第一章 ミレと妖精の使い #4



床に星座の形にみえて散らばるカップの大きな破片に小さな破片が引かれるように集めて

「全く、お前のせいで…」

ナキィルがぼやきながら背を曲げて一つ一つ拾っていました。

「なんだよ!お前だって‥」

ワイグが反論し欠けて、左に厳しいウィリアンの視線を感じて、止めました。

ウィリアンは、はぁーっと、肺の空気を全て交換するような溜め息をついて

「もう‥ あなた達のせいで村長が出て来られてびっくりしちゃったわよ。どうなるかとひやひやしたんだから…

とにかく、もう喧嘩はなしよ。分かった?」

はい、と二人は少しうつむいて返事をして、

「良い子じゃない。今度私のお手製マフィンを二人にも持ってきてあげるわ。美味しいんだから。」

ウィリアンが楽しそうに笑いながら二人の頭をみえない距離を気にすることなく軽くなでました。

ナキィルは一瞬赤くなって、

「あぁ。楽しみにしてるよ。」

気障にそう言って、ワイグは真っ赤になって

「これ!キレーに割れちゃったな!」

少しうわずった声で、ナキィルの持っていた割れたカップの取っ手の破片を素早く奪い取ります。

陽の光に翳して、角度をころころ変えて見つめるワイグをウィリアンが、危ないわよ、と簡単にとがめたあと、そのカップを見て蒼い瞳を見開きました。

「それっ、…!」

ウィリアンが語尾は息のつぶやきになりながら言って、

「これが…どうかしたのか?」

ナキィルがウィリアンの目線の先のワイグが持つカップだったものを見て訊ねて、

「アリシスおばさんが…ロイズおじさんの形見だって…」

段々と消え入っていく声で、ウィリアンは答えました。

ワイグは驚いて、ウィリアンをにらんでしまいそうに見ながら

「えっ!…俺っ‥そんな、大事な物を…」

言葉の後は声も視線も消えていきました。

ナキィルは目を細めながら落ち込む者達から逸らし、

「なんでそんな大事な物、ここへ持ってくるんだよ…。そんな、割れるかもしれない物をっ…」

舌打ちしそうな勢いで言って、ウィリアンはナキィルの姿をそっと視界から逸らすと床の木材のうろを見つめながら

「アリシスさんが…前に、ロイズさんの葬儀からしばらくしてから、遊びに行った時に私にこのカップでお茶を入れてくれながら…これは、ロイズが最初に私の為に作ってくれた作品なのよって…。

そんな大切な物、私なんかが使っていいのかって訊いたら、ロイズも私と同じでそれを望んでるのよ、って手を握ってくれて…それからロイズさんとの昔の話とか、色んな話したりしたの。

それで、その時、アリシスおばさんの隣に誰か座ってたような気がして…すごく、温かい感じがしたの。 太陽みたいにほわほわっと、してて…

私が小さい頃会ってた、ロイズさんと似てるような気がして。

あっ、今のは私の気のせいかもしれないんだけど!きっと、だから、今日はロイズさんと参加した頃のこと思い出したくて、ここに持って来たんじゃないかなって…思って…」

そう言い終えて、俯いた顔をあげず、瞳の透明さと蒼さを強くさせました。

ナキィルがどう言ったらいいのか分からず、いつも女の子にそうするように、ウィリアンの細い肩に手を伸ばそうとして

トッ.  

