短夜に見た泡沫

@mmnoki

夜明けを見よう

「私ね、世良さんが 、

世良 凛さんのことが  すきなんです 。 」


  いった、言ってしまった ついに 愁さんに

女の人が好きだなんて、 嫌われるかな、キモイかな、親友じゃなくなってしまうのかな

 

でも隠し事はいやだな



「しってた」

「えっ」

「知ってたよ、愛夏が世良さんのことずっとみてたの」

えっ?

「好きなのも」

しってたの?声には出なかったけど顔でそう言って驚いてるのが伝わったみたい 愁さんが フッと少し笑って、

「俺ね愛夏のことが大事、 1番の親友として」

なんだか視界がぼやけてきたなぁ

「だから勇気をだして話してくれてありがとう。俺、応援する!」

頑張れ!!というジェスチャーを愁さんがした後、私の目から大粒の涙が溢れてきた。

耐えられなかった。


中学の図書室で同じ本を取ろうとするという、少女漫画の主人公みたいな出会いをした、私と1つ上の先輩の山田 愁さん。

とてもかっこよくて、全校生徒の密かな憧れの先輩。

私は、そんなそんな先輩と運命のような出会いをした。

本当ならときめいたりするんだろうけど、私はその時から隣のクラスの世良 凛さんに恋をしていた。

それに、男の人に興味なんてなかった。

そんな私に、友達になって欲しいと言ってくれた。

今思えばクールに見られているけど実は、 人見知りな愁さんがそんな事言うのはすごく勇気がいることだったのだと気がついた。

それから少しづつ図書室で一緒に過ごすうちに、優しくて暖かい愁さんに心を開いていた。

そして、私達は親友になった。

でも、みんなにバレると好きな人に誤解を与えたり、付き合ってると思われるとお互い困ってしまうので、会う時は図書室や、屋上とかあんまり人気が無いところ。

それでも私は、愁さんと過ごす穏やかで優しい日々が、大好きだった。


―――なんだ、もっと早くに言えばよかった。


安心して、ぼろぼろととめどなく流れる涙を私のかっこいい親友は笑いながら拭ってくれた。





それが先月3月の初め、高校二年生になって告げた親友への秘密。それを受け入れられて、応援されて嬉しかった。

だから、勇気をだして同い年の学校マドンナ世良 凛さんに告白しようとがんばって呼び出した空き教室。


この距離で彼女と話すのも、見るのも初めてだ。

でも、中学の時に一目惚れしてからずっと見てた。

大好きな人。

足が震える、長くて手入れがされた綺麗なミルクティー色の髪がスタイルのいい体や顔が動く度に、動悸が激しくなる。変な汗が沢山出る。でも、愁さんが応援してくれた。

だから勇気をだして


「好きです!付き合ってください!!」


視界は床、怖くて顔を下げてしまった。

そのままジッと世良さんの反応を待っていると

「なに?キモっ」  バタンッ

閉まる扉、

遠ざかる足音、

振られた   終わってしまった

勇気を出したのに酷い

でも、


怒れないや


―――すきだから


床には、沢山の水溜まり

ボタッボタッボタボタボタ…


どれくらそうしてたか分からない、愁さんに会いたい。

愁さんは怒ってくれるだろか?

