最終章 人への旅立ち#1
「ねぇ、一体どういう事なのか説明して!!」
「声を荒げないで下さい。興奮すると魔力が出ません。‥もう遅いですね。」
玉虫色のぴったりとした服を着たウィリアンが、透けそうで透けない牛乳色の固い椅子に座って、二十代に見える金色の髪の男と対峙していた。
広い部屋の中は白を基調としていて、用途不明の同じ様な白い物が置いてある。
「聖水でも良いのですが、落ち着く為のお茶を出しましょうか?」
「…飲みたくないのだけど、飲まないと話をさせてくれないのよね。早く出して。」
男は部屋の中でも小さめの白い物の一つに近づいて、何度か両手を行ったり来たりさせると、持ち手の無い白い器に薄く色づいた液体を入れて彼女に差し出した。 ウィリアンは例も言わず受け取って一気に飲み干す。
器を返しながらウィリアンは目の前の男を上目で睨みつけた。
「どうして…ロットを殺したの?しかも、私の子どもの目の前で…」
「ロットを私達に渡した時点で貴女に干渉する権利はありませんが…誤解をしている様なので説明しますが、ロットを殺したのは試練を与えている妖獣です。ロットはその混乱に乗じて逃げ出したところを殺されたのです。」
「…それは、あなた達が、あの子達に‥ひどい事を繰り返したから、そうなったんじゃないの」
「それの一端を担っているのは貴女だということを忘れていませんか。」
ウィリアンは長い時間睨みつけていた視線を、静かに下げた。
「気分は落ち着きましたか」
「なんでもいい…私の子供達を傷つけないで…」
「〝欲求には対価を払うべきだ。〟以前貴女が貸してくれた本にそう記述が在りました。貴女も習って、対価を支払うべき時が来たのです。」
「…何度も払った…これ以上は‥」
「前に貴方に言い渡した任務以外に追加します。逃げ出した妖獣を捕らえて下さい。失敗作なので殺すのも許可します。」
「嫌…どうして!自分達で捕えればいいでしょう!?」
ウィリアンは立ち上がろうとするが、お茶のせいか手足が痺れて出来なかった。
「私達も研究に忙しいのでそれにばかり構っていられません。後は、今回魔女である貴方達がどう動くか、それも今度の事に影響するでしょう。」
魔女の頬に一筋の涙が流れる。男はその涙を親指で拭った後、無表情で目の前の頭を撫でた。
「頑張って下さい。貴女と私達は、友達です。」
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