彼の指より少し先の空気を通り過ぎ、ウィリアンの瞳の対が、静かに水滴の音を称えて床に落ちました。

「 ―! ‥、」

ナキィルの手が微かに震えましたが、その手は空気を撫でるように下へと降ちて目の前の哀しむ少女へと触れることはありませんでした。

そうして、迷い堕ちた手のひらのすき間を潰すように握りしめ

「…悪かった…でも、わざとじゃなくて…ワイグも…」

独り言のように、また言い訳にも聴こえる声で呟き、それはしずかな背景へとたどり着いて、解けて消えていきました。

「うん…」  少女のか細い答えのような声が、かすかに響いたような気がしました。

‥そして重く言葉にし難い間が周りに流れ始めた時

「ナキィル!ウィリアン!」

「ぎゃぁっ!」「ゔぁっ!」

二人をふと人影が包んだと思うとワイグの両腕が二人の肩を通り過ぎて、首に巻き付きそのまま抱き締め上げました。

「ちょっ、くるっ、苦しい…」「ワイグ‥、どうしたっ?」

二人はワイグの太い腕の輪の中で、ちょうど収まるようにして頭をくっ付けています。

ワイグはさらに腕を閉める角度を深めるのを止めないで

「ウィリアン、俺、俺っ…どうしよう‥」

段々と覇気を失い、額と涙を二人の肩にひっつけました。

ウィリアンは、自分のまつ毛で寄り掛かる相手の髪を撫でてワイグの首の後ろに手をあてながら、彼の頬に自分の金髪と頬を寄せると

「…みんなで謝ろう。‥私も謝りたい、の。…もし謝っても仕方なくても、謝るのは大切よ。」

落ち着かせる声音でそう呟きました。

すっ 、とワイグの腕が二人からゆるやかに落ちていくと、ナキィルがウィリアンとワイグの向きへ体を直し

「ウィリアンは謝る事はないよ。これは俺とワイグの問題だから…」

少し赤くみえなくもない眼で真っ直ぐに二人へ視線を返しました。

ウィリアンは、うっすらと笑って金色の髪をふわふわと左右に振りながら、

「アリシスおばさんは、私にとって大事な人なの。 私の、もう一人のお母さん…みたいな。

アリシスさんも、私をきっと…娘だと思ってくれてるから!だからこういう時こそ、私の出番でしょう?」

最後は照れのせいか、頬を今の時季に森の中で咲き始める花に似た色に染めながら目を逸らして言いました。

その様子にナキィルはふっ、と柔らかく目を見開くと

「今、十歳ぐらいの時この三人とオルガスタでピクニックに行った時の事思い出したよ。ワイグ、覚えてるよな?」

明らかに笑いをこらえながらワイグに話を振って

「うっ、わ!俺っ思い出したくないっ!!オルガスタなんか嫌いだっ!!、嫌だっ!!」

ワイグは糸で操られているように頭をぶんぶん振って、反動でよろけながら二歩ほど後ずさりしました。

そんな様子のワイグをじっと眺めながらウィリアンはゆっくりひとつかみ、自分の髪を持ち上げるとぱっと放して、

「あぁ!私とオルガスタが一緒にブルーベリーケーキ作ってめちゃくちゃなケンカしたときのことでしょ?」

話出しはいつもより調子の高い声ですらすらと喋って、

「‥、懐かしいなぁ…。アリシスおばさんに、私たちもケーキだって何だって作れるんだってくいついて、作り方教えてもらって…まぁ、オルガスタがなにかと邪魔ばっかりするからあんなお菓子じゃないのになっちゃったんだよね♪」

最後は一音唄って苦笑いでまとめました。

ナキィルがふはっ、と馬鹿にしたような声を出しながらも、微笑み、片手でワイグの頭を雑に撫でながら、

「いや、オルガスタがどうのっていうより、二人が大雑把なんだろ。えーと‥ソースに入れる砂糖の量も目分量で、適当に入れてただろ?最後、煮詰める時も二人でケンカしてたからちゃんと混ぜてなかったり…ウィリアンもオルガスタも、そういう基礎のところが出来てないんだよ。」

