第15話 部誌が完成!
翌週、文芸部の部誌が完成したとのことで、それが部室に置いてあった。
黄色い表紙に、約三十ページほどの厚さ。厚いというよりは薄いかもしれないが、それでもこうして紙の本という形なのだから、立派な部誌だ。
「はい、風宮くんの分」
福道先輩は俺に完成した部誌の一冊を手渡した。
「ありがとうございます。帰ったらさっそく読んでみます」
出来上がったばかりの新品の部誌を、俺は今日の部活の時間を費やして読むことにした。
まあ短編だからすぐ読み終わるし。
「へえ、今回はこんな感じか」
白木の新作小説のストーリーの内容はざっとこんな感じだ。
内容は主人公である女子生徒がバスケ部の男子と交際をする話だった。
バスケ部のホープといわれる男子で成績優秀というまさに校内でモテモテな存在の男子生徒で、主人公が告白したことにより、交際がうまくいっていた。
放課後や休日にはデートをしたり、一緒に図書館で勉強したりとまさに少女漫画のような理想な生活だった。男子生徒が誕生日を迎えたばかりなので、プレゼントを渡し、二人でささやなお祝いをしたりと楽しんでいた、
しかし、付き合っていくうちに、うまくいかなくなり、主人公は振られてしまう。
女子は失恋でしばらくふさぎ込んでしまうものの、友人との支えで、立ち直る。
女子は前向きになり、新しい道を探すことにして再び頑張ろうと決意する。
自分には自分を応援してくれる友達がいるのだから、こうして悲しむだけではいけないと前向きになる
こんな内容で、まさに青春を送る学生の一ページという感じだ。
うん、青春物として読んでいて失恋でも前向きになろうとする主人公には魅力があって最後まで読める。
長い人生の恋愛ものには失恋もある。そこからどう立ち直るかを細かく描き、読み終わった後はすっきりするという、まさにエンタメの形は保ってるだろう。
俺が部誌を読み終えたところで「こんにちわー」と白木が部室に入ってきた。
「今日も図書室で本を借りてきました。あ!それ読んでくれてたんですね!」
白木は出来上がったばかりの部誌を見て、福道先輩にそう言った。
「白木さんの今回の作品もよかったよ。高校生活の恋愛で失恋、でも主人公がちゃんと立ち直って前向きになる。学生生活で悩んでいる女の子達にまさに読んで欲しいお話だね」
「先輩、ありがとうございます!」
すると、白木はちらりと俺の方も見た。
「あんたも、読んだんだ」
「あ、ああ」
先輩に対する明るい口調に対して、なんだか俺にはそっけないのが声でわかる。
「どう、面白かったでしょ?」
「うん。まあな」
とりあえず、俺は相槌を打った。
「当然よ、あたしはちゃんと人に読んでもらえるような自信のある小説を書いてるつもりだから。自分が面白いと思わないと、こういうのって書けないもの」
白木は自分の作品に対して自信満々というわけだ。
確かに創作とは書いてる本人が自分でこの話を面白いと思わないと最後まで書けない、みたいなことは公子先生も言ってたような気がする。
「この部誌、あとで私の友達にも渡すんだ。あたしの友達は毎月あたしの小説を読んでくれるんだ。みんなそれで感想を言ってくれる」
自分の書いた小説を、自分の友人たちにも見てもらいたいわけか。
白木の友人は白木が文芸部に入ってることを知ってるだろう。そして白木が小説を書くということも。
身近な友人が書いた作品なのだから、白木の友人達は読んでくれるというわけだ。
「ふっふーん。今回のは自信作よ」
白木は嬉しそうである。まあ、これが文芸部の醍醐味だろう。
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