第1話 剣の道を歩む

 決意を固めたはいいが、探索者になるには申請を通さなくてはならない。


 未成年の俺では、その申請に親の承認が必要になる。


 どう親を説得しようか。うちの両親は探索者という職業を危険な職業だと思っているし、それは紛れもない事実だ。簡単に許可はくれないだろう。


 このステータスを見て貰えば納得はするだろうか。


 しかしなるべくこのステータスのことを知られるのは避けたい。例え家族が相手でも。


 あまりにもオンリーワンな要素が多すぎるからな、実験やら何やらの為に危険が迫る可能性はある。


 知られないに越した事はない。


 できるだけ知られずに話を通さなければ。もちろん話すのも問題はないのだが。


 信用してないと思われるかもしれないがこれは身を案じてのことなのだ。


◆◆◆


 俺のスキル等が判明してから一週間がたった。今日俺はついに初めて探索者として協会に管理されているダンジョンに潜ることになる。


 あれから両親、そして妹に話を通したが、無理をしないことを条件に案外すんなりと認められた。


 やりたいと思うことを否定するつもりはない。だが、命だけは大切にしろ。とは父さんの言葉だ。


 普段は口数の少ない父さんだが、今回ばかりは真剣に話をしてくれた。


「ここが弘前ダンジョンか」


 思い出しているうちに目的のダンジョンにたどりついた。俺は青森県青森市在住なので、青森市のダンジョンに潜ってもいいのだが、あそこは少しレベルが高い。初心者にはうってつけとのこのダンジョンにわざわざ来たというわけだ。


「よし、入ろう」


 これが入り口か。そうだな、ひと昔前の駅の入り口……。改札っていうんだったか?


 とにかくそれに届いた探索者証をかざして中に入る。


 ついでといっては何だが、ステータスボードを触って自身のステータスをもう一度確認しておく。


「一週間前と変わってないな」


 まぁレベルが上がるようなことはなにもしていないし当然だろう。


 ダンジョンの階段を下り、地下一階層に入ると、そこには……。


「どうなってんだあの太陽……」


 快晴の空が広がる見渡す限りの草原が広がっていた。


「どれどれメモには……。なるほど、ここにはレッサーウルフが出るのか」


 探索者証が届くまで一週間暇をしていたわけではなく、俺は近隣のダンジョンに出てくる魔物、そして自分のスキルについて研究を行っていた。


 鑑定のスキルに関しては一部実験を中断しているが。


 <???>に関しては特定のレベルになると解放されると鑑定の結果で出ている。


 現状<成長補正>関しては確かめることができていない。鑑定の情報に間違いはなさそうなのだけど。


「そういえばここのダンジョンの情報とか鑑定できるのか?」


 このダンジョンに向けて鑑定を発動してみる。


【弘前ダンジョン】

・全30層からなるダンジョン。

・F~Bクラスのモンスターが出現。

・詳細はブロックされています。


 できるんかい。しかし詳細はブロックされています、か。もしかしたらレベルを上げれば見ることができるようになるのでは……?


 レベル上げの条件はいまだ不明だが、そこは調べていくしかないだろうな。


 ちなみにクラスというのは等級の扱いを指す。Fが一番弱くて、Sが一番強い。しかしこれは魔物の区分で、探索者には明確にクラス分けされるのはBクラス以上のみで、それ以外は自分のステータスを参照してどれほどのクラスの魔物とまで戦えるのか考えなければならない。


 一般的に以下のステータス以上あるとそのクラスに当たるとされる。左側は全ステータスの平均値だ。


 ~10        Fクラス

 11~50      Eクラス

 51~100     Dクラス

 101~1000   Cクラス

 1001~5000  Bクラス

 5001~10000 Aクラス

 10001~     Sクラス


 今の俺はEクラスにあたるだろうな。まだまだ駆け出しだ。俺の目標はSクラス。


 そしていま討伐しようとしているレッサーウルフのクラスはFクラス。大型犬と大差ない戦闘力との話だし、Eクラスほどのステータスがあれば問題なく対処可能だろう。


 そうこう考えているうちに……来たな。


「ギャウ!!」


 大型犬より一周り大きい獰猛そうな見た目の狼がとびかかってくる。結構でかいなぁ。一般人ならビビるだろ。


「甘いね」


 父さんから買い与えられた初心者用の剣を振りぬく。


 その剣はレッサーウルフの頭に直撃し、レッサーウルフはバウンドしながら吹き飛んでいった。


 絶対剣の使いかた違うだろこれ。まぁいい。


「元野球部員なめるなよ」


 中学2年までしかやってないけどな。お、レッサーウルフが消滅した。魔物は討伐されると塵のようになって消滅する。


 レベル確認したいなぁ……。そういえば自分を鑑定したらどうなるんだ?


 自分に向かって鑑定をかけてみる。


 すると、ステータスボードと同じ内容がいつもと同じウィンドウに表示された。


「鑑定最強だわこれ」


 ちなみにレベルは上がっていなかった。


◆◆◆


 あのあと計10体のレッサーウルフを倒した後、ステータスを確認するとレベルが4に上がっていた。


「今日の目標はレベル3だったが……。せっかくだし5を目指してみよう」


 レベルが5になったら何かスキルが一つ解放されるかもしれない。普通の人のスキルが解放されるのがレベル5だしな。


 自分から探してさらにレッサーウルフを狩り終える。


 ステータスボードを確認すると、しっかりレベルが5になっていた。


「よし!」


 気になるステータスはこんな感じだ。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

名前:瀬戸 奏多

レベル:5

ステータス:攻撃力 93

      守備力 92

      魔力  86

      知力  83

      精神力 79

      速度  96

スキル:<鑑定_Lv.1>

    <成長補正>

    <剣聖>

    <???>

    <???>

    <???>

    <???>

    <???>

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ちょくちょく確認していたからステータスの上がり幅がなかなかすごいのは理解していたが。問題はスキルだ。


 ……どっちも問題か。


【剣聖】

・剣の技術に補正(極大)


 シンプルなスキルだが、こういう名前のスキルは最強格だとゲームやアニメでは決まっている。このスキルの補正感覚を確認して、今日の探索を終わろうと思う。


 うってつけのレッサーウルフがそばにいるようだし。


「ギャウ!!」


 本日最初に突撃してきたレッサーウルフと全く同じ動きでレッサーウルフがとびかかってくる。


「剣聖ねぇ。はぁ!」


 全力で剣を振ると、まるでバターを斬るかのようにレッサーウルフが真っ二つになった。


「とんでもねぇ」


 全くの剣の初心者の俺がこのように剣を扱えるとは...。


 極大の補正は相当強力なようだ。


 これはこの先のスキルも楽しみだな。


 しかし、今日はもう帰らなければ家につくのが遅くなってしまう。


 今日は終わりだな。

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