もう片手でその料理の時々の動作をくるくると再現して、先生のような口調で語り終えました。

ウィリアンは驚きを隠す素振りもなく、ふっと息をはくと

「…ナキィルって、本当によく見てるよね…というより、何か詳しいね?今の真似もすごく上手な感じに見えたよ?」

何気ない探し物をするような視線でティズの顔を覗き込んで、目が合ったナキィルは瞳を見開いて、

「‥ルイーズ姉さんが、お菓子作りが得意で…、姉さんに色んな作り方教えてもらったんだ。」

少しづつ眼をずらして気付かれることなく見つめる目から逃れるために返事をしました。

「「ええっ!!」」

ウィリアンとワイグは同時に驚きの声を出して次々に、

「そうなの!?初めて聞いたよ、そんな話!」「俺もそんな話初耳だ!?出まかせ言ってるだろ!?」

そんな事を言い、そんな二人にあきれた様に軽く頭をかきながら

「別に、わざわざ知らせることでもないだろ。この村の女の人は皆、最低でも伝統菓子ぐらいは作れるだろうし。それに比べたら俺の腕は大して…」

「ううん!違うよ!そんなことじゃなくて」

話を続けるナキィルをはっきり遮って、ウィリアンは

「男の人で、お菓子作ってる人ってめずらしいし素敵だと思うよ?…ていうより、私ナキィルのお菓子食べてみたい!前にルイーズさんのお菓子頂いたときも、すごく美味しかったし。」

