第5話 クラスメイトの女子
翌日、俺はまた学校でラノベを読んでいた。
そんな俺に良樹がこう言った。
「どう? 昨日、公子さんに教えてもらったことで、何か新しいアイディアとか浮かびそう?」
「うーん、確かに公子先生の言うことは適格なんだが、そういうのってストーリーとして考えるって難しいんだよな」
「そっか」
ラブコメといっても、そんなの俺がすぐ書けるようなものではない。
なにせ女性との付き合いをしたことがないのだから。
「お前はいいよな。サッカー部でモテモテだし」
良樹はルックスも抜群だ。やはりサッカー部なだけにそういう経験もできそうで羨ましい。
「そうかな? 僕は女の子にあまり興味ないし、今は学業と部活の方が大事って感じ」
せっかくのルックスがあるのに、何かもったいない気がする。
俺にその魅力を分けてくれよ、なんて思ってしまう
とはいえ、本人にその気がないのならば、どうしようもないのだろうけど。
放課後になると、良樹は部活動へ行ってしまった。
部活動に所属していない俺は、放課後は基本的に時間が空いている。
放課後は部活に入っていない連中もアルバイトをしたり、早いうちからの受験勉強の為に塾に行ったりと色々なことをしている生徒が多い。
中にはやっぱり彼氏彼女を作って放課後デートを充実させているやつもいるようだが、俺にはそんなイベントはない。
くう、これがラブコメだったら色んなイベントで忙しいのに。
「そうだ、図書館で本借りてこよ」
俺の学校の図書室には他の本に比べて数は少ないが、ライトノベルが置いてある。
ラノベが置いてあるといっても、ラブコメなどのコメディものではなく、シリアスなファンタジーやSFなど、アニメをあまり見ない一般人でも小説として楽しめるジャンルしか置いてないのだが。
どうやら図書室に置いてあるアンケートに取り寄せたい書籍に希望する本を書けば、それを通すかで新しい書籍を注文するシステムとはいえ、それに希望するのはこういったジャンルのようだ。
希望者にラブコメを読みたい者がいないのか、それともそんな希望が来ても図書委員や教師が健全な内容ではないと判断して許可しないのか、そういったものは置いてない。
学校なのだから、健全ではないものは生徒に読ませたくないという配慮なのか、それともやはり図書委員がこれは生徒に需要がないからと通さないのか。
とはいえ、やはりライトノベルというものは参考になる。
ラブコメでなくとも、ファンタジーものや現代日本のものでも、漫画的な設定のストーリーというものは、高校生にとっては一般文芸より読みやすい。
文体も読みやすく、世界観や設定もアニメや漫画に近いのだから。
俺はライトノベルの棚を見ていて、新しいタイトルのラノベが追加されているのを見つけた。
それを一冊手に取ってみる。
「お、新しい本、入ったんだ」
表紙イラストとタイトルを見て、ジャンルは異世界ものだと踏んだ。
「今度は異世界転生ものか。最近流行ってるもんな」
じっくり読みたいので、俺は一度に借りる冊数は一冊までと決めている。
たくさん借りても、貸出期限までに読み切ることができないからだ。
俺はライトノベルは好きだが、やはり活字媒体に読むのは時間がかかる方である。
「よし、今日はこれを借りていこう」
そう言ってラノベを持ち、本棚の角を曲がろうとしたところだ。
「あっ」
「きゃっ」
本棚の角を曲がろうとしていた生徒にぶつかってしまった。
ばさっという音と共に、その生徒が持っていた本が床に落ちたのだ。
「ああ、もう! 気を付けてよ!」
相手はきつい口調で言った。
「悪い、ごめんな」
俺は一緒になって落ちた本を拾おうとした。
ぶつかった生徒を見ると、それは女子だった。
「あ、君は……」
俺はこの女子生徒に見覚えがあった。
同じクラスの白木みちるという女子生徒だ。
ショートカットで大きな目、明るい性格の活発な生徒である。
クラスではいつも仲の良い女子生徒と共に笑っている姿をよく見る。
成績も優秀なのか、よく友人に勉強を教えている姿が見える。
ちょいと陰キャな俺とは反対な人物だ。
「よいしょっ……と」
落した本を拾ってみると、それらは本のタイトルと表紙とハードカバーな装丁からして、どれも文学ものである。
それも、結構大人が読むような硬派な本に見えるのだ。
こいつ、こういう本が好きなのか。
普段の明るい性格からして、もっと女子高生向けのものが好きなイメージがあったから、こういう硬派な本が好きなのは意外だ。
そして、白木はチラリと俺の方を見た。
「それ、ライトノベル?」
白木は俺の持っていた本を指して言った。
表紙にアニメのようなイラストがあるので、ライトノベルとわかりやすいからだろう。
「あんた、そういうのが好きなんだ」
白木の表情が一瞬眉を寄せた気がした。
「ああ、そうだよ」
「……ふーん」
俺とぶつかって本を落としたことが気に入らなくて機嫌が悪いのか、白木はむすっとした態度だった。
「ま、人の趣味ってそれぞれだしね」
白木は拾った本を抱えると、ぱたぱたと貸出カウンターへ持って行った。
今まで全然喋ったことないやつだけど、なんだか俺からするとちょっと話しにくいな。
「まあいいや」
さっさと借りたい本を借りて行くとするか、と俺も本を貸し出しへ持って行く。
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