最終章 人への旅立ち#14
「リルー…せなかがいたい…まだなにかささってる…」
リルティーヌは後ろを振り返ってリージャを睨んだ。
「我慢出来ない?‥さっき大体取り除いたけどまだ残ってるの?」
「いたいー!!うでもいたくなってきた…これ、いらない」
木の触手が勢い良く振られ、その先に着いていたアイヴァンが大きく半回転しながら宙を舞った。
「アイヴァン!!」「ぎゃああああ!!!」
剣を捨て精一杯飛び上がりウィリアンはアイヴァンを受け止めた。
衝撃で二人は大きく体勢を崩して、地面に生えるわずかな草や花達をなぎ倒しながら地面を転がって、どうにか木に身体を打つ前に止まった。
「あはははは!!楽しいわよねー?」
「うっ…痛い…アイヴァン、大丈夫…?」
「えっ、あ゛っ、大、丈夫…ひっ、ぐ…ウィリアン様…」
ウィリアンはアイヴァンの背中を撫でながらきつく抱き締める。
「ねえーウィリアン様?リージャも調子が悪いって言ってるし、戦うのはまた先にしない?」
「…どういうつもり?私は、あなたと片をつけにきたのよ。」
ウィリアンはもう立ち上がって、剣を手に取る為に動こうとしている。
「だから、リージャの調子が悪そうなのよ。早く研究室に戻って見てもらわないと。この子だってあなたの大事な子どもでしょう?このままにして死んだりしてもいいのかしら?」
「…っ私が連れていく!あいつらと交渉しないと殺されるわ!」
「私が管理する限りは殺さないって約束は取り付けてるから大丈夫よ。」
「…‥そう‥どうして、どうして……リルは私のことを裏切ったの?」
ウィリアンの今にも泣きそうな目線が、どこまでも感情の出ないリルティーヌの眼差しとぶつかる。
「…そうね…明日の朝、10時頃、またこの辺りで会いましょう。その時に二人だけで決着を着けて、今までの事も教えてあげる。さぁ、リージャ、戻りましょう…」
「いたい~…おなかすいた、リル、ごはんくれる?」
「さっき食べたばかりなのに…帰り道なにか動物でも食べながら帰りましょう。」
会話だけを聞けば姉弟のような、母子のような微笑ましいやり取りの二匹の生き物はゆっくり森の奥へ戻っていった。
「‥アイヴァン!?どこか怪我は!?」
ウィリアンは手に取りかけた剣から再び離れて、座り込んだままのアイヴァンに駆け寄る。
「すり傷がちょっと…ウィリアン様の方が大変そう…服、破れてどろどろだよ…」
「ふふ‥ああ、確かに…痛いけど、忘れた。アイヴァンが無事ならどうでもいいの…」
アイヴァンとウィリアンはまたしっかりと抱き合う。
「家に帰りましょう。痩せたんじゃない?きちんと食べないとね…」
「はい…ぐすっ‥」
ウィリアンはアイヴァンの肩を抱いて歩きながらも、剣はしっかりと握り締めたまま周りに視線を送ることを忘れていない。
アイヴァンは自分の頭に掛かる金色の髪に涙と頬を埋めながら、ウィリアンと共に自分の家を思い浮かべて歩き出した。
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