輝く金髪をさらさらと傾けながら幸せそうに笑いました。

ナキィルはまるで春の陽の中にある雲を見るように、目を細めてウィリアンを見つめ

「‥ウィリアン、僕で良かったら作り方教えるけど、一緒に作らないか?その、もう昔じゃないし、ウィリアンもお菓子でも何でも作れるようになってるかもしれないけど…」

言葉の最後は、視線をウィリアンに定めたいけど定められない様に動かしながら言いました。

するとウィリアンは両方の瞳を嬉しそうに、丸く碧く輝かせて

「本当に!?わぁ、良かった!すごく嬉しいよ!♪私、お菓子はあんまり作り方知らないし、へたくそで…将来、子どもに何作ってあげたら良いか結構悩んでたの!」

高く声と同じように跳ねる心臓の前で両指を組み、言いました。

するとワイグも胸に固くこぶしを当てると

「子どもか!良いよな!やっぱり子どもに美味しいお菓子を作って初めて一人前のお母さんって感じするもんな!よし!俺も一人前のお父さんになるために一緒に作ろう!」

そうウィリアンの瞳をしっかり見つめながら言い放って

「‥ワイグ!少し話そう、な!」

ナキィルに襟首を引っつかまれて向かいの窓際まで連れて行かれました。

窓に背中がつきそうなところまで来ると、ワイグは服がのびる首のもがき方でナキィルの引っ張る手から逃れます。

「離せよ!何だよっ!お前は高嶺の花は諦めるんだろ!?」

「…諦めるとは、言ってない。俺は諦めるつもりはない。」

何分か前に似た言い争いを始めようと静かに睨み合っていると、

「ねぇ!ちょっと二人とも!」

少し大きな呼び声が聞こえたかと思うとウィリアンがふあっと微笑むに近い表情を浮かべて、一度手招きをしました。

また叱られると身構えていた二人は「?」を頭に浮かべて拍子抜けした顔で体の力を降ろして向かいの窓際へ戻りつつ

あると、ウィリアンは目の前で村近隣の伝統の踊りに似た動きで、スカートをひらめかせ

「私、オルガスタも誘いたいと思ってるんだけど、どうかな?あの子も確かお菓子は得意じゃなかったはずだし!ね、昔の再チャレンジっていうのも楽しそうって思わない?」

優雅と小悪魔の間の笑顔で二人にそんな話を持ちかけました。

そんな生き生きとするウィリアンの前でワイグは露骨に顔を歪ませて、

「えぇっ!!オルガスター!?…オルガスタがいたって、楽しくないって!オルガスタ呼ぶくらいなら、ルイーっ!」

途中まで言いかけたところでナキィルがワイグの首にぐるりと片腕をまわして、

「ふ‥、ワイグ、お前の考えは分かりやすいな。」

とても冷静な声で裏の心の中が透けそうに言いました。

「な…何がだよ?」

ワイグはよくきくと裏返った声で言いながらナキィルの顔を、どこか怯えて覗くように見上げました。

「いいや?とぼけるつもりならいいんだ」

ナキィルは急に大人びた含み微笑いをしながら言うとくるりと、体を軽やかに半回転させ、楽しそうなうわの空のウィリアンの肩に手を触れて

「ウィリアン?」

「はい?なに、ナキィル?」

「ウィリアンは、ルイーズ姉さんも呼んで、一緒に習いたい?」

「えっ、いいの?ルイーズさんももう奥様だから、忙しいんじゃ…」

「いや、もう一年経ったし、最近は慣れてきてそうでもないかな。」

「‥なら、お願いしようかな‥先生がたくさんいてくれると心強いかも!」

「そっか。まぁ、俺は良いんだけど…姉さんはお菓子のことになると豹変するからなぁ…ウィリアンには押さえてくれると良いけど…」

「な、何?豹変するって、ルイーズさんが?どういう風に??」

「どうだな…ルイーズは時々お菓子のことになるとまるで人が変わったように厳しく恐くなるんだ…特にヘタな人には容赦しない。…姉さんのマリッジ・メイトはこう言ってたな。

『お菓子について熱く語りだしたルイーズはまるでロミニー先生にそっくりよ。木べらを振り回してお説教する姿なんか特にね!』…って。」

「ロミニー先生ってまさか礼儀作法マナー指導クラス教室の“竜巻ミス婦人ハリケーン”の!?」

「ははっ、そんなあだ名らしいな。ウィリアンは、会ったことは?」

「なっ、ない…私、まだ、お嫁に行く予定もないし…噂だけ…。」

「そっか。でも結婚が決まったら嫌でも会う事になるだろうから、今から姉さん代わりで慣れておくのも良いかもな。」

「えっと!私、やっぱりナキィルだけ、の方が‥あの…」

ウィリアンの戸惑う表情を観察して見届けると、歌うように進んだ会話を終え、

「だ、そうだ、ワイグ。レディに無理強いするのは良くないよな。‥俺が姉さんに指導されてる姿を見せれないのは残念だけど。」

分かりやすく挑発している笑顔をワイグに向けました。

ワイグは若干気まずそうな顔で視線を斜めに下げ黙っていると、

「‥えっ、私、別にルイーズさんのことが嫌いって訳じゃないの!いつも優しくておっとりしてて、綺麗だし!ただっ、その…その…‥」

棒立ちのまま対立する二人の顔を慌てて交互に見やりながら、不安そうな心を顔に表せてウィリアンが詰まりつつ言い

ました。

「分かってるよ、ウィリアン。姉さんは呼ばないよ」

ナキィルは普段にない愛想のある表情をしながら、彼女の背中を軽く叩いて、

「ワイグ、お前も嫌なのに無理して来なくても良いぞ?俺も正直、二人を教えるので手一杯になりそうだしな…

¬―はっきり言うと何も教えられないのにうろうろされても邪魔になるだけだ。」

とどめを刺すように、いつもより毒をはっきりさせた言葉セリフをうつむくワイグへ投げつけました。

三人の間に漂う冷たい空気を太陽が温めようとしているのか、それとも神経を研ぎ澄ませて誰かの呼応を待っているせいなのか、先ほどより陽の輝きを強く感じ、ウィリアンは双瞳りょうめを少し細めます。

