第13話 訳の分からん状況

部屋の中に斜陽が差し込む。この時期の斜陽と言うのだから、まあまあいい時間だ。

とは言えさっきのゴタゴタから、大して時間の経過は無い。

サッカー部室内は静まりかえっていた。

部室内の大机を挟んで、女子マネージャーの来栖と俺の二人きり。

あの後、正規の用事を思い出した俺は、入島先輩の風紀委員幹部としての権力を盾に、改めて話題を切り出した。

入島先輩の苗字から事情を勘繰られるのを避けるため、風紀委員幹部の役職名の方で権力を行使したと言うのは言っておこう。

だがしかし……「入島御堂について、何か知っている事は無いか?」と、俺が話題を切り出した途端、サッカー部員の面々はどことなく気まずそうな雰囲気になり、一人、また一人と退室して行ったのだった。

そうして今か現在、申し訳なさそうに黙っている来栖と二人きりと言う訳の分からん状況になっているのだ。

「「………」」

まいったな……俺はこの聞き取りによって何かしらは情報を得られるものとばかり思っていたので、これはなかなか悪い方向に予想外だ。

……と言うか、サッカー部員の奴等、さっきまでストーカーだと疑っていた奴を急に信用し過ぎだろうが…。

話辛い話題だったのかも知れんが、結果のこの状況はあまりにも無用心と言うか何と言うか…。

もし俺が精巧に偽装したストーカーとかだったとしたら、どうするつもりなんだ?

……まあ良い。良かないが。

今は『入島御堂』だ。

「あー…あんたは、来栖でいいんだよな?」

「……うん。来栖澪…」

おずおずと答えるその雰囲気からしても、まあ本当に申し訳なく感じてはいるのだろう。

「んじゃ、もう一度端的に聞かせてもらうぞ」

…善意に付け入る様な事をするのは流石に良心の呵責があるが、この件を解決するために必要だろうと割り切る。

「入島御堂について、知っている事を聞かせてくれ」

「……分かった」

来栖はそう肯定した後、二、三度目を瞑って深呼吸をした。

それから黙って首肯し、来栖がこちらを見据えた。

………美形と正面から相対すんのはなかなかビビるな……。

相手方の覚悟決まったかもしれないと言う時に、俺は呑気にそんな事を考えていた。

とは言えー…目をそらすのも何だか失礼な気がする。

…未来の先輩だからどうと言うわけでは無いが、最低限の礼儀は重じておくとするぜ。

「………睨んでます?」

「な…い、いや…悪い、そんなつもりはー…」

な、何てこった…。俺としちゃ、正面から真面目に向き合っただけだったと言うのに……。

敬語がなんかガチっぽいのも辛えぜ…。

半端者の不良が慣れないことするもんじゃねえなあ…。

「ご、ごめん…じゃあ、話すね。私が話せること」

ひっそりとしょげていると、俺が崩してしまった場の空気を、来栖が整え直してくれた。

……良い奴だな?

「……頼む」

個人的に好感度の高くなった来栖を前に、俺はただただ促す様な事しか言えないのであった。

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