もしかしたら、呆れられるだろうか

まだ世良さんが好きな私を



何となく走りたくなって走って教室を出た。

どこに走るのか分からない、でも走りたかった。

汗が沢山出る、普段走ったりなんてしないから足も痛い、どうやって止まればいいか分からない

止まらなきゃ、とまらなきゃヤバい やば  ドンッ

「わっ」

強い衝撃が来て

後ろに座り込んだ

「とまった…」

唖然としていると「わぁ!ごめんなさい!大丈夫ですか?」「あれっ愛夏?なんで?」

そう言って顔を覗き込まれる。愁さんだ。

でも、泣きすぎて顔があげれない「あっ、もしかして怪我した!?」そう言って私も目の前で慌てだした愁さんに少し笑ってしまった。

「笑えるなら大丈夫かな?」そう言った愁さんに震えながら、「ふられちゃった」と小さく告げる。


すると

「そっか、 おいで」

そう言って手を引かれた。

2人で静かに歩きながら遅い時間でよかったと思った。愁さんは学校でひっそりと人気の3年生だから、噂になっちゃう。

人見知りの愁さんが困ることはしたくない。

そんなことばかり考えながら、手を引かれてゆっくりと歩いていると愁さんが立ち止まって

「着いた、ここで話そう」

そう言って振り返った。

何処だろうと思って愁さんの後ろを見ると、オシャレな喫茶店があった。

そして、愁さんは躊躇いなく喫茶店の扉を開けながら言った。

「ここね、俺の家なんだ」

「えっいえ? あっ

ご両親がやってらっしゃるんですか?」

すると愁さんは、少し下を向いてから

「違う、親いなくなったの」

「ここは俺が相続した店、でも俺は持ってるだけ働いてる人は、親の代から居るから全部任せっきりにしてる。俺はここの上の部屋で生活してるの」


そう言われて

あっ と思って謝ろうとしたがそれを察した愁さんが、いいんだよ隠してないし、気にしてないからね。と

そう言いながら中に入るとお客さんも 従業員さんもみんな愁さんに「おかえりなさい」と暖かく声をかけていた。

愁さんも「ただいま」と返していた。

それを見てこんなに素敵な人たちに囲まれてるから愁さんはこんなに暖かいのだなと思った。

そのまま愁さんは、お店の隅にある階段を私の手を引きながら上がっていく。戸惑いながら私も小さくお店の人達に会釈してついて行く。


2階に上がるとほんとにただの家があった。

そのひとつの部屋に入って私をソファに座らせてから待っててと声をかけて愁さんは、部屋を出た。


少ししてから、愁さんはトレーを持って戻ってきた。トレーにはカップがふたつと、チョコケーキがあった。

それを机の上に乗せてどうぞと言われた私は、

「ありがとうございます」と言って食べた。

ケーキはとても美味しかった 。カップには温かいミルクティーが入っていた。

「おいしい…」そう呟くと愁さんは、よかったと言って彼も食べ始めた。

後から知ったが、これは全て愁さんの好物だった。

2人で全部食べ終わると、愁さんが


「告白したんだね」と呟いた

「はぃ…」

振り絞った弱々しい声が出て、でもそれが嫌でそれから、わざと明るく話した

「振られちゃいましたけどね!」

そう言って今日のことを全部話した。その間 愁さんは自分の事のように顔を歪めて、顔色を悪くして聞いてくれていた。

それから一言小さく

「かっこいいね」そう言って微笑んだ。

「そうですか?ダサくないですか?告白して認知もされてなくて、振られたのにまだ好きだなんて…」

その言葉を遮るように愁さんが話し出した。

「俺はさ、告白する勇気すらないからさ、愛夏はすごいね」

本当に、羨ましそうに言う愁さんに驚いた。

私は知らなかったのだ、愁さんに好きな人がいたなんて。

愁さんは、私の好きな人に気付いてたのに私は知らなかったのが少し悔しくて、直接聞くことにした。

「どんな人ですか?」

すると少し気まずそうにしながら

「君の話を聞きに来たのに?」と言う。

だから、

「いいんです!これは、ゆっくり消化するしかないの分かってるので」

と心の中で分かっていたことを言うと

「かっこいいな、やっぱり」と

また、愁さんは微笑んだ。

その顔はなんだか今にも消えてしまいそうな程儚かった。

それから、少し下を向いたあと、

「君がねこの前勇気を出してくれたから俺もね、話そうと思ってたんだ。

