第6話 あんさん、ホンマええオトコやな!



 「おい、……アレ見ろよ!」

 「誰だ? あんな可愛い子、ウチの学校に居たか?」


 「昨日入った転入生みたいだけど……、もう付き合ってるのか?」


 「キャーッ、アレ安西くんじゃないっ?」

 「ウソでしょ? ちょっと狙ってたのにぃーっ!」


 恋人繋ぎの俺達二人を見て学校中騒然としている。

 だけどこうなる事は昨日の夜に何度も頭に叩き込んでおいたから想定内だ!


 もう俺は腹をくくっていたので彼女の手を離す事なく教室の俺の席まで歩いていった。


 題して『付き合ってますけど、何か?』作戦だ!


 こうも堂々と恋人繋ぎで歩いて来たら誰も何も言わな……、いや、言えないハズ!


 ……だったのだが、彼女が顔を真っ赤にして歩くもんだから、席に着いた途端に蜂の巣ををつついたように質問攻めにあった。


 こう言う時の為の言葉も考えてある!

 俺は、すぅ〜っと大きく息を吸い、そして吐いて、


 「俺が桜蘭の事一目惚れして、付き合ってくれってお願いしたんだぁーっ!」


 一瞬だけ静まり返った教室だが、すぐに悲鳴と歓声に包まれた。


 「キャーッ、安西くーん(涙)」

 「カッコイイぞーっ、安西ーっ!」


 調子に乗った俺は更に、


 「さくらーん、大好きだぁーっ! 付き合ってくれてありがとぉーっっ!!」


 隣のクラスからも野次馬達が集まり、担任が来るまでの間ウチのクラスは、まるで祭りの様だった。


 「おーい、みんな席着けーっっ!!」


 ようやく騒ぎがおさまり、隣を見たら、彼女は耳まで真っ赤にして、両手で顔を隠して、


 「あんさん、たいがいにせーや……」


 俺にしか聞こえない位の声で呟いていた。

 


 ※



 もう怖いもん無しの俺は、授業なんて耳に入らずただただ昼休みが来るのを楽しみにしていた。


 『彼女の手作り弁当』


 あぁ、……何ていい響きなんだ!


 昼休みのチャイムが鳴ると俺は彼女を見つめて、


 「お腹、……すいたね!」


 すると彼女は下を向いたまま俺に紙袋を渡した。


 「どうしたんだよ、桜蘭?」

 「あんさん、……何を呑気に、恥ずかしゅうないんか?」


 彼女がまだ顔を赤くしたまま聞いて来たので、


 「今日一日、……俺がイジられて悪目立ちすれば桜蘭の事、『転入初日から男作って』とか悪く思う奴居ないだろ?」


 「へ?」


 「えーっと、……その、桜蘭は可愛いからさ、……いきなり男と手を繋いで学校来たら同性から敵作るだろ? ……そんなの嫌じゃんか!」


 彼女にしか聞こえない位の小声で言ったら、


 「あんさん、……そんな事まで考えてくれてたんか?」


 「どうせ一週間もすればみんな気にもしなくなるから気にせず行こうぜ! さぁお弁当食べよ!」


 「あんさん、……ホンマええオトコやな!」


 やっと笑顔を見せてくれた。


 「さぁ、食べようぜ! 昨日からずっと楽しみにしてたんだからさー!」


 そう言って紙袋から弁当箱を取り出して蓋を開けた。


 そこには、卵焼きにタコさんウインナー、唐揚げ、プチトマト、そしてそぼろご飯と言うみんなが大好きなモノ満載のお弁当だった。


 「美味そー! 俺の為に作ってくれたんだよな、コレ!」


 「せやで!」


 そして俺の耳元で、

 

 「愛情込めて作ったけぇの♡」


 ニヤニヤして言ってくるもんだから、俺も真っ赤になりながら、


 「そんな事言ったら、……本気にするからな!」


 俺の方が一回り大きいが、お揃いの弁当を一緒に食べてると俺達を囲む様にみんなが集まって来て、


 「愛妻弁当だぁーっ!」

 「美味そうだなー!」


 「羨ましいーわぁー!」


 動物園のパンダ状態になっていた。

 


 ※



 そして放課後、みんなの注目を浴びながら俺は彼女の手を取り、


「桜蘭っ、帰ろうぜ!」


 朝と同じ様に指を絡めて『付き合ってますけど、何か?』作戦を遂行した。



 ※



 「あー、それにしても弁当美味かったなぁーっ!」


 「あんさん、もうソレ五回目やぞ! もう分かったから言わんでええて!」


 帰り道を恋人繋ぎで歩いていると、


 「あんさんがそないに大胆な事すんなんて思わんかったわ! ……でも、全部ウチの為なんやろ? ありがとうな♡」


 そう言って彼女は絡めた指に力を込めた。


 ※


 その後も一週間程、全校生徒から注目を集めた俺達だったが、それ以降はまるで当たり前の日常風景となり、俺の作戦は見事的中した。


 

 第7話につづいちゃる



 ※※



 ココで遊べへんやん!



 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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