第10話 パーティー

「スキルの話は以上ですね。僕はまだ探索者になったばかりなのでステータスは平均600弱しかないです」


「わかりました。私以上にとんでもない秘密がありますね奏多さん」


 そうかもしれないがステータスがいまだに貧弱だからなぁ。とりあえず早めに追いつけるように頑張っていくしかない。


『それで、結局パーティーは組むのかの?』


「僕はぜひ組ませていただきたいですね。早めにステータスも追いつけるように頑張るのでぜひ」


 この人達のような人がまた見つかるとは限らない。組めるなら組ませていただきたい。スキルの秘密を知っている人がこれ以上増えるのも勘弁したいところだし。


「そう言ってくれるのであれば是非お願いします。よかったね、ロゼリア。これから話せる人が増えるよ!」


『もしや、彩佳、儂が話し相手がいないことを気にしていたのを知っていたのか?』


「もちろん!」


 まだ新参の俺はこういう話に関わるべきじゃないだろう。少し影を薄めておくか。


「それじゃあ、奏多さん、探索者協会に登録しに行きましょう」


 案外話が終わるのが早かった。


「わかりました。ところでですが三並さんっていくつなんです?」


「私は16ですね、高校一年です」


 同い年だ。てことは三並さんも探索者になって一年もたってないわけか。探索者には高校生以上しかなれないからな。


「同い年ですね。敬語だと距離を感じますし、敬語はもうなしでいいですよ。これから仲間になるんですから」


 俺も敬語で気を張っていると疲れるしな。


「わかった。奏多もタメでいいよ」


「ありがとう彩佳」


『儂もタメで構わんからの~』


「ロゼリアもありがとう。じゃあ、行こうか」


 探索者協会にパーティー登録をしに。


◆◆◆


「こちらに探索者証をスキャンしていただいて、パーティー登録は完了となります」


「「ありがとうございました」」


 いろいろな手続きを踏んでパーティー登録が終わるころにはすでに日が傾いていた。


 しかし、ついにこれで俺もついに一人身から脱却かぁ。一人身で居た期間そんなに長くないけど。


「これで完了だね。今日からよろしく、奏多!」


「おう、よろしく!」


『儂も忘れるでないぞ~』


 さて、そろそろ暗くなってきたころだし、帰らないとな。


「奏多」


「ん? どうした?」


 彩佳に声をかけられて彩佳の方を向く。


「LUIN交換しない?」


「いいぞ。むしろ忘れなくてよかった」


 LUINとはスマホのチャットアプリの事だ。忘れていたらパーティーメンバーと連絡が取れないなんて非常事態が発生するところだった。


「よし、これで交換できたね」


「おし、じゃあ今日は解散?」


 もう午後5時を回り、冬だからか外も暗くなってきている。


「まって。せっかくパーティーを組んだし、結成祝いに一緒に何か食べに行かない?」


「お、いいね。そういうの大事かも」


 いいことがあれば祝う。そうすれば士気も高まるってものだ。


「奏多はどこか行きたいところある?」


 お、俺が決めるのか。どうしよう。ラーメンは昼食べたしな。いやまぁ女子をラーメンに連れてくのもどうかとは思うが。某ハンバーガーチェーン店とか?


「も、モックとか?」


 そういった俺に彩佳は一瞬きょとんとした顔をする。その顔はすぐに満面の笑みに変わった。


「あはは、奏多って庶民肌だね! いいよ、モックいこう」


 庶民肌ってなんだよ。というかモックも一介の学生には少し高いだろ。あれ、そういえば俺今日の稼ぎ37万だっけ。


『モックのう。一度食べてみたいと思ってたんじゃ』


「じゃあ私の分は二つだね」


 そんなこんなで話ながらモックへ向かっていく。


「そういえば変身するとき光って見えるのって俺だけだったりする?」


 ロゼリアが主人格になるとき俺の目には光って見えた。しかし、姿が変わって見えるのは俺だけなので、その変身の輝きも見えないんじゃないかと思ったのだ。


「そうだよ。奏多だけの特権だね!」


『割と目に痛いんじゃないかのう』


 彩佳がボケを始めた。たまぁにボケ入れてくるのは何なんだろう。見た目はハーフアップをみつあみにした黒髪の優雅な人って感じだからギャップが激しい。


「特権で目を傷めるのは勘弁願いたいな」


 しかし、ギャップからくるかわいらしさや面白さもある。俺はつい笑ってしまう。そしてロゼリア。普通に優しい。


「ついたよ」


『モックに入るのは初めてじゃ』


「よし、入るか」


 3人で中に入る。実際他の人が見たら2人で入ってるように見えるだろうが。


「お次にお待ちのお客様~」


 少し並ぶかなと思っていたら、そんなに待たなくとも注文できそうだ。


『儂はチーズバーガーが食べたいのう』


「私は……チーズバーガーを二つお願いします」


「お二つですか?」


 店員さんが少し困惑している。まぁわからなくもない。


「はい、二つです」


「かしこまりました。そちらのお客様はどうなさいますか?」


 俺の注文だな。


「ダブルチーズバーガーのセットでお願いします。サイドメニューはチキンナゲットで」


「かしこまりました。チキンナゲットのソースはバーベキューとマスタードがございますがどちらになさいますか?」


 マスタード派の人には申し訳ない。俺はバーベキュー一択しかありえないと思っている。


「バーベキューソースでお願いします」


「かしこまりました。お持ち帰りになさいますか?」


 お持ち帰りだと祝いの意味がないしな。ただ一緒に買いに来ただけになってしまう。


「いや、ここで食べていきます」


「かしこまりました。ではこちらの番号が呼び出されるまで少々お待ちください」


「はい」


 代金を払って整理番号の書かれた紙を受け取って下がると、彩佳とロゼリアが待っていた。


「注文ありがとね。後ろの列の邪魔になるかと思って下がってた」


 後ろを見ると、いつの間にか注文待ちの列ができていた。


「ちょうどいいタイミングできたんだな」


『漸くバーガーが食べられるのじゃな~』


 ロゼリアってもしかしなくても食いしん坊だったりする?


「89番でお待ちのお客様~」


 お、うちの番号じゃん。


「取りに行ってくる」


「じゃあ席座ってるね」


 彩佳とロゼリアが席を取っておいてくれるようだ。


「チーズバーガーがお二つ、ダブルチーズバーガーがお一つ、チキンナゲット5ピースがおひとつでお間違いないですか?」


「はい」


 バーガーを受け取って彩佳達が座る席に向かう。


「はい、持ってきたよ」

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