… 俺の好きな人ね、同じクラスの鈴木 大和なんだ」

「えっ!愁さんがいつも一緒にいる鈴木先輩ですか?!」

びっくりした、愁さんも私と同じだったんだ。そしてこれまた衝撃の事実。

だから私の好きな人に気付いたんだ。

それから、疑問に思った。

鈴木先輩は、私が愁さんと知り合うよりもずっと前から愁さんと一緒にいた人だ。

そして、全校生徒が知っている2人組だ。

余り喋らないからクールだと思われているし、成績が常に上位で、かっこいい愁さんと

誰とでも仲がいいし、凄くスポーツが得意な爽やかなイケメンの鈴木 大和先輩

個人個人でも、有名で人気なのに彼らは常に一緒にいるので尚更有名になっている。

そんなに仲がいいのに、認知すらされてなかった私より望みがありそうなのに、

「なんで告白しないんですか?あんなに仲良しなのに」

聞くと

「近くにいすぎて壊れるのが怖くなっちゃった。あと、彼女いるんだ大和」

と悲しそうに笑うから「そっか」としかいえなかった。


そこから2人でお互いの好きな人についてたくさん語り合った。とても楽しかった。

今日で、愁さんの次に鈴木先輩に詳しくなった気がしたし、愁さんも私の次に世良さんのことが詳しくなったと思う。

少しこの恋が消化出来た気がした。愁さんもそうだといいな。

そう願った。




あれから2年がたってお互い無事高校卒業して私は、また大学で愁さんの後輩になった。

世良さんとは、殆ど何も無く少し世良さんのいるグループから遠巻きにされたくらいで、愁さんと話すうちに思い出に消化することが出来た。

告白してよかった。

愁さんのおかげだ。

でも、愁さんは未だに鈴木先輩と仲が良く2人1緒なのをよく見かける。

でも前と違うのは、その2人の間に今もう一人いること。

その人は、鈴木先輩が高校の時から付き合ってる彼女のなつみさん。

愁さんは二人を見ていつも半歩後ろから微笑んでいる。それを見るのはいつもなんだか心が痛かった。




それから

大学で私に親友が出来た。

今川 桜さん。

彼女は明るくていつも私に話しかけてくれてて人と付き合うのが上手くない私を、いつも助けて暖かく包んでくれるとても優しい大切な人。

そして

2人目の私の好きな人。

だからまた愁さんのお店で2人恋バナをするのだ。

昔と違うのは、ここにたまに桜も入ること。

愁さんとも仲良くなってくれて3人でお茶しながら雑談する。

さすがに、桜がいる時には恋バナはしないけど、

私は、この時間が大好き。ずっと続けばいいな。




ある日、いつもの恋バナをしようとした時愁さんが申し訳なさそうに言った。

「ごめんね、愛夏。愛夏とよく話してたり、会ってるの 大和が知ってて付き合ってると思ってるみたい。それでね、もしも噂になったりしたら今川さんに誤解されてしまうかも…」

そう言って、あまりにも申し訳なさそうに悲しそうに言うからつい愁さんに怒ってしまった。

「違う!心配しなきゃいけないのは、悲しむのはそこじゃないでしょ!!愁さん!!桜は噂なんて信じないし私が愁さんと親友なのをわかってるよ!

問題なのは愁さんが好きな人に誤解されてることの方でしょ!?」

大丈夫じゃないでしょ?

そう聞くと愁さんは綺麗な目をまん丸にしてこっちを見て。徐々にその真ん丸な目がキラキラして、 美しく涙をハラハラ流し始めた。

しそて、小さく「うん」とだけ答えた。


しばらくして涙が止まった愁さんは小さくありがとうかっこいい愛夏と呟いた。



それからまた少しして私が2年生の夏休みになった。あれから愁さんがきちんと話をして、鈴木先輩からの誤解は解けた。

鈴木先輩からは、妹みたいな後輩という認識になった

らしい。

実は、私は未だに鈴木先輩と話をしたことも正面から会ったこともない。だから鈴木先輩からの認識なんてどうでもよかったけど、妹みたいという言葉をとても楽しそうにして話していたので、まぁいっかと思った。

愁さんがとても嬉しそうだったから。




それから、私がバイトに明け暮れて遊ぶなんてほとんどしていなかった夏休みの終わり頃

バイトが終わった昼にに久しぶりに連絡が入っていたことに気が付いた。

桜かな?

でも桜も同じくらいバイトを入れててお互い遊べないねと笑いあって夏休みを迎えたはずなのだけど、何かあったのかな?

