第2話 ランダムブレス

  翌日、俺は少しレベルの高い青森ダンジョンに挑むことにした。


 弘前ダンジョンの攻略もしたかったが如何せんアクセスが悪いからな。県外と比べるとそこまで悪くはないが、学生にとっては悪いだろうな。毎日いける場所ではない。


 それにステータスもかなり上昇を果たした。<成長補正>、とんでもないチートっぷりでレベル5の平均的なステータスの倍近くまでステータスを引き上げてくれたからな。


 俺のスキル、前から思っていたがかなりずるいな。


 それと鑑定のレベルが上がって見れる情報が増えた。


 <???>の各解放レベルが見れるようになった。直近だとレベル10。一番最後に解放されるのはレベル255だった。


 いくら成長補正があったとしてもレベル255は少々無理がないか?


 公開されているなかで最も高いレベルの人は207だぞ。


 ま、まぁ今日は直近の解放を目標にこの青森ダンジョンにやってきたわけだ。レベル10な。


 しかし青森ダンジョンは洞窟型のダンジョンで道が分かりずらいな。入り口にパンフレットのような形で置いてあった地図と誰かが付けてくれたであろう目印がなければ確実に迷っているぞ。


「シャー!!」


 おっとこのダンジョン初の魔物が天井から降ってきたぞ! 殺意高いな!


「はっ」


 剣聖のスキルのおかげか対応できた俺は落ちてきた蛇のような魔物を切り裂いた。こいつはバインドスネーク。Eクラスの魔物でその長い体での巻き付き攻撃がメインだ。毒はない。


 ドロップ品は……。バインドスネークが塵となって消えた場所に葉っぱの包みに包まれた肉が落ちている。バインドスネーク肉だ。蛇肉って食えるのかと思って前に調べてみたが、どうやら鶏肉に近い味らしい。


 今回はこれを家族に持って帰るのが目当てでもある。ダンジョン産の肉はうまいらしいからな。


「よし、次にいこう」


 それからしばらく目印や地図をたどって歩いていると、ダンジョンといえばなものを発見した。


「宝箱か!」


 一応そこらに落ちていた石を箱に投げつけミミックではないか確認する。そもそもこんな浅いところではミミックは基本でてこないが念には念を入れて。


「ミミックじゃないな」


 よし、開けてみよう。中に入っていたのは……。


「あ、剣被った」


 少し宝石での装飾がなされた剣が中に入っていた。


「鑑定してみるか」


【火の魔剣】

・階級 希少級。

・宝石に火の魔法の術式が含まれているため、魔力を流すことで炎を纏うことが可能。


「魔剣……!」


 固有の名のついた希少なものではないが、魔剣というものには心を惹かれるな……!


 ここで階級について説明しておくと、この階級というのは武器のレア度を指すものだ。


 鉄製の剣など一般的なもの

 ↓

 普通級


 ダンジョンから産出されるものの基本

 ↓

 希少級


 ダンジョンから産出されるものの中でもかなり希少なもの

 ↓

 伝説級


 神々しさすら感じさせる物凄く効果が強いもの

 ↓

 神話級


 といった四つのクラス分けがある。金銭で表すと、普通級は1万~5万、希少級は5万~100万、伝説級は100万~1億、神話級ともなれば1億を余裕で超える。


 まぁ例外もあるが大体こんな感じだ。治癒ポーション系は階級一つ上分くらいの金額になる。


 しかし、剣が2つあるとかさばってしまうな……。ここは徒歩で家に帰ることのできる距離。まだ午前だし、一度家に戻って荷物を置いてこよう。


 マジックバックがあれば置きに行く必要がないんだけどな。だが、あんな車にも並ぶ値段がするものはそう買えないので仕方ない。


◆◆◆


 よし、一度前まで使っていた剣とバインドスネークの肉は置いてきた。


 今のレベルは7なのでなんとか今日のうちにレベル10にたどりつきそうだ。


 じゃあ魔剣を試して行こうかな。


 魔力を通す、か。どういう感覚なんだろうな。


 まだ俺は魔力というものを使ったことがないからな……。


 剣を持って試行錯誤するが、一向に火が付く様子はない。どうしようか。


「シャー!!」


 うわ、またバインドスネーク降ってきたって。


「はっ! ってうおぉっ!?」


 先ほどと同じようにバインドスネークを切り捨てようとしたところ体の中から何かが抜けるような感覚がして魔剣が燃え上がった。


 真っ二つになったバインドスネークの断面が燃えている。なるほど……。剣聖のスキルの補正が働いて剣の真価を引き出そうとした結果発動できたって感じか?


 しかし、先ほどの何か、あれが魔力か。魔力がどんなものなのか少し理解できた。今ならできるな。


 構えた剣が燃え上がる。思ったより魔力の消費が激しいな。オーバーキルになるし、しばらくは使わないだろう。


 よし、実験もできたことだし、本来の目的のレベリングを開始しよう!


「ッ!」


 勢いよく洞窟の先から石が飛んできた。とっさに剣で弾き飛ばすが……結構な威力だ。


「なんだ……? 鑑定」


【ストーンリザード】

・Dクラスの魔物

・石を飛ばして攻撃する。鱗も石のように固い。


 ストーンリザード。少し深いところまで来すぎたかな。


 奴はDクラスの中でも下位ではあるが、それでもDクラスだ。今の俺では勝てるかどうかわからん。


「やるしかないか!」


 剣に魔力を通して火を纏わせる。石の鱗を持つあいつに効果があるのかわからないが、他に魔力の使い道もないし、ないに越したことはないだろう。


 飛んでくる石をはじきながら石のトカゲに近付いていく。


「はっ!」


 射程距離内に入ったので石トカゲに剣をたたきつけるが、打ち所が悪かったために弾かれてしまった。


「くっ!」


 首の周りにある一際堅い部分にあたったから納得ではないが、弾かれたのはステータス不足を感じるな。剣筋は悪くなかったはずだし。


 どうにか鱗が薄い部分を斬らないといけないようだ。


「しかし、柔らかい部分ってどこだよ」


 不明だ。だがやるしかない。


 燃え盛る剣を石トカゲに打ち当て、石トカゲを空中に打ち上げる。


「いまだ! はぁっ!!」


 鈍重なためなすすべもなく打ち上げられてじたばたしている石トカゲの腹部に燃え盛る剣を打ち込む。


「ギュアァァァ!!」


 断末魔を上げた石トカゲは真っ二つになって死んだ。


「Dクラス、ねぇ。疲れた」


 塵となった石トカゲの元に一つの石のようなものが落ちる。


「あ、魔石」


 Dクラス以上の魔物は魔石と呼ばれるアイテムをドロップすることがある。それは新時代的なエネルギーを持つ代物で探索者協会がかなり高価で買い取ってくれる。


「レベルも10になったな」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

名前:瀬戸 奏多

レベル:10

ステータス:攻撃力 198

      守備力 192

      魔力  184

      知力  186

      精神力 180

      速度  199

スキル:<鑑定_Lv.2>

    <成長補正>

    <剣聖>

    <ランダムブレス>

    <???>

    <???>

    <???>

    <???>

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 なんだこのスキル。

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