第3話 略奪戦争
とは言え……別にチェスが上手いと言う訳でも無いのだった。
ゲームを進行してみて分かったが、多分五月女も。
勝ち負けが決まればなんでも良いと言うだけのことであって、その日その日で適当にゲームを決める。それで今日はチェスが選ばれたと言うことだった。
しかし…何年使ってなかったんだ?チェス盤を引っ張り出してきて、急に埃っぽくなった…。
換気するために廊下側の窓も開けたので、そよそよと雨上がりのさっぱりとした風が室内を撫でる様に吹き抜ける。
「…王手」
「おおお…女王の吶喊は早計だろ」
「ごちゃごちゃ言っても、王手ー……チェックよ?」
「うーむ。どうしようもあるけど、ギリなんか取られるな…」
まあ、王が取られちゃ身もふたもないか…。
技もへったくれもあったものでは無い対戦だが、五月女は早くも取捨選択を相手に迫ると言う術を身につけた様だった。
いや?そもそも普通にやってたらどちらかの取捨選択なんてそんな状況事前に防げるのか?
分からん。
しかし…前に将棋をやった時にも思ったが、学習能力が違うな…。
俺は何も考えずにと言うか後先考えずにその場その場で指しているため、この手の盤上遊戯では気付いたら詰んで負ける。
「……よし、今度は俺がチェッー…」
その時だった。
「あ、あの…!」
俺の王手を退ける様に(悪意があった訳ではない…だろう)、控えめに開けられたドアのところから放たれた声が教室内に響いた。
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