少し心配になって、スマホを開くと知らない番号からの着信。

しかも10件連続 。怖っ

不安になったが最後の着信は愁さんからだった。

それから少しして、愁さんからの着信にだけかけ直してみると、3コール程で繋がった。

でも、聞こえたのは知らない男性の声。

「佐々倉 愛夏さんで合ってますか?」

戸惑いながら、

「はい、えっとあなたは?」

と応えると、意外な名前が出てきた。知ってるけど知らないそんな不思議な関係の人

「俺は、鈴木 大和って言います。愁の友人です。前の着信も俺です。知らない番号だと出ないと思ったので愁のを借りました。」

どうして愁さんじゃ無いんだろう?

鈴木先輩が連絡取るようなことないと思うけど、と疑問な思って聞くと

「あの、どして鈴木先輩が?」

「ごめんなさい。冷静に聞いてください、  愁は、―――



嘘だ、ウソだ ウソだ うそ…

走る、走って走って走る あの日みたいに、

目の前が真っ暗になった、鈴木先輩からの言葉を何が度も頭中を木霊する。

部屋の中で立ち尽くして、やっと内容を理解したのは時には、もう走り出していた。

走りながら、頭の中は否定の言葉しかない。

無我夢中で走り続ける



―――



走り続けて

着いたのは 病院。


真っ白な部屋に、真っ白なベッドに、美しい愁さんが寝てた。


近寄ってもなんの反応もない。



怖くなって少し揺すりながら

「愁さん、しゅうさん…」

声をかけても

動かしてもなんの反応もない


「あいかだよ… 起きてよ、どうしたの…」



それから、ずっとそうしていて

泣いて、先生が来て、話を聞いて、また泣いた


そして、その日は家に帰って

また、次の日に愁さんの元へ行った。


昨日となんの変化もなかった…

夢なら良かったのに…


昨日からずっと考えて、考えて

寝ないで考えたけど

やっぱり、わかんないよ

しゅうさん…

なんで     








なんで…  自殺なんてしたの…



幸せだって、やっと鈴木先輩から離れる決心ついたって言ってたじゃん。

前むくって、大和の幸せを喜べそうだよって言ったじゃん。笑ってたじゃん。

愛夏も今川さんに言わなきゃねって、俺も大和に伝えるからって言ったじゃん…



そうして1人、愁さんの亡骸の傍で泣いてたら、静かに病室のドアが開いた。

そして、静かに 喫茶店のお店の人や常連さんが入ってきてみんな泣いてた。

桜も私からの連絡で泣きながらやってきた。

愁さんこんなに泣いてくれる人いっぱいいるのになんで?

誰も、愁さんがこんなこと思ってたって知らないみたいだった。

でもみんなで泣いて、たくさん愁さんの話をして、思い出を語って、愁さんが寂しくないように沢山手紙や、写真、ぬいぐるみ、を傍において楽しかっねってみんな愁さんに言った。


