第7話 あんさんの家族、なんかええなぁ♡


 「あらあら♪ 蘭華ちゃんいらっしゃい! どうぞ、中入って!」


 「お母はん、今日はお招きありがとうございます♪ お言葉に甘えて来てしもうたわ! お母はんとも、もっと喋りたかったけぇの!」


 俺達は一旦別れた後、彼女は家に帰って父親が帰って来た時の為に晩御飯を作ってから俺の家にやって来た。


 「あっ、お母はん、ウチも晩御飯の支度手伝います!」


 「まぁまぁ! 可愛い娘がもう一人出来ちゃったわ♡ 悠一っ!、蘭華ちゃん誘ったの私なんだからアンタあっち行ってなさい!」


 俺はリビングのソファーで二人がキッチンでキャッキャしてるのを眺めていた。


 「あんさん、ホンマええお母はんもって幸せやなぁ!」


 母親の愛情を知らずに育った彼女は、とても嬉しそうに笑った。



 ※



 「ただいまー! ……って、あぁーーっっ!!」


 部活で遅く帰って来た妹のともが、彼女の事を指を差して驚いている。

 

 「お兄ぃーっ、今日何やったのよーっ?」


 「何って、……まぁ『交際宣言』だよ! それより知、挨拶しなさい」


 「あっ、あのっ、……私、妹の『知』です。

兄と、……付き合ってるんですよね?」


 知は彼女に恐る恐る聞いている。


 「せやで! あっ、ウチ『桜 蘭華』言います。知ちゃん、ヨロしゅうな♪」


 「えーっ、なになに? お母さんだけ知らないなんてズルいわぁ、蘭華ちゃん、何があったの?」


 興味津々の母さんが彼女に聞いて来たが、彼女は今日の事を思い出して真っ赤になり、


 「あんさんが、……みんなの前で大きぃ声で、…………言うたんよ」


 「んー? ……よく聞こえなかったわ♪」


 母さん、……絶対聞こえてただろっ!


 「みんなの前で『大好きだぁー』言うたんよっ!!」


 彼女は両手で顔を隠して母さんに背中を向けた。……が、すぐに向き直され、両手も掴まれ真っ赤になった顔があらわになった。


 「よく言ったわ! それでこそ私の息子よ! コレで蘭華ちゃんに悪い虫がつかなくていーし、アンタに言いよる女の子も居なくなるわねー♪」


 ニッコニコの母とは対照的に知は、


 「私、ずっと質問責めにあってたんだからねー! お兄のバカっ!」


 プンスカ怒っていた。


 「ゴメンな、知。 ……こうしでもしないと転入してすぐに付き合い出したら、変な噂が広がって桜蘭が孤立しちゃうだろ?


 「それはそうだけど、……もう、知らないっ!」


 そう言って二階の自分の部屋に行ってしまった。


 「もうねー、いい加減知はお兄ちゃん離れしないといけないわよねぇー」


 母さんはやれやれと言った顔で彼女に『ゴメンね』と拝むポーズをした。すると、


 「あんさん、お母はん、ウチ、ちいと見て来てもええじゃろか?」


 今度は彼女が母さんに拝むポーズをして言った。


 

 ※



 コンコン


 「知ちゃん、蘭華やねんけど、ちょいと話あるねん、……開けてくれんかの?」


 ガチャ


 扉を開けると目を赤くした知が、


 「……どうぞ」


 彼女は部屋に入っていった。


 「知ちゃん、ゴメンな。ウチみたいのがいきなり来てお兄の事、さらったみたいになってしもて……」


 彼女は知に深々と頭を下げた。


 「……」


 知は何も言わずに下を向いている。


 「ウチ、今までオトンに連れられて転校ばっかしとるけぇ、彼氏はおろか友達もおらんねん」


 「……っ!」


 「ほんでな、ウチが夏の思い出作りたいゆーたら、力貸してくれるゆーから……」


 知は顔を上げて彼女を見ている。


 「ウチと『恋人ごっこ』して欲しい言うたんや!」


 「『ごっこ』……なの? それなのにお兄は、……あんな事したの? バカみたい!」


 「知ちゃん、かんにんやで! ウチかて、あないな事するなんて思わなんだのよ!」


 そして彼女は知の前に座り両手を握り、


 「せやけどウチの為にそこまでしてくれて嬉しかったわぁ! ウチ、また転校しておらへんくなるやさかい、少しの間やけお兄の事貸してくれへんかの?」


 すると知は彼女の手を握り返し、


 「それなら、私は蘭華さんと『ごっこ』じゃない友達になります! だから蘭華さんも『ごっこ』じゃなくてお兄の事、……宜しくお願いします」


 「知ちゃん、ありがとう! おおきにやで!」


 知はニッコリ笑って立ち上がり、


 「じゃあ、……私、お腹空いちゃった! 一緒にご飯食べよ! 蘭華さんが作ったんでしょ?」


 彼女も立ち上がり、


 「友達言うなら『桜蘭』でええよ! お母はんと一緒に作ったけぇの! ほな、行こか!」


 すると知は彼女に耳打ちして、


 「ホンマはもう桜蘭は、『ごっこ』ちゃいまんねんやろ?」


 「…………っっ!!」


 「あははははっ! 先行くでぇ!」


 知は笑いながら階段を降りて行ったが、彼女は顔の熱が冷めるまで降りる事が出来なかった。

 


 ※



 「美味し〜い♪」



 知が頬に手を当てて、

 「お兄っ、これから毎日、美味しいお弁当食べられるんでしょ?」


 続いて母さんも、

 「アンタ、結婚したら毎日食べられるのよ!」

 

 「「離したらあきまへんでぇ〜っ!」」


 母さんと知は、ゆでだこの様に真っ赤になった俺達をに楽しい時間を過ごしていた。



 第8話につづきや!


 

 ※※



 ホンマ文字数ギリギリや!



 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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