第11話 全力で

『こ、これが! チーズバーガーなのじゃな!』


「まだ包装をとってないからそのままは食べれないよ」


『な、なんじゃと!?』


「ふっ」


 やっぱりロゼリアは食いしん坊か。面白くてつい笑いが。


「じゃあ変わるよ。ロゼリア」


 ん? まてまて今変身するつもりか?


『バーガーを食べるのじゃ!』


 彩佳の体が輝きだす。うっ眩しい。


「眩しいっ目が! 目があぁぁぁ!?」


「よし、食べるのじゃ」


 チクショウ、やられたぜ……。


「包装のはがし方はわかるか?」


「ふむ……。ここからはがせるのじゃな」


 ロゼリアは少し見回した後、すぐに開け方、食べ方を理解したようだった。俺も包装をはがしてダブルチーズバーガーをだす。


「「いただきます!」」


 うん、いつも通りうまいな。


「ポテチには及ばないにしてもとんでもなくうまいのじゃ~」


 しかしほんと、銀髪のロングストレートで黒のドレス、おまけに翠色の瞳の異世界のお嬢様のような見た目の子が独特なしゃべり方でハンバーガーを食べていると聞くと混乱してくるな。おまけに食いしん坊と来た。


 彩佳とロゼリア、共にギャップがすごい人達だな。


「うまかったのじゃ~」


「早っ」


 俺が一口食べてる間にいつの間にか食べ終わってやがる!?


「満足したから戻るのじゃ」


 さすがに二度目は勘弁願いたい。即座にダブルチーズバーガーを机に置き、両手で両目を覆う。


「なにしてるの、奏多」


 どうやら彩佳に戻ったらしい。目を開く。


「さすがに二回ム〇カ大佐と同じ目にはあいたくないからな」


「あはは、なにそれ」


 あなたのせいですよとは言えない。


「ところでホント、ロゼリアって食べるの早いよね。ちゃんと噛んでるの?」


『ちゃんと噛まねば喉を通らぬであろう?』


 不思議そうな顔をして首をかしげるロゼリア。ちゃんと噛んでるのにあの速度は時間加速でもしてるんですか?


「とりあえず食べよう。席も埋まってきてるから、あんまり長くいると迷惑だからね」


 さすが大人気ハンバーガーチェーン店。


◆◆◆


「「ごちうそうさま」」


 二人とも食べ終わったのでプレートを下げてしまう。


「よし、でるか」


「そうだね」


『また食べにきたいところじゃのう』


 3人で店をでる。時間はすでに午後6時。空気は冷えて透き通っている。


「さ、なんというか結成祝いらしくはなかったけど、これからよろしくな!」


「うん、よろしく! 今日はもう帰らないとね」


 門限なんかもあるだろうしな。こういう時、送っていくよとか言えたらかっこいいんだけど、残念ながら彩佳の方が強いからなぁ……。


『安心せい、彩佳は儂がついておるからの』


「?」


 どうやらロゼリアには見透かされているようだった。


「パーティーとしての活動に関しては後でLUINで送るね」


「了解リーダー! じゃあ最後に」


『「「<朝焼けの輝き>の結成を祝って!!」」』


◆◆◆


 翌日。俺は今日から全力で彩佳に追いつくために全力で狩りを行わなければならない。


 昨日の夜、彩佳から冬休みの宿題案件でしばらく立て込むから冬休みの間は活動なしとの報告を受けたのでな。


 裏を返せば冬休みが終われば活動を始めるということだろう。それならばあとちょっとしかない冬休みの間に詰められるだけ距離をつめてしまいたいのだ。


 ということで今はCクラスのロックリザードを狩りまくっている。ステータスがかなり上がったからか魔剣に炎を纏わせれば一撃で首を飛ばせるようになった。


 あとは、剣聖スキルに慣れてきた。体が技術、動きについていける。


 ついていくだけじゃだめだから自分のものに昇華できなければならないが、それはおいおい。


 このダンジョンのBクラスはかなり強いほうだ。だからこのCクラス下位の魔物で稼ぐしかない。


「魔石12個。いや、まだいける」


 レベルは22まで上がった。続けよう。時間はまだまだある。


 そうやってロックリザードを狩っていたその刹那。俺の目の前が爆ぜた。


「うっ」


 あまりにも激しい衝撃に声もでない。これは骨が数本やられたな。


「くっそ、なにもんだよ……」


 吹き飛ばされた先で顔を上げて元の場所を見ると、背中に赤い結晶を背負ったリクガメのような何かがそこにいた。


「ブラストタートルか……」


 Bクラスの魔物……。しんどいなぁこれ。逃げれないと死ぬ。間違いなく。


「まぁどのみちもう逃げれないか……」


 彩佳達には申し訳ないことをしたなぁ……。


 血を吐きながら立ち上がる。もっと警戒しておくべきだったな。これで終わりかもしれないが、一方的にやられるだけなんて俺の心が許さない。


「刺し違えてでも殺してやる」


 ここまで強烈な殺意を覚えたのは人生で初めてだ。そして最後にもなるだろう。


【ブラストタートル】

・Bクラス中位の魔物。

・背中の結晶はブラストタートルの意思に応じて爆破する。

・弱点は水、風、闇


 三種類の弱点があるのか。できるかどうかまだ一度も研究を行ったことはない。ぶっつけ本番だ。潜在意識なんて捨てて行こう。


「多重展開『水刃』『風刃』『暗黒波動』」


 名前を付けた組み合わせをキープマジックから取り出す。通常のランダムブレスは一個づつしか魔法陣を出すことができない。


 しかし、キープマジックを通してみるとどうだろう。


 ランダムブレスに属さなくなった魔法陣は多重に展開可能となる。


「放て!!!」


 三色の魔法がブラストタートルに打ち込まれる。


「ブルァァ!」


 あまり効果がないように見えるが着実にダメージは入っている。


 HPの10分の1が削れた程度の感触だろう。


「ブルァ!」


 まずい、結晶が飛んでくる! あれにもう一度当たったら今度こそお陀仏だ。


 捨て身で横に飛び、転がりながらも結晶の爆発は回避する。


 これを何度も繰り返せば倒せるはずだ。俺の命が回避による衝撃で削れて行くが。


「やってやろうじゃねぇか。覚悟決めたなら突き通せや!」

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