「〰 〰!」

突然ワイグはこめかみごと頭蓋骨を両のげんこつでぐりぐりと揉むように押しつけて、一人でうたいもがきだすと、それを見て慌てたナキィルは「本当にバカになったのか?」

ウィリアンは「さっきケンカしたせいで頭が痛いって言ってなかった!?」

口にして焦りを引き算して行動を導こうと、頭へ血を送っていると

「ウィリアン!豚肉は好きだっけ!!?」

一瞬前のオーディルの挙動からくる声の音程でもウィリアンの名前は確かに呼びました。

「!へっ、ぶたが…?どうしたん、だっけ?」

ウィリアンは、一箇所の血管に血が押し寄せたせいで、かえってその熱さに惑わされて応えが遅れた焦りをごまかして訊き返しました。

ワイグもそれに同調しようとする笑顔のあとに、

「俺っ、豚の燻製が好きなんだ!特にできたてで最初に切った一枚とか!」

無駄にはずみのある声で言いましたが、その表情には微かに迷いが通り抜けました。

「ああ、うん!私は…前に精霊祭の日に食べたきりだけど。 大好きだなぁ、私も。

実は炭になってる皮のところが、苦いけど薫りも良くてワインソースとも最高で一番だ!って思ってるんだけど‥ワイグもそう思わないかしら?」

人の心を探ることをしないウィリアンが、そんなワイグの一瞬の感情に気付くこともなく、安心を誘うような幼さの影が抜けない声で微笑いました。

そして、唐突に ふしぶしが伸び過ぎて頼りなくしなる白樺の枝にも似た片手の指が、触れると少しちくちくするひいらぎにも似た関節を持った二対の手の平に包まれて

「決めた!俺!ウィリアンのために豚焼くよ!!」

ウィリアンの強い眼差しと共にワイグの胸の前まで引き寄せられました。

驚くナキィルのには

「俺の伯父さんが街で豚肉屋やってるんだ!俺その店の燻製が大好きで!それで時々、伯父さんに教えてもらって作ってるんだ!だから、それウィリアンに食べてもらいたいんだ!」

流星群のように輝きながら額から頬へと渡っていくワイグの幾筋の汗と、

「わっ、本当に?じゃあ…みんなでピクニックにしましょうよ!そこにお菓子と、サンドウィッチとサラダをつくって持って行くの!私、また‥昔みたいなピクニックに行きたいな。」

流れ星を見つけて、お祈りをしたいとはしゃぐ子どものようにを輝かせるウィリアンの姿が映りました。

が、すぐにそのはナキィルの自分を敵視した表情を捕えて、

「ウィリアンが一緒にピクニックに行きたいって言ったんだ!お前が何を言っても関係ないっ!俺は絶対行くからな!?」

彼は口を開くなり、言葉と同時に少しぶれた人差し指をナキィルに差し向けました。

そして答えを求めるように睨み付けましたが、ナキィルは普段のような冷静な表情に戻り、自分のてのひらを目の前の合わさった二つの手に軽く触れるように落とすと

「ウィリアン、‥楽しみだな。俺も頑張って作るよ。」

ワイグには返事をするように少し和らげた視線を帰しました。

「!?」 反撃に身構えていたワイグが、驚いて腕を震わせ逃げるようにウィリアンの手を解くのも気にすることなく、

「よし、それなら早くオルガスタにも話つけないとな。今日もたしか来てるって聞いたような…外の広場かな、ウィリアン、探しに行こうか? っと、後でアリシスさんに謝りに行こう。これは忘れちゃだめだな。」

ナキィルは背を向けて近くのテーブルに置いたカップの破片へと真っすぐ手を伸ばします。

「…うん!  これ使って包んで?そのままじゃ指切れるよ。」

ウィリアンは胸元から村伝統の花柄のハンカチを取り出しました。

ありがとう、と受け取ったナキィルが淡いウィリアンの温もりに心臓を鳴らせている時、

「ワイグも、一緒に行くよね?」 呼ばれた声が、黄金色の髪と蒼い瞳を輝かせる想い人を、しっかりとワイグの視界に捉えさせました。

すぐに、見慣れた生意気そうに見上げる顔もその後に続き、

「…もちろんだ!」

青年は照れと嫉妬を断ち切るようにはっきり言葉を伝えました。

答えを聴いたもう一人の青年がふっとカップの破片に視線を戻す時、ワイグの瞳には初めて見るナキィルの太陽のような笑顔がわずかに映りました。


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