それじゃあありがたく借りさせてもらうよ」


 そういうことで彩佳に借りる剣を選び終え、帰宅の用意をする。申し訳ないことに俺のせいで電車を一本逃してしまったからな。次はもう逃すわけにはいかない。帰れなくなると困る。


◆◆◆


 風呂には入り、明日の学校の準備を済ませ、少し考え事をする。今週末、ついにBクラス昇格試験を受けるわけだ。もし昇格できれば、全国21人目の高校生Bクラスというかなりの名誉をいただけるわけだ。


 その場合、俺が有名になるわけだが、彩佳とパーティーを組んでいることがすぐに世間に知れ渡るはず。学校での男子生徒諸君の目も怖いし、なにより今ネットで話題の人間離れした美少女、クラリカとのつながりが彩佳を通じて発生するわけで、バレる可能性が増えるわけだ。


 できるだけバレたくないし、パーティーを組んでいないクラリカは一旦彩佳から距離を置いて扱うことにするべきだろう。


 後は普段はクラリカでダンジョンに潜りたいわけだから、最大限ばれないために、クラリカ用の探索者証を用意するくらいはやらないとな。


 試験までの間は、ダンジョンにいっている余裕はないし、その辺をはっきりさせるのに時間を使うことにしよう。


 後そうだ、ステータスの確認を忘れていた。せっかくBクラス上位の経験値がうまそうなやつを討伐したんだ。レベルはいくつか上がっているだろう。自分の現在の力は把握しておかなきゃな。


 鑑定でステータスを確認する。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

名前:瀬戸 奏多 (変身ON/OFF☆)

レベル:40

ステータス:攻撃力 3027

      守備力 2981

      魔力  2996

      知力  2982

      精神力 2871

      速度  3145

スキル:<鑑定_Lv.5>

    <成長補正>

    <剣聖>

    <ランダムブレス>

    <キープマジック>

    <??? (Lv.50) >

    <??? (Lv.100) >

    <??? (Lv.255) >

状態:変身(魂胆同化)

   絆のつながり【三並 彩佳】

   セーブ【札幌地下大迷宮5・10・15】

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


かなりの上昇量じゃないか? ああ、そういえば前にゴブリンジェネラルの狩りをした後にはステータスを確認していなかったな。その分もあるのか。


 にしてもそろそろ彩佳に追いついたころなんじゃないだろうか。俺と出会った時の彩佳には確実に並んでいるはず。これは試験も期待できるな。


 このステータスに加えて、彩佳から借りている聖剣があるわけだ。


 まぁきっと落ちることはない。なるようになる。後は実技試験の様子を彩佳が見ているようなので、みっともないところを見せないように、かっこいいところを見せられるように。


 全力で頑張っていこう。最初に誓った目標を思い出してな。

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