鈴木先輩も来て沢山泣いてくれていた。良かったね愁さん…




それから、警察の人が来て話があった。

愁さんは、車の前にに飛び込んだらしい。


なんで事故じゃなくて自殺なのかを聞いた。

カメラもない細い道で、ドライブレコーダーのない車に轢かれたのとだと。

近くにいて通報したおばあさんが、気がついたら人が車に向かって飛び出して轢かれたと言ったから 。

運転手のひとも衝撃で頭を打って記憶が混乱してよく覚えてないから。だから自殺だと、


この話を聞いた時私は、嘘だと言った愁さんを知ってる人みんな言った。こんなことしない。人を巻き込むなんてできる人じゃないし自殺なんてするわけないって 。

だけど、この結果が変わることは無いだろうと警察は言って帰ってしまった。

皆警察に怒って、泣いて、愁さんに励ましの言葉をかけたりしていた。

「大丈夫だよ愁くん」

「私達、知ってるから」

「本人がここにいるのに酷い人達よねぇ」とか…


でも、この話を聞いた鈴木先輩だけは、愁さんにとても怒って

「お前、そんなことしたのかよ。その程度のやつだったのかよ。自分の為に他人利用して満足したのかよ。自分勝手にも程があるだろ。」

そう吐き捨てていなくなってしまった。

それから彼は、愁さんの前に現れなかった。


みんな唖然として鈴木先輩が出ていった扉を見つめていた。

怒るよりも、悲しみが強かった。

愁さんが愛した人は、愁さんを、何も知らなかった。親友だとしてもなぜ信じることが出来ないのかと。愁さんから聞いたあの人と全然違った。

愁さん違ったよ、あなたのこと信じることすら出来ない人だったよ。みんなそう思った。

でも、それを誰も声に出して愁さんに伝えることは無かった。

だって、ここに居るみんな 桜もお店の人も愁さんが彼に恋しをてたの知ってたから。

誰も、優しい愁さんを悲しませたくなかったから。

暫くして、みんなで心が痛いねって話して愁さんと別れた。


愁さんの家族はいないからお店の人や常連さん達で小さなお葬式をやった。私と桜も参加した。

棺桶には殆ど物を入れることが出来なかった。

申し訳ないのは分かっていた。

でも、みんな愁さんとの繋がりを持っていたかった。

いつか、自分の番が来た時に持って行ってあなたに直接返したかった、ごめんねと共に。

あなたは、許してくれますか こんな我儘な私たちを






―――鈴木先輩は、

やはり 来なかった。












あれから随分と時間が過ぎた。

私は、働いているしもうすぐ30後半になろうとしている。

桜とはきちんと話して正式にお付き合いしている。

桜との日々はとても楽しい。

でも少し愁さんが居ないのは寂しい。

桜と愁さんが居なくなって、一緒に悲しんだし鈴木先輩に怒った。


時間があれば、

2人でお墓参りなんかにも行って、愁さんに沢山お話してる。

あの喫茶店では、いまだに愁さんを知っている人で集まって昔話をすることもある。




でもね…



世界は、進むの。


喫茶店の現店長が言っていた、

そろそろ店仕舞かもなぁ と

だから最後にみんなで集まろうと話をした。

あの時の常連さんも、もう半分以下になっちゃたよ。


悲しいね。

あなたが居ない世界は、驚くほど早く進む。

世界はあなたが居なくても進むし、変わらない。

人は、生きていかなきゃ行けない。


―――桜がいて良かった。とよく思う。

独りだと諦めてしまっていたから。




遂に、あなたを忘れないのは無理だという時が来た。

どうしても消えてしまう。

あの店が無くなれば、皆で昔話なんて出来ないだろう。



泡のような人の記憶力だから、みんなあなたを消したくなくて必死になってた。

だから、消えないように皆で繕って、ツギハギにしながら、あなたの思い出に縋って生きてた。

―――でも、もうおしまい。

記憶は、思い出は、宝物だけど、何時までもしまってはいられないから。

箱から出して、ボロボロのあなたを連れて歩くんだ。

錆びて崩れて無くなる前にぼろぼろのあなたを連れて、新しい宝物を探そう。


―――そう桜とあの店の人たちと共に決めた。

あなたを連れて生きようって。あなたの時間を止めたままにしないって。

やっと決心が着いたよ。

あの時のあなたの気持ちが今やっと分かったきがするよ。

縋ってた物に別れを告げる。ってさ

凄いことだったんだね。







―――そして、後から分かったこと

通報したお婆さん認知症が進んでたこと

運転手さんが居眠りしてた事


貴方が自殺じゃなかったかもしれないこと


でも、ホントのことはさ、愁さんにしか分からない。

本当に、誰にも何も言えないで抱え込んでたことがあったのかもしれない。

わざと飛び込んだのかも。

巻き込まれただけかも。

わからない

もう誰にも

でも、あなたと生きたはずの日々が短くなっても、薄れていっても私達には、かけがえのない宝物だったから。


もしもあなたと生きた時間が幻だったのだとしても私達は、何度でもあなたの幻をつくるだろう。



誰よりも優しく、誰よりも暖かいあなたを連れてあなたの居ない倍速の世界を愛する人と共に生きよう。あなたの形が無くなっても。


いつかあなたに、沢山のお土産ができるように。

桜と共に泡になるまで